人工言語事典学記事: 【造語癖】【影響自然言語】

2015/11/15 seren arbazard

【造語癖(coinagemania)】
自分の人工言語以外の言語、特に母語において、個人的な造語をしてしまう癖のこと。conlangerに多い。conlangerで最もやりがちなのは、独自の品詞名や文法用語を造語することである。たとえばアルかで動詞に対する格を表す語は格詞(caser)というが、日本語にも英語にもそのような語はない。アルカの中だけでその概念をpeaと名付けるのは人工言語なので当然の行為なのだが、それを訳すときに既存の前置詞(preposition)のように訳さずわざわざ格詞(caser)と造語してしまうのは造語癖にあたる。

【影響自然言語(Natural Influencer:NI)】
人工言語を作る際、大多数の作者に影響を与える自然言語のこと。先進国の言語や話者数の多い言語、先進国の現代語に大きな影響を与えた古い言語に多い。例えば、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ギリシャ語、ラテン語、中国語、日本語、アラビア語など。
conlangingは作業としては高尚で知的な分野に属する。そのためconlangingをできるのは学が高く生活に余裕のある人間が多い。食うや食わざるやの身の上の人間に人工言語を作る余裕などない。例えばパレスチナ難民に人工言語を作る余裕などない。生きていくだけで必死だ。もっとも、そのような悲惨な環境で生きていても、子供は遊びとして暗号のような言葉を作ることがありえるが、それは人工言語と呼ぶレベルに達しているか怪しく、ちょっとした暗号の域を出ないだろう。
人工言語はどこの国にも等しく存在するわけではない。人工言語のほとんどはアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本など、豊かな国に偏在している。例えば日本で人工言語を探すのと、アフリカのベナンで探すのでは、圧倒的に前者が容易である。
さて、そうなると、conlangerも欧米や日本などに多い。conlangerはたいてい知的クラスタであるため、自然言語の語学知識を持っていることが多い。彼らはしばしば英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ギリシャ語、ラテン語、中国語、日本語、アラビア語などに関する知識を大なり小なり持つが、フリジア語やフェーロー語、そのほかポリネシアやミクロネシア、アフリカの諸言語に関しては、英語ほどの知識を持たないことが多い。つまりこの現実において、conlangerの持っている自然言語の知識は偏りがある。
conlangerは人工言語を作るとき、どうしても手持ちの自然言語の知識から影響を受ける。したがって、実在する人工言語はいずれも似たような自然言語からの影響を受ける。このように、この世界の多くの人工言語やconlangerに影響を与える自然言語のことを、影響自然言語(NI)という。
人工言語の中にSVOが多かったり、対格言語が多いのも、NIが上記のリストからなることと関連していると思料される。
どうしてconlangerの持つ自然言語の知識が偏るかというと、英独仏のような言語に比べ、バントゥー諸語といったマイナーな言語の情報を本やネットで入手することが難しいからである。NIによる影響を意図的に避けようとしても、マイナーな言語の情報を得るのは難しく、結局NIから影響を受けてしまう。

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