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STUDY:はじめてのアルカや概説等

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アスペクト考

・7相+2無相

ひとつの動詞につき、アスペクトは7相。
将然・開始・経過・完了・継続・終了・影響の7相。

それぞれ下記のように表す。内側の3つのみ動詞語尾で、あとは副詞である。
sat, kit, -(o)r, -(i)k, -(e)s, took, ilt

この7相に2つの無相が加わる。無相は相がないので、アルカの相は7種。無相は2種ある。

行為無相:kit~ik
状態無相:ik~took

行為無相は動詞に何も付けない無標形であるが、「これは動詞である」と明示するために接尾辞-(e)mを使うこともできる。
状態無相は副詞xaを付けて表す。

・実例

fai(燃やす)

fai(faim):燃やす
fai xa:燃えている。燃え始めから燃え終わりまでの総称

fai sat:燃やそうと考える。準備する。火を近づける
fai kit:火をつけ始める
fair:火を当てている。チリチリいう
faik:火がつく。点火
fais:燃えている途中
fai took:燃え終わる。例:"zom em took fai"(木が燃え終わる)
fai ilt:灰や熱といった燃やした結果が残存している。例:"m? atu et hart. kamil xe em ilt fai na"(ん?ここが熱くなっているな。恐らく何かを燃やしていたのだろう)

skin(座る(正確には座らせる))

skin(skinem):座る
skin xa:座っている。着座から起立までの総称

skin sat:座ろうとしている
skin kit:座り始めて腰を曲げた
skinor:腰を下ろしている途中
skinik:座面に尻が着いた
skines:座っている状態
skin took:座り終えて立つ瞬間
skin ilt:座面が暖かく、座っていた影響が残っている

・例外動詞

xa(いる)、siina(好き)などは、無標が行為無相でなく継続相になる。
例外動詞では継続相が無標になる代わりに、行為無相に必ず-(e)mが付く。

siina(好き)の実例

siinam:好む
siina xa:好きである。好きになり始めから好きでなくなるまでの総称

siina sat:好きになろうとしている。まだ他人
siina kit:好きになり始めた。意識し始めた
siinar:好きになる途中。あの人いいかも状態
siinak:好きになった。私この人のこと好きなんだという気付きの時点
siina:好きである。好きだ
siina took:好きでありおわる。好きでなくなる
siina ilt:むかしは好きでした的な意味

継続相で使う頻度が最も高く、かつ行為無相で使う機会がほとんどない動詞のみが例外動詞になる。
その動詞はこのとおり。

・存在動詞:xa, mi
・所有動詞:til, si
・心理所有動詞:naのみ
・定義動詞:eks, mols, gartなど
・心理動詞:siina, tiia, sin, varae, hatia, kafなど、siina型の動詞

感情動詞であるvem, jo, emt, nauなどは例外に含めない。
感情動作動詞であるnax, asex, kuklなどは例外に含めない。
いずれも行為として使われる機会がそこそこあるため。

所有動詞は、「手にする」という意味では所有動詞ではないので、行為動詞が無標になる。
従って、「手にする」という意味では、継続相が無標にはなれず、(e)sを付けねばならない。
具体的には、「鎌を(手に)持つ」はtil markで、「鎌を(手に)持っている」はtiles markである。
後者をtil markとすることはできない。所有ではないからだ。
tilの無標が2つあるように見えるのは、「所有する」と「手に持つ」という2つの現象が多重定義されているからだ。

英語と違って知覚動詞は特別扱いにならない。
laiは正確には見るではなく「目をやる」と覚えるとよい。
視線が当たった瞬間がlaikであり、見ている状態がlaisであり、目を離したときがlai tookになる。
日本語の「見た」もlaikのときもあればlai tookのときもあり、よく区別ができないことがある。

・アスペクトのモデル

将然・開始・経過・完了・継続・終了・影響のうち、開始・完了・終了は点のアスペクトである。
ほかは線のアスペクトである。従ってこのようにモデル化できる。

――○――○――○――

中心には完了相が来る。
完了はその行為の成立を意味する。従って完了から見て左翼が不成立で、完了を含めた右翼が成立と言い換えることもできる。
完了を成立とし、左翼を成立前で、右翼を成立後とする見方もある。

また、完了は言語にとって重要な概念であるから、完了と未完了という対で捉えることもできる。未完了は完了以左である。
いずれにせよ動詞はこの7相モデルで分析することができる。

・3段階と2動詞

将然~継続=行為動詞
経過~影響=状態動詞

のように7相は2種の動詞に分けることができる。
行為動詞は状態動詞より動的で主語の意思のある行為を示す。

また、7相は3段階に分けることができる。
将然~経過:事前段階
経過~継続:実行段階
継続~影響:事後段階

実行段階を内相、それ以外を外相という。
内相はすべて頻度が高い相であるため、動詞語尾すなわち接尾辞で表現され、唯一アクツィオンスアルトになっているのが特徴である。

・実際使うのは内相

7相と聞くと大変そうだが、実際に使うのは内相のみ。あとはレアケースである。
普段は3相を、厳密にする場合は7相を使い分ければいいので、合理的な体系といえる。

・不定動詞

「歩く」「走る」「書く」などの動詞には定動詞と不定動詞の用法がある。
スラブ語と異なり、アルカは定不定により単語を分けない。

「歩く」の定動詞は移動動詞で「solがyulを通ってaに歩いて行く」である。
「歩く」の不定動詞は運動動詞で「solがyulを歩く」である。

・単位動詞と非単位動詞

不定動詞「歩く」は一歩歩いても千歩歩いても歩いたことになるという特徴を持つ。
一歩歩くという最小単位の累積が不定動詞になっている。
一歩歩くというのはそれだけで終始する一回性のある運動である。
これを○で表すと、不定動詞は任意の個数の○、すなわち……○○○○○○○○……で表せる。
定動詞が有界であるのに比べ、こちらは非有界である。

しかし現実の行為は無限ではない。始まりも終わりもある。
始まりと終わりを|で示すと、不定動詞のモデルはこうなる。
|○○○○|
任意の個数の○が|の間にある。

また、|にいたるまでの過程と、|からの未来を――で表すと、モデルはこうなる。
――|○○○○|――
これは定動詞のアスペクトのモデルと異なっている。

――○――○――○――モデルを単位動詞と呼ぶ。
――|○○○○|――モデルを非単位動詞と呼ぶ。
単位動詞は定動詞しか来ないが、非単位動詞は定動詞の場合は反復で不定動詞の場合は累積となり、両方来る。

なお、「歩く」は不定動詞だが、「座っている」は不定動詞でなく「座る」の継続相である。
一秒座っていれば座っていることになるから歩くと同じ理屈であり、skin xaも不定動詞であるというのは誤り。
lukesとskinesは意味が違う点が根拠。lukesは「動物が道を歩いた足跡がある」や「今日は長く歩いているので足が疲れた」などの場合に使う。
なお、ロシア語にはsitに不定動詞Сидетьと定動詞Посидетьがあるが、アルカのskinに不定動詞がないのはskinの正確な語義が「座る」ではなく「座らせる」、つまりseatだからである。

・反復相

――|○○○○|――における○○○○の部分を累積や反復という。相としては合わせて反復相といい、接尾辞(a)ndで示す。
累積は通常何度も行うことが前提とされる行為に用いる。例えばlukandで「歩いている」。一歩歩いても厳密には「歩く」だが、通常「歩く」は何歩も繰り返し歩くことが想定される。累積は不定動詞に現れる。
反復は通常一度だけ行うことが前提とされる行為に用いる。例えばbadandで「叩いている」。叩くは歩くと違って通常一回だけで行為をしたと認識される。反復は定動詞に現れる。
累積と反復は細かい文法論としては異なるが、表現方法は同じくandである。どちらも非単位動詞である。

――|○○○○|――の相は順番に将然、開始、反復、終了、影響である。経過・完了・継続が反復にまとまっている。
badandで反復部分を指す。
終了相を指す場合は、badand tookのようにする。
このモデル全体を指すにはbad onkとする。

一見全体を指すのをbadandとしたほうが理論的に見える。まずandを付けることで――○――○――○――モデルを――|○○○○|――モデルに変える。その上で各相を指す副詞を付けると分かりやすい。例えば終了相ならtookを付けてbadand tookのように。
ところが、それだと頻度の高い反復相をbadand paskのように何か適当な副詞を付けて冗長に示す必要が生じる。これは非合理的なため、badandだけで反復相を示すほうがよい。そしてそれにtookなどを付けることで――|○○○○|――モデルにおける終了相を指すようにする。
逆にこのモデル全体を指すほうは頻度が低いのでbad onkとする。onkはこのモデルにしか使わないため、ここにandは不要。これは法副詞であって遊離副詞ではない。つまり動詞から離れると意味が変わる。onkelは「~しつづける」という意味になる。

これによりluk tookとlukand tookの違いが出る。両者はモデルが異なる。
前者は定動詞としてなので「歩いて着いて滞在しおわってまたどこかに行く瞬間」である。現実的に使うことはまずない。tookが終了相なので名前のイメージから「徒歩で移動していたのだが途中で諦める」という意味を持つように感じられるかもしれないが、それは後述するluk daimになる。
後者は不定動詞としてなので「散歩をしおえる瞬間」である。

過去形と組み合わせる場合はbadatandのようにする。

・daimとmak

makは準開始相。kitの代わりに使う。
同じくdaimは準完了相。

makは再開の意味。daimは中断。
「また~はじめる」と「~するのをやめる」にあたる。
これらはともに相副詞である。

●単位動詞の場合
luk mak(徒歩での移動を再開する)
luk daim(徒歩での移動を中断する)

●非単位動詞の場合:*非単位動詞にはモデル上完了相がないので、daimは繰り下げて終了相にかかる。daimは準終了相となる。
lukand mak(散歩を再開する)
lukand daim(散歩を中断する)

・無相の指向性

動詞の無相は指向性を持つ。例えば単にvatと言った場合、通常vatorのことだと解釈される。一方単にsedoと言った場合、sedokのことだと解釈される。
無相なのにあたかも相を持っているかのように解釈される。これを指向性を持っているという。
指向性は経過相か完了相に向けられる。どちらかになるかは、経過相の長さによって決まる。

vatなど、経過相の長い動詞は経過相に指向性を持つ。
sedoなどの瞬間動詞は経過相がほとんどないので完了相に指向性を持つ。

inは経過相がinor(見ている)で長いため、経過相に指向性。
laiは経過相が「目をやっている」であり、これはほんの一瞬の動作なので、完了相に指向性。
つまりinは「見ている」で、laiは「見た」「目に入れる」を事実上意味することがある。

なお状態無相の場合は問答無用で継続相に指向性を持つ。つまりskin xaはskinesに指向性を持つ。
すなわち無相は経過・完了・継続の3相のいずれかに指向性を持つということになる。

・間違えやすい動詞

vat類:「待っている」はvatandでなくvetesでもなくvator。細かい理屈は旧版に記載されている。vatandは何度も待つこと。
axt類:「書く」は「歩く」と同じで、一文字書いても書いたと言える。axtorは始まりと終わりのある文章が執筆途中であること。axtandはただ文字の羅列を何文字も何文字も繰り返し書いていること。日本語だとどちらも「書いている」になる。
lax類:「望んでいる」はlaxor。laxikは「望み終わる」。叶ったか諦めたかのいずれか。laxesは「望んでいた痕跡がある」。例えば祈ったままの姿勢で餓死した人を見たときなどに使いうる。

in類:inor「見ている」、inik「見終わる」、ines「見ていた」
lai類:lair「目を動かしている」、laik「視線を当てた」、lais「見ている」

・現実的には

現実的にはsat, kit, or, ik, es, andを知っていればほとんど問題ない。
ほかの相はほとんど使わない。状態無相のxaなど使った記憶すらほとんどない。
ただきちんと体系は作っておかないといざ厳密にアスペクトを表現する必要が生じたときに対応できず、人工言語として片手落ちになってしまうため作った。

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