ランジュ – 2014年3月8日 2/n

「うーん……」メルは眉をひそめる。「ユマナのルシアやユルトってさ、悪人は全て殺してしまえと思うような人間なのかな?
「どうだろう。そういう子ではないんじゃないかな。ただ悪を許せないというだけで」
「なら更正の機会を与えてもいいんじゃない?少しのあやまちでいちいち死刑にしてたら殆どの人にとってディストピアなんじゃないかと」
「そうか……。じゃあユカスカもカルカも残す感じか」
「そうなるね」

「なら待遇を改善しないとな。外と同じだけの生活水準にし、医療も手厚く、人に合った仕事を与え、個室を与えて、温度管理もし、レナスルシアの音声映像配信システムでカルカンの横暴を阻止し、人権擁護を徹底する」
「それカルカの意味あるの?」
「カルカは更生と隔離の施設であって、人権侵害したり、人を痛めつけ苦しめる施設であってはならない。要するにルシアたちにとって悪人を自分たちから遠ざけておければそれでいいわけだし、特に人権意識の高いユルトにとっては悪人といえど苦しめるべからずという思いがあるから、それでいいと思うんだ。また、そこでの暮らしが嫌だというなら速やかに安楽死させてやる」

「死ぬ権利?」
「あぁ、人間には死ぬ権利、尊厳がある。自分の命を自分で決める権利がある。しかし自殺幇助は犯罪なので安楽死施設はない。結果自殺者は首吊りや飛び込みなど、苦しい死を選ばざるをえない。特に病苦で苦しんでいるような人間にとって安楽死が許されない現行法は悪くて仕方がない。革命では死ぬ権利を導入し、何人たりとも、たとえディレタンであっても自由に自分の命を左右できる権利を与える。人権は守らねばならないものだ」
「うん、じゃあその方向で」

「また、見えてないからといって人権侵害が行われすぎている。虐待やイジメは許されない。これらは犯罪として取り締まるべきだ。レナスルシアがあれば多くの犯罪を取り締まることができる。もうあの子たちが苦しむことはないんだ」
「お兄ちゃん?」メルはセレンの顔を覗き込む。「ユマナの記憶が混濁してる、今?」
「あ……」セレンは思わず額を押さえた。
「レナスルシアはプライバシーの問題とか国家機密等漏洩等の問題があるけど、犯罪や冤罪の撲滅には有効かもしれないね」
「やっぱりなぁ、弱いものが辛い思いをするような世の中は間違ってると思うんだよ。俺は死神から貰ったこの力で、優しい世界を作りたいんだ」
セレンは窓から遠くの景色を見ながら呟いた。

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