幻京書体崩壊の危機
2012/01/23のこと。リディアが幻京書体について物言いをしてきた。
フランス語を並行学習している紫亞がfoxとaを混同することがあるとのこと。
ほかにもアルファベットと幻字で字形が同じで音が食い違っているものに関して誤解しやすいとのこと。
そこで字形が同じで音が異なる幻字を変えるよう依頼された。
とはいえ既に本も出版しており、大人はたまに幻字とアルファベットを混同するくらいでしかない。変える必要がどこまであるのか。
それに異世界の文字なのに地球のアルファベットの存在に合わせ、音が食い違っている文字の字形だけを変更するのはアプリオリのやり方でない。
それをやるならbやeのように字形も音も同じ幻字に関しても、形を変えねば辻褄が合わないだろう。
だが、それとて完璧な手法ではない。その手法はアルファベットを意識してアルファベットにある字形を意図的に避けている点でアプリオリでない。
字形と音が食い違っている文字だけを変更してもアポステリオリ。
字形と音が同じ文字も含めて変更したとしても、アルファベットを意図的に避けている点でアポステリオリ。
どうにもならない。参った、どうにかならないかと思った。
幻京書体はアルファベットを意識していないのが長所だ。
一画で書ける単純な図形は限られているので、当然アルファベットに存在する字形が幻字にも存在する。
幻京書体では字形が同じでも平気で音が異なる文字pなどがある。同時にhのようにアルファベットと読みが一致しているのもある。
幻字というのは字形が単純な順によく使う音素を当てはめていったものなので、hやlのように音が一致しているのは偶然で、同じくpのように音が一致していないのもまた偶然だ。この場合は幻字のアプリオリ性が確保できる。
例えばlというのは一番単純な字形であり、lという音の頻度が最もアルカでは高いと予想されたため、lに[l]の音をあてがっている。あくまで頻度による一致であり、狙った上のことではない。そこにアプリオリ性が見られる。
なので幻京書体を変えるのは非常に困る。アルカのお題目であるアプリオリ性を維持できなくなってしまう。しかし子供の教育にと言われると弱い。
大人たちの間でたまに誤解するというのはなんとなく感じていたが、変えようという動きはなかった。「アルファベットなど関係ない。それが幻字だ」と思っていたからだ。
しかし子供の将来というものが天秤の皿に載ると、親の目の色はとたんに変わるというわけだ。
さて困った。そう思ってネットユーザーと電話で相談したところ、ロシア語などではHはエヌで、PはアールでCはエスと読むと聞いた。
これはdと書いてparと読む幻字と同じようなものだ。
それでも別にロシア人は英語の学習をできているのだから、紫亞だって問題ないのではないかとのこと。
これを受けてなるほどその通りだと思い、既存の幻京書体を残すこととした。
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