人工言語学辞典記事:【新参が入らないまま小集団に使われた人工言語は屈折を起こしやすい】

人工言語学辞典記事:【新参が入らないまま小集団に使われた人工言語は屈折を起こしやすい】

2016/4/2 seren arbazard

カテゴリー:形態

タイトルの通り。
人工言語は膠着語と孤立語が多く、屈折語や抱合語は少ない。欧米の自然言語は概ね屈折語なのにエスペラントのように人工言語屋も屈折を捨てる傾向にある。屈折が無意味で覚えづらいということを欧米人も感じているようだ。
アルカも屈折は元々しなかった。しかし新規ユーザーが入ってこないまま人工言語を使い続けると「よく使うフレーズは一語にしてまとめてしまえ。皆もツーカーだから分かるだろ」という意識が芽生え、屈折が生じる。古アルカでは「私の」を意味するe anが[æn]になった。[ɛ an]といちいち発音するのが面倒くさいからだ。アルシェがアシェットになって2001年ごろに制アルカでソーンという大量のお客さんが入ってきたことで[æn]のようなものは一旦消えたが、2008年頃に新生アルカができた前後から代詞やその所有格を中心に屈折が爆発的に増えた。t’が生まれたことで「私の」はt’anになったが、tanは「も」という意味で使われていたし、半角スペースかアポストロフィを打つのが面倒ということで、所有格のantができた。シフトキーを押すぐらいなら語形が長いほうがマシとユーザーに判断された。結果、新生アルカの代詞は複数形やら所有格やらで複雑になり、新参の増加の邪魔になった。しかしe an よりant, e tiよりtiil, e tyuよりtuanのほうが位相を表現できて間違いのリスクも減ることから、屈折に慣れてしまった古参のユーザーはすかりそっちのほうが便利と感じ、ネイティブたちが代詞を習得した2010年代前半の段階でもはや変更が不可能になった。英語のI, my, me, mineなどもエスペラントの代名詞と比べると不規則で覚えづらいが、実際覚えてしまうとエスペラントより英語のほうが使いやすい。結局は「慣れたユーザーらが規則的だけどよく使う部分をより楽に言えるように不規則にする」心理がタイトルの通りの事態を引き起こす。だからそこに不慣れな新参が入ることで「楽な不規則」が広まったり作られたりするのを抑制する。ピジンに屈折語が少ないのも似たような理由と思われる。
アルカも俗化以前はアシェットが活発に色々な位相を使っていたが、新生の時点でネットユーザーはほとんどan系列とnon系列しか使っていなかった。そのまま俗はアシェットに比べ新参であるネットユーザーが引き継いだため、事実上俗では豊富な代詞が減った。つまりその分だけ屈折する語が減った。

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