『こい1日』 mel14,ral,ser  昨日、ral,rujは金曜で、大学に行った  火曜3限が終わってタカと8階で待ち合わせしていたので、北1から8階に向かおうとしたら雨が強く降っていたので走っていった。すると「あ、セレン君」という声がしたので見たら文学部棟からちょうど紗智枝が出てきたところで、傘をさしていた。俺は「あ、入れて入れて」といって入った。「軒下に行こう」というので文学部棟の軒下、透明なガラス壁の前で話していた。「そういえば、次の金曜さ、うちの親が出かけるから外で食べてきてって言われてさ。もし良かったら食べに行かない?」と聞いたら「うん、いく」と即答した  という経緯があったので、今日はデートかぁぐらいに思っていた。2限になる前に先生の部屋へ行って論文タイトルを出して判子をもらった。その足で教室へいった。紗智枝に言語の12月号を渡したら、「まだ見てなかったの」というので持ってきて良かったと思った。いつも思うのだが、紗智枝の後ろに座っている太って目つきの恐ろしい女は何なのだろう。紗智枝と話しているとこちらをチラチラしかも恐ろしげな目で見てくるのだ。「教室でいちゃつくんじゃねーよ」とか思って怒ってるんだろうな、悪いけど彼氏いなそうだし  ところで、俺は紗智枝が俺に気があるとは期待してなかったので、前日にちょうどパルサーに「紗智枝ちゃんさ、明日コンタクトしてきたらどうするよ」という話をしていた。「そうだったら、かなり脈あるんじゃない?」というので「それはそれで引くよなぁ」といっていた矢先だった。でも、コンタクトの紗智枝を見たら、「あぁ、やっぱ可愛いかも」と思った。でも、足を見たらズボンだったので、ああ、その気はないかと思った。だが、もしかしたら俺と合うと歩かされるし池に行って蚊に食われるからズボンなのかもと思った。が、そんな映画な展開はないよなと思って大谷さんの発表のことを考え出した  で、先生が来て、授業になった。いつもどおり、発表者の発表が退屈だが、顔に出さないようにしていた。「少しは教科書の丸写しをやめろよ。考察0ってどういうことだよ」と言いそうになったが、そうすると今まで俺が目を瞑って言われなかった連中だけ得して不公平なので我慢した  2限が終わって先生と話していたら、紗智枝が椅子に座って佇んでいるので話しかけた。「3限出る?」と聞いたら「うん、出たい」という。で、その足で東別館へ行って、俺はソバを食べていた。紗智枝は登校中に買ったパンを食べていた 「あ、今日、5限のあと、大丈夫?」と聞いたら「うん、大丈夫だよ」という 「そういえば、明日弟のダチにカラオケ呼ばれてて、練習したいんだよね。前にカラオケいこうみたいなことはなしてたじゃん。行かない?」といったら「いいよ、でも私、歌わないからね」という  そのあと、先週話していた写真を見せてくれた。本当に馬に乗っていた。「私の庭でーす」というので「はいはい、馬は執事のセバスチャンとかが世話してそうだね」といったら笑ってた。いとこの娘の写真があって、紹介された。何度聞いても名前を覚えられなかった。今も既に忘れてしまった。3モーラではじめの2モーラをあだ名にしているということだけは覚えている。「子」が付いた気がする。もう流石に聞けないしなぁ…。なんかマリコとかそんな感じだったような気がするんだが…  あと、向こうが中国語のアトムの歌詞を持ってきてくれた。裏になんか挿絵っぽいのが書いてあるなと思ってたら「裏は見ないで。高校のときに書いたの」という。随分昔にアトムの歌詞を手に入れたんだなと思いながらも、「いや、その絵はみたいねぇ」といった。いやいやといっていたが、からかい半分に口説き落としてたら、「じゃあ、ちょっとだけ」という。「見せてくれたら俺も儚の挿絵持ってくる」といって口説き落とした。鉛筆で書いた女の子の絵で、服が巧妙に描かれていた。かわいらしいようすだ。天使と悪魔が融合しているらしい  暫くしたら先生が来て、授業が始まった。竹内さんの発表だった。彼は自分で僕は英語が高校レベルといってからスタートしたが、ちょっと院生であることを疑うぐらい酷い英語だった。典型的な日本人というか、発音やリズムは全ておかしく、しかも英語っぽく早口で読もうとするので、まして悪い。潔くカタカナ読みすればよいものを、似非英語で喋るものだから、地球上で誰にも分からない英語になっていた。カタカナで話せば日本人には通じるのに…。何がしたかったんだろう。しかもその上、日本語訳が間違えていて、何度も先生に直されていた。発表の細かい意図もよく分からなかったし、正直言ってちょっと不安に感じた  3限が終わって紗智枝と外に出たら「4限は?」と聞かれた。「俺、タイトルださないと」といって先生の部屋へ行った。多分まだ出してない奴がいるだろうから助けに行こうと思った。まず、盧君の心配をしたら、ちょうどその話をしようとしたところにきた。おみとかはまだだから、かたっぱしから先生の持ってるリストの電話番号にかけた。あつしには繋がったからおみときねさんをよろしく頼んでおいた  で、先生の部屋を出て、事務に紙を出しに行った。その足で教務課へ行き、残りを出した。続いて向かったのは今日のデートの食事探し。一応、頭の中には信号を渡って右手が山手線になる通りのすぐ左手にあるパスタ屋が良いかという構想はあった。そこで、店に行って「すいません、お店は何時までですか」と聞いたらラストオーダーが10時だか11時だというので大丈夫だと思った  で、戻ってピラ校前のベンチでぼーっとフゥシカの曲を聞いていた。すると時間になったので教室へ行ったら、竹内さんがいた 「貞苅君、長嶋先生からの伝言です。君は箱根の幹事に任命されました」という。俺は「あ、そうですか。でも、幹事って何をすればいいんですかね」とふつうに答えたら嫌な顔をした。多分、もっと俺が「え!?」みたいな反応することを望んでいたらしい。悪いけど俺はそんぐらいじゃ驚かないしなぁ。というかヴァルテは落ち着きのない大きな反応を嫌うからね  どうも先生は「院は大谷君にやらせるけど、学部がいない」といったらしい。あの人の頭に俺は常にいないようだ、ムカつくことに。そしたら竹内さんが「貞苅君がいるじゃないですか」といったら「ああ、じゃあそれでいいや」といったそっけない感じだったそうな。かなりムカついたが、先生の任命じゃ仕様がない  その後、大御所の大谷さんが来て、発表がはじまった。言語というよりは哲学に近い内容だった。先生は会議で欠席だった。10人弱来ていたが、殆どの人は内容が分からないようだった。俺も専門じゃないのでわりと分からないことが多かった  大谷さんが資料を挙げてきて、如何に自己と自我は違うかということを話していた。図解を引用してきた。それを見ながら俺が「この図の総体は心ですか」と聞いたら「うん、そうだよ」という 「じゃあ、言語学的に問題ですね」 「どうして?」 「これだと自我や自己が心の中に納まってしまっているでしょう?つまり、身体性は考慮されていないってことです。認知言語学を例に取るまでもなくこの考え方では身体性を考慮できないっていう問題があります」 「あぁ、そうか…」といって暫し考えていたようだ。その後、「でも、そういう視点もあるんじゃないか。身体性を考慮しないことによるメリットもあるだろうし」といってきた。それ以上追求するとまずい雰囲気だったので、矛を収めた  大谷さんが終えると竹内さんが何か質問はというので「じゃあ、1つ」といってまた口火を切った 「大谷さんはモノとコトの上位概念にトコロを置いていますが、よくご存知の通り、アリストテレスの範疇論ではモノなどは範疇に選ばれていたかと思います。トコロをそれ以上の上位概念に置くと考えると、それはアリストテレスの古典的理論を随分越えられますね。その点についてはどうお考えでしょうか」 「うーん、アリストテレスの理論は別に絶対じゃないわけだから、それを越えた理論を出すこと自体は問題ないと思うよ」 「そうですね。で、トコロを上位概念に置いたことについては…」 「うん、いや、ちょっと僕がそう思ってみただけで、アリストテレスのにもあったでしょ。言語についての対話が載っている、ええと、なんだっけ」  その直後、俺と大谷さんが同時に「クラチュロス!」といったので2人で笑った 「そう、それにも載っていた古い考え方であるけど、それを超えることは問題ないでしょう…って…答えになってないか」といって笑っていた  竹内さんが「ところで、1ついいかな。やっぱりね、7枚も刷ってきたのは凄いんだけれど、多すぎて話が飛び飛びだよ。もっとまとめないと。更に、言語を超えすぎている。もっと自分のやりたいことをまとめなきゃ駄目だよ。あと、実例に乏しい。哲学だからしょうがないかもしれないが、もっと言語学的にして実例を施さないと」  大谷さんは「はい、そう思います」といっていた  俺は3限とのギャップが激しかったので、竹内さんを随分見直した。ああ、ちゃんと言えるんじゃんと思った  そのあと、論文に前と後ろについて述べられていたので、それに触れた。前が空間的には前だけなのに、時間になると過去にも未来にもなるのは「見る視点が違うからだ」と大谷さんは言っていたが、そういう考え方もあるのかと思った  俺はアルカを研究しているときに前は空間→順番→時間の順に転用されていったので、空間では前が未来だが、順番では前に並んでいる人が自分より過去にモノを買えるので過去になり、そしてこれらが混同されたものが時間なのだということを知っていた。だからホワイトボードに図解して説明して言ったらみんな「おぉ〜、なるほど」という反応だった。大御所2人も頷いて考えていた 「元々先生の授業で発表するつもりだったんですが、没にしたんですよ」といったら2人が「それは没にしちゃだめだよ」といってきた。本当はアルカの研究の派生で、俺はアルカしか出来ない人間と思われるのが嫌だったから発表しなかったんだけど、「特に実例が乏しかったので、ザコ論文だと思ったので。それにまだ細かく考える必要がありますよ」といって留めておいた  でも、大谷さんとは対立する意見なので、水を差したかなと思った。そこで、終わったあとに「すみません、もしかしたら余計なことをいったかもしれません」といったら「いやいや、何いってんの。あれでいいんだって、面白かったし」といってくれた  結局、事実上発言したのは俺と大谷さんと竹内さんだけだった。こんな風になるとは思っていたものの、改めてなんだかなぁといった感じだった。フゥシカになんていわれることやら  でも、大谷さんは話が面白いので気楽に聞けた。次回は先生の都合の付く来週になった。終わってから竹内さんが「大谷君、個別に議論をしよう」といったが「あ、いや、できれば今度にしてもらえますか。待ち合わせなんですよ」という。竹内さんは笑って「なんだ、つまんねぇの」と冗談で言った 「でも、待ち合わせの相手は男なんですよ。悲しいことに。本当に彼女ほしいんですけどね、っていうか院受験とかよりそっちの方にばっか気が行くんですよー。あー、彼女ほしい、彼女ほしい」といっていたので気の毒になった。良い男だと思うんだけどな、俺からみると  大谷さんが寂しそうに去っていって、後を終えない雰囲気だったので、紗智枝を見た。部屋を出て、エレベーターまで行ったらみんな降りていた。残ったのは素性の分からない韓国の学部1年生と俺と紗智枝。沈黙が気まずいというか、そのままシカトするわけにもいかないので、「お疲れ様です」と話しかけた 「あ、お疲れ様です」 「そういえば聞きましたよ。学部1年の方ですってね」 「そうなんです」 「凄いですね、こんな会に出席するなんて 「はは、そんな」 「いやいや、そういえば日文の方ですか?」 「はい、日文です」 「教育系に進むんですか?」 「まだ決めていないけど、多分そうします」 「あぁ、俺としては言語学を薦めたいところですねぇ」 「はは、そうですね。でも、まだよく大学のこと知らないから」 「そうですか、じゃあ今度飲み会ぜひ来てくださいよ。ご一緒しましょう」というようなことで時間を凌いだ。彼と別れたあと紗智枝に「あぁ、疲れた」といったら「すっごく気を使ってたね」という 「うん、あの場で無言は可哀想だし。はは、「うそセレンがいる」って思ったでしょ」といったら笑ってた 「ううん、ちゃんと気を使える人って好き」  その後、西門を出て、カラオケに行った。1時間だったが、本当に歌わないので俺が全部歌った。「英語の歌聴きたい」というのでいくつか歌ったらにこにこして「私が出来ないことをしてる」といっていた。調子に乗って「じゃあ、ウソフランス語いきまーす」といってフレンチギャルを歌ったら「あー、知ってる!日本語版をお母さんがよく歌ってる」といっていた。ことのほか気に入ったそうだ。邦楽はバンプやポルノや平井堅を歌った。「ポルノもっと聞きたい。楽しい」といっていた  カラオケをおごって出たら、外で払うよというので「いいって、いいって。歌ってたの俺だし」といった。「うん、じゃあ、ありがと」という 「でもね、さっきのフランス語、かわいかったの」というので、可愛いってどういう意味だと思いながら「そっかー」と答えた 「どこ食べにいこっか。何か食べたいものある?」と聞くと、「うーん、とりあえず、駄目なのがお寿司」というので、おいおいそんなとこまでリディアかよと思って面白かった  その辺でカバンをちょっと持ってもらうことがあったのだが、そのとき4限に村上さんに出しておいたメールが返ってきた。紗智枝が「なんか今、ゆれたよ。メールじゃない?」というので、「は?」と思った直後、「あ、やべ」と思って「違うんじゃない?」といったが、どもってしまった 「じゃあ、パスタは」と聞くと、「あ、たべたぁい」というので、さっきもらったカードを渡して、「ここ、どうかな?」といったら「ん?どこ?」というので、「そこ」と指差した 「うん、いいよ」というので連れて行った。といっても俺も初めて。中に入ってパスタを2皿頼んだ。紗智枝はかぼちゃのパスタで、俺はゴーヤとトマトのパスタ。値段は忘れたけど、1皿1500円ぐらいじゃなかったかな  俺は「そうだ、メール」と思ったら、紗智枝がスッと立って、「私ちょっと手を洗ってくるね。……メール、やってていいよ」と全てを知っているような言い方で言ったので、かなり内心ビクッとした。俺はメールをちょこっと見て、そぞろに返して終えたころに、紗智枝が戻ってきた  待っていると前菜が来て、ポカリを薄めたような水が来て、パンと油みたいな付けるものが来た。全部おまけらしい。凄いなと思った。しかもキャンドルまで来たさ。おー、思ったとおりキャンドルですかーと思った。俺らが行った時はあまり客がいなかったが、その後ぞろぞろと来た  パスタが来たが、量が多い。夜はあまり食べないというアルティスの文化に従って小食にしていたら、「あまり食べないね」というので、説明したら「なるほど」といっていた 「セレン君、お酒は飲まないの?」 「俺は店じゃあまり飲まない。コンビニで買って静かで涼しい公園とかで飲む」 「えぇ、それじゃ不良じゃない」 「そっか、当時の癖が抜けてないんだ」といって火を見た 「なんかこの状況見てるとさ、レイコフの本を思い出すんだよね。woman fire dangerous thingsだっけ。全部揃ってるじゃん」 「火と女は分かるけど、危ないものって?」 「んー、この状況だと、俺かなぁ」 「そうなの?」 「じゃあ、ナイフかな」 「ううん、ナイフなんかよりセレン君の方がずっと危険だと思うよ」 「危険…ねぇ」  パスタ屋では大谷さんの話や韓国の話や先生の話をしていた。紗智枝はわりと聞いていた。先生は女好きで、韓国の写真も女の写真だけ買っていたことをばらしたら「うわぁ、そんな人だと思わなかった。人畜無害そうにみえたのに。立ち直るのに時間かかりそう」といっていた 「佐々木先生もね、昨日飲み会だったから行ったの。女の子4人と先生で。そしたら私、指名されちゃって横に座らされたのね。しかも結構そういう感じだったから、あぁ、人間なんだなぁと思ったけど、あれはちょっとねぇ…」 「うわ、そうなんだ。ってゆーかゼミ生はコンパニオンじゃないっての」といったら笑ってた 「長嶋先生はなぁ、空港に着いた途端バスガイド口説いてたもんな。あれには適わない。俺よりそういうのは若いんじゃないか」といったら「うわー、怖くて近寄れなくなったぁ」といっていた  紗智枝が「場所を変えようか」というのでキャンドルを徒に消してみたら、「不吉だね。ちょっと怖い」といった  席を立つ前に紗智枝がこそっと「あとで払うね」といったので、何て気が利く娘だろうと思った。こういう店で男が割り勘するのを嫌うということを良く知ってるなと思った。前の彼氏が良かったのだろうなと思った  俺も紗智枝も残したので、出て行くときに店主が出てきて、申し訳なさそうに「当店のパスタに何か問題がありましたでしょうか。すっぱいとか何か…」というので「いえ、パスタはとてもおいしくいただきました。ただ、小食なものですから。また寄らせていただきますね」といったら顔が晴れた  外に出たら本当に渡してきた。辞退したが、「じゃあ千円だけでも」というので「うん、じゃあ…ありがとう」といった  学習院の前のファミリーマートでアトムの歌詞をコピーしたが、そこに酒がないので目白通りを折れたとこ、揚子江の近くのサンクスで買った。3本買ったが、「お酒、私が出すよ」というので、お願いした。やっぱ男が2/3持つぐらいがちょうど良いんだなと思った  酒を買って何となく学習院にいった。途中で「セレン君って声がかすれるね」といわれた。「あー、声は結構気にしてるね」といったら「あ、ごめん」というので、「いや、別にそれくらいじゃ怒らないけど」といった。「でも、気にしてることいわれたくないよね」といっていた  大学に着いたところ、一旦手を洗うということになったので、少し別れた。俺は手洗いで一人になって考えていた。どうもこのムードは不味いな。かなり良いムードだよな。まさか今日どうにかなるなんてことないよな、リディアと思った。顔をばしゃばしゃ洗ったが、どうもムードを払拭できない感じだ。こんなにロマンチストだとは思わなかったな  戻ったら、紗智枝が先にいた。池で良いというが、俺が飽きたのでそこらをぶらぶら探していた。結局良い場所がないので歩いているうちに座禅部の小屋の外のベンチに行った。そこで少し話していたが蚊が多いので場所を変えた。ベンチで制アルカの音声教書を聞かせたら、感心してた  結局、池に行った。前とは違うベンチだ。右手が黎明、左手が壁、手前が池となるベンチの連なりで、壁側からみて二つ目、街頭の左のベンチで、俺が左に座っていた 「あのね、私のこと頭良いっていってたけど、もういい加減わかるでしょ?」 「そんなことないよ。人の能力見抜くのは得意だからね。君に何が出来て何が出来ないかわかってるつもり。だから過大評価して勝手に失望することはないよ。もし失望してたら誘ってないよ」といった 「人ってね、生きている短い間に出会える話せる人って少ないと思うの。だから絶対そのチャンスは逃がさない」といって、ふふふと笑っていた 「それって俺も入ってるの?」ときいたら「ってゆうか、主にセレン君のことなんだけど」という  話しているうちに大学院の話になった。どうにか院に行かせたいので3限や5限に誘ったことをばらした。また、カレシが出来れば行かないかなと思って古谷君や大谷さんとくっつけようと考えたことも話した  すると紗智枝は怒り出して「そんなこと考えてたの?そんなことされたんじゃ私、誰とも付き合うもんかって思うよ」といった 「ごめんごめん。でもさ、好きな人いないの?」と聞いたら、悩んでから「うん、今年はいない。いつも成就しないから」 「そっか…」 「今までにね、あまり付き合ったことないの。好きな人となったことはないし、言い寄られたことは何度もあるけど、向こうがその気になってるだけで私は何とも思ってなかったし。結局嫌になって別れちゃった」 「そっか。じゃ、そっちの作戦も駄目か。でもね、院は行ったほうがいいと思うんだよ」 「うん、結構ゆれてるとこ。授業に誘う方の作戦は上手く行ったと思うよ」  紗智枝はあまり飲まないので、ちょっとずつ回して飲んでいた。院には行ってほしい。どうすれば良いかと考えていた。他に手がないんだよね 「1つ暴露するとさ、カレシ作戦はいけると思ってたんだよ。古谷君でも大谷さんでもさ。いや、ぶっちゃけ、どうせなら俺でもいいやってぐらいな勢いだったよ」と冗談で言った。そしたら急に黙って「うん、いいよ」というので、「え、良いって…?」と聞き返したら「私、セレン君なら良いよ」というので、俺は言葉に詰まった。水辺を少し見て、「いや…そんなこといわれたら本気にとっちまうだろ」といったら、「うん、本気にして良いよ」という 「え…じゃ、なに……付き合う…の?」 「…うん、付き合お」 「いや、ごめん。今「付き合う」って聞いてまずはじめに大谷さんの論文思い出しちゃった。付き合うって英語でgo out withだからこれも関係だな、その辺はどうなんだろうって」といったら、「大丈夫、私も思い出してた」といった 「え、でも…今、好きな人いないって言ってたよね」 「だって、そんなこと…。それに、セレン君のこと好きになりかけてたのは本当だし」 「え、そうなの?」というと笑って「じゃないとこんなとこに来るわけないでしょ」というので、なるほどと思った 「でも、俺そういうの気付かないんだよ」といったら「ばかぁ」といった 「うん、そうだな。バカだな」 「ばかだよ、セレン君。あのね、それより「どうせなら」って何よ!」 「ああ、ああいう言い方は卑怯だったね。じゃあちゃんというよ。「好きだ。付き合おう」」と俺のかすれ声で言った 「はい…」と可愛く笑った 「でも、なんで古谷君や大谷さんだったの?自分っていう選択はなかったの?」 「うーん、古谷君の方が女の子の扱い上手そうだし、大谷さんの方がよくできた人だからね。俺じゃダメかなと思ってた」 「そんなこと考えなくていいのに」 「じゃ、俺のこと好きだったの?」と聞いたら「いつからって訳じゃないけど、こう…ゆっくりと」 「そうなんだ…どういう点で気に入ってくれたの?」 「色々かな。たとえば火曜にね、私の傘に入ってきてちょこっとしてたじゃない。あの時、なんて可愛いのって思った。あと、一番初めに長嶋先生の授業でここを読んでおいて下さいってことをわざわざ言いに来てくれたじゃない。あれで良い人だなって思った」 「うん、そりゃ折角授業に来てもらったのに嫌な思いさせたくないからね。でも、君じゃなかったら多分言わなかったよ。どうせ他は読んでこないから」 「そっか…じゃあ私のことはいつ好きになってくれたの?」 「俺もこれってことはないな。やっぱちょっとずつかな。一番は授業で発表が終わった次の火曜に本当に認知の本読んでたってことと、その上アルカに興味があるって言ってきたことかな。次は先週この池から出るときに手を握ったでしょ。あのとき冗談で嫌悪感ある?って聞いたら「全然ないよ」って言ったじゃん。あれはかなり来たね」 「そういえば、何て呼ぼうか?やっぱ紗智枝?」 「あまり呼ばれたことないから…「ちえ」と「さちえ」、どっちがいい?」 「ちえの方が可愛いけど、やっぱ名前で呼びたいな」 「でも、あまり呼ばれないんだよね」 「親は何て呼ぶ?」 「ちえかさちえ」 「じゃあ慣れてるでしょ」 「あまり呼ばれないよ」 「じゃあこれから俺がたくさん呼んであげる」 「うん」 「でも紗智枝って俺に脈あったのかどうか分からなかったんだよ」 「だから、そうじゃなかったらここに来ないって」 「まぁね。でも、確かに思わせぶりだったよ。今日もさ、初めてコンタクトで来たじゃん?あれで脈あるのかなと思ったけど、ズボン履いてたから駄目かなって思った。でも、もしかしたら俺に付き合うから履いてきたのかなって思ってみた」 「うん、あたり。家ですっごい考えたんだよ、どっちがいいかなって。でも、好み知らなかったし、セレン君と行くなら歩きやすくしなきゃって思って。靴もそう」 「あと、3限の授業でいつも席を空けるから、避けられてるって思ってた」 「あぁ、あれはね、セレン君は人に近寄られるのを嫌うから、入っちゃいけないんだなって思ってそうしてたの」 「俺、そんなこといったんだ?」 「ううん、みればわかるから」というこの言葉が一番心に響いた 「でも、こういう関係になって、今まで言えなかったことがいえるようになったよ」 「ん、たとえば?」 「たとえば、んー、紗智枝って可愛いよな、とか」 「え…」といってかなり照れてた 「コンタクトの方が可愛いってさっきサラッと言って流したけど、あれ、かなり緊張したよ。でも、今なら堂々といえる」 「うん、私、可愛いって言われたから頑張って取らずにいたの。目、いたいよー」 「でも、付き合っても日常会話以外も話そうね。言語学のこととか」と紗智枝 「そりゃもちろん、そういう関係も大事にしたいよ」  元はといえばそれで彼女を尊敬できたんだから、それは絶対にしたい。というか俺といれば嫌でもそういう話が多くなる宿命だ 「ところで、ずっと言わなかったんだけど…。背のことなんだけどね、絶対紗智枝、気にしてるよね」 「うん。結構私の深いところにある問題だね」 「紗智枝っていつもこう肩を小さくしてるから、あれ見ててずっと気にしてるだろうなって思ってた。だから絶対言わないつもりだったし、今に至るまで言わなかった。でもね、いい機会だから聞いておきたいんだけど、男の俺の方が小さくていいの?俺、せいぜい172cmぐらいしかないし」 「そんなの気にしないよ。180以上じゃないとイヤとか、そういう望みはないよ」 「そういえば先週さ、好きだった男の話してたじゃん?あれでダメかと思ってたんだよ」 「私も。古谷君とくっつけようと思ってたって聞いたときすっごくショックだったんだから。ああ、もうダメなんだって思ったもん」 「そっか。なんか俺ら中坊みたいだな」 「そういえば、付き合ってることって言っちゃっていいの?」 「うーん……いや、かくしとこう」 「わかった。でもね、私にカレシできたって打ち明けてくれた娘には言いたいな」 「俺、知ってる?」 「知ってるよ」 「誰?」 「同じ教授法の渡辺さん」 「……誰?」 「え?」 「いや、俺、紗智枝以外殆ど興味なかったから」 「前の前の発表した人」 「うーん?…今度みとくよ」 「う、うん…」 「まぁ、その娘には言っても良いんじゃない?」 「わかった」 「あのね、セレン君って付き合っても私の目、見てくれないの?」 「あぁ、あまり見ないと思うよ。イヤかな」 「私はね、見たい。セレン君の顔もっと見たいの」 「そっか。じゃあ、少し頑張ってみるよ」 「ねぇ、顔見せて。よく見たいの」というのでじっと見た。にこっとする紗智枝の顔が随分美人に見えた。特に理知的な瞳がかなり俺には来るものがある 「ひょっとして、親御さんって俺のこと知ってる?」というとクスクス笑って「はーい、実は全部知ってました。私、言いまくってたもん。「セレン君かっこいいー!」とか」 「マジかよ!?実は俺の弟とかもよく紗智枝のこと知ってるんだよ。しかも結構気に入ってるんだな、これが」 「えーっ、そうなの!?」 「けど、最近夜とか結構紗智枝のこと考えてたな。弟と話したりしてさ」 「私もセレン君のこと考えてた。結構眠れなかったんだよ。先週話したことを何度も思い出してたの。「あのとき、幸せだったなぁ」って思い出して幸せになってた」 「そっかぁ、俺も眠れなくて散歩しながら思い出したりしてたな。というかワードの日記にかなり書いてた」 「あのね、人って必ずどちらかが先に死ぬでしょ。生きている短い間にどれだけ話せる人に会えるかってことは重要だと思う」という命題を投げかけられた。また、「好きの反対は無関心だと思うの。好きは簡単に嫌いになれると思うの。いつかセレン君のことを嫌いになるかもしれない。でも、そのときお互いもとのふつうの関係に戻りたいの」といわれた 「そっか。それで却って安心したよ。今ちょうど、良い彼氏にならなきゃなって気負いしてたとこだよ。でもそれ聞いて思った。あんまり考えずに1日1日、楽しくやっていって、それを続けていこう」 「うん、そう、そうだよね」 「私ね、押しに弱いの」 「そうなんだ」  でも、ある程度押してもダメなら駄目なタイプだろうなと思った。リディアと同じだろうから 「でもね、私、好きな人と付き合えたことないの」 「そっか。俺のことも好きじゃなかったんだもんね。今回もそうか」 「ううん、そういう意味じゃなくて。セレン君のことはもう好きになりかけてたから。だから今回が初めてなの。両想いって」 「あぁ、そうか、両想いか…」  久しぶりに聞いたな、その言葉。中学以来だ 「だから、ちゃんと男の子と付き合うのってこれが初めてなんだ」 「すっごい奥手だね。俺も小中学生のとき以来か。こういう関係は」 「小学生?おませー」 「あとね、私が何か望んだら断れる?」 「場合によっては」 「結構わがままいうかもしれないから、ちゃんと断ってね」 「わかった」  時間、いつだか全然分からなかった。俺はというと、トイレを数時間我慢していたのでかなりきつかった。とにかくこのナイル川をどうにかせねばと思って、「結構我慢してて」という話をしたら、「じゃあ、そこでしていいよ」という 「そんな原始人みたいな真似はできません」 「でも、もたないでしょ?」 「うーん、じゃあすぐ戻るから」 「え、やだ、おいてかないで」  っていわれてもそこらで堤防決壊するからには見えないところに行かなきゃってことで、「じゃあ、すぐそこにいるから。何かあったら声だしてね」 「わかった」  ということで決壊させて戻ってきたら「今、お母さんに電話した」という 「あ、良かった。心配してたんだ」 「でね、ムードも何もあったものじゃないんだけど、私、もう帰らなくちゃ」 「終電あるかな。時計が…えーと、もう11:15だろ」といいつつ歩いた  西門が使えなくなっていたので正門にいった。正門から出て、駅に向かった 「終電なかったらどうするの?」 「友達の家に泊まるかな」 「学校は泊まれるけどね」 「それはいや、怖いもん」 「でも、友達のところに泊まるぐらいなら彼氏のところに泊まりなよ」 「できないよー、ばれるでしょ」 「ばれないって」 「ばれるよー、ってゆうか私そんなことしたらとんでもない女じゃない。いきなり家に行くなんて」 「そっか。けど、終電ないと困るよね。そうしたらどっか泊まるか。いや、変な意味じゃなくて。まだ話したいし」 「うん、そうなったらそうしよう」  けど、駅に行って聞いたらまだ11:45のがあるという。紗智枝はちょっとトイレ行くねといって一旦いなくなった。戻ってきてから「あと15分くらいいられるよ。話してよっか?」というので、「あぁ、そうだね」といって改札を出てすぐ左手にある交番の目の前の街灯のところにいった。薄暗い方がムードが良いから、どちらかがいうわけでもなくそちら側に寄っていった 「そういえば、先週の発表でセレン君を避けてたんだよね」 「あぁ、かなり避けられてたんでなんでって思った」 「1回しか当てなかったもんね。別に嫌いで避けたわけじゃないさ…」といって照れてた 「あぁ、来週は先生か」 「なんか変な感じだね。私が生徒役なんてやったら」 「そうだね」 「次会うのは火曜か」 「さびしいね…」 「そういえば、奥手だって話したけど、どれぐらい奥手だったの?」 「え、どういうこと?」 「たとえば、そうだね。じゃあ、ファーストキスも遅かったの?」と聞いたら恥ずかしそうに笑って「ううん」と首を振った 「それは早かったんだ」 「違うの。…ないの」といわれたので思わず「は!?」といってしまった。勿論、外から見たらちょっと驚いて「えっ!?」ぐらいの声で。そんなに大きな声で言ったりはしないから。それでも次の瞬間ヤバイと思った。が、もう遅いといった感じ。竹内さんに箱根を言われたときの50倍は驚いたね 「…やっぱり、そんなに驚く?」  俺はまずいなと思っていたので、なんか挽回しようとぐるぐる考えた。遠くでサンシャインの屋上が光っているのが見える。緑と赤だ 「いや、うん、驚いたよ。確かに驚いたけど、それと同時に、なら欲しいなって思った」 「え…?」 「うん、欲しいって思う」 「でも、ここ…人いっぱいいるよ」 「大丈夫だよ。なら、今から人気のないところに行く時間ある?」 「ない…」 「でしょ。じゃあ、いい?」 「でも、私唇カサカサしてるかも」といって唇を自分の指で撫でる 「俺、結構ロマンチストなんだよ。こういう特別な日だしね」 「でも、それ、ロマンチストじゃないよ。直情的だよ」 「そっか」と言って、じゃあ諦めるかと思ったら、紗智枝はこういった 「でもね、私、直情的なの…すき」 「そっか…。じゃあ、もらうよ」といってキスをした。右手を頭の後ろに回して唇を重ねた。意外というか知らないからだろうか、若干舌を入れてきたので少し驚いた。2秒ほどして離した。紗智枝はとろんとした顔をして、ぽーっとしていた 「くらくらする…」  開口一番にそういって、小さく震えだした 「お酒のせいかな、倒れそう」  酒なんて1時間以上前に何口か飲んだだけなのに、可愛いことを言う  赤くなって固まっているのに震えている。声も震えていて、ぽーっとしている。なんか可愛いなと思ってみていた。キス1つで、くらくらして倒れそうといわれたのはリディア以来だ。メルはサッパリだったし 「どう?」 「いい、すごく…いい」といって暫くぼーっとしてた 「紗智枝の唇、柔らかかった」 「セレン君のが柔らかかったよ…」 「俺も結構緊張したよ。漫画やドラマとは違うでしょ」 「うん…」 「中坊みたいだな」 「最近の中学生ってもっと進んでるから、中学生以下かも」 「強引だったかな、俺」 「ううん、そんなことないよ。でもね、今、ぐっと近くに来たでしょ。あのとき「あぁ、やっぱり男なんだなぁ」って思った」 「え、どういう意味?」 「ううん、なんとなくそう思っただけ」 「次、会えるの、火曜だね。火曜、デートしよっか」 「でも、私、4限まであるよ」 「そりゃもう待ってるよ、お姫様を待つ気分で」といったら顔を真っ赤にして「うれしいー、すっごくうれしい」といっていた。この瞬間が一番嬉しそうだった  紗智枝はポツリと「セレン君が初めてだよ」といった。控えめに小さくて、可愛かった 「うん、光栄だよ」 「ねぇ、セレン君、街灯に寄りかかったら?」 「ああ」といって寄りかかったら、「あぁ、初めてだね。こんな近くに来てくれたの。初めて私、セレン君のこんな近くに来れたよ」といっていた 「うん、紗智枝は特別。あのさ、本当に帰るの?」 「…うん、帰らなきゃだめだよ」 「そっか。じゃ、お別れのキスしよっか」 「え…うん。でも、ここよく見たら交番の前だよ…」 「気にしない気にしない。悪いことしてるんじゃないし。…いくよ?」  それでもう一度キスした。同じようなキスだった。俺は紗智枝の後ろ髪を撫でて、首筋と肩に指を這わせていき、そのまま下に腕を撫でていき、最後に手を取り、その手をゆっくり離して、「じゃあね、おやすみ」といってゆっくり別れた。紗智枝はぽーっとした顔で「うん、おやすみ…」といっていた  キスする前に次は火曜だねといったときは「寂しいね」といっていたが、それは本心と義理が6:4といった感じだった。しかし、ファーストキスを奪ったあとは、かなり態度が違った。実はこうなることを期待してキスを奪ったわけだが、随分効果があったと思う。今は雰囲気で恋人になったが、暫くしたら醒めるだろう。そうならないように印象付けるためにはとりあえずキスかなと思ってしておこうかと思ったのがそもそものはじめで、それでファーストキスを聞いたわけだが、したことないというのは流石に予想外だった。それが本当かどうかは分からないが、ふしだらにも見えないからひょっとしたら本当かもしれない。そうだとしたらそれは凄いな。可愛くない女ならいくらでも取っておいてるだろうけど、そうじゃない紗智枝みたいな女の子が21歳までファーストキスを取っておいたというのは凄いと思う。21歳の処女は一杯いるとしても、この時代にファーストキスがまだというのがいるとは思わなかった  上でも書いたが、キスしたあと、デートに誘ったら「でも、私4限まであるよ」というので、「じゃあ、お姫様待ってる気分で待ってるよ」といった。そうしたら頬を赤く染めて泣き出しそうな顔で「いやーん、うれしい、うれしい」といっていた。喜びを10段階評価するとしたら多分、昨日の時点ではこのときが唯一10だな  キスは効果あったな。ということはあながちファーストキスというのは本当かもしれない。しかしな、ロチューが初めてというのはどうしたものかな。そういえば最近は殆ど見ないなぁ。俺って紗智枝的に言うと「とんでもない男」なのか?うーん、それが原因で遊び人だと思われてもヤだなぁ…  そういえば、街灯に立った頃、ちょうど雨が降ってきた。霧のように細かな雨だ。殆ど降ってなかったので無視していた。でも、別れたあと、俺はふつうにブクロまで歩いていた。そのとき、しとしとと振り出したが、リディアを裏切ったかもしれないなということばかり考えていたので濡れてもいいという気分になっていた  電車に乗って、その中でメールを出した 「「おもいつつ ぬればやひとの みえつらむ ゆめとしりせば さめざらましを」  でも今なら覚めてもいいかも。早く火曜になぁれっと(笑)  ん、電車は大丈夫そう?」  するとまもなく2つ返ってきた 「我背子に恋ひて乱れば、くるべきにかけてよせむと、あが恋ひ染めし  万葉は57調なんだよ」  というのと 「うん。大丈夫だったよ。セレンくんも気を付けて帰ってね、てゆうかもう帰っているか。(テイルだね)」  というのが来た  俺はこう返した 「さすが紗智枝。そういうリアクションを待ってました♪  今さっきの別れ際のことが忘れられないところ  遅くなって母御さんに心配させてしまったろうから、申し訳ないです」  するとこう返ってきた 「母に伝えておくよ。  さっききみの顔をよく見て、はっとした。顔にもほれてしまったよ。」  俺はこう返した 「俺も紗智枝の理知的な瞳に惚れ直してたよ  今日は幸せな夜をくれて本当にありがとう。気をつけて帰ってね。おやすみなさい」  するとこう返ってきた 「その後半、そっくり君に返すよ。  おやすみなさいセレンくん。」  メールは全て見ながら写したから句読点やスペースの単位まで正確だ  俺は帰りながらリディアのことを考えていた。で、MDを聞いていた。うーん、大変なことになったなと思った。でも、そうでもないかとも思った。まず、紗智枝は恋愛向きの女じゃない。誰かを好きになったって一時的なもので、リディアと違って長くは続かないだろう。もっと淡白な女だろう。そのうち、1ヶ月か3ヶ月も経たないうちに向こうからやっぱり元の関係にしようといってくるだろう。それならそれでいい。俺は今日の経験が楽しかったから、それだけで十分。思い出に浸ってる方が好きだからね  あと、どんなに上手く行っても紗智枝は彼氏を置いて中国に行くらしいから、付き合う期限はせいぜい半年だ。だからそれまでリディアや、メルにばれなければいいだけのこと。勿論、紗智枝にも彼女たちのことはいわないつもりだ  しかし、セフレを入れて女が同時に4人というのはいったことがあるが、恋人という計算では現在の3人が最大だな。つーことは三椏か。ばれたら刺されるな。でもまあ、いつもどおりそれでもいいかという気持ちだな。戦争で死ぬのは最悪だ。どうせなら腹上死か嫉妬した女に殺されるのが一番だ。せめて好きな女に殺されたい。その気持ちは未だに変わらないな  なんというか、紗智枝はそっけない女だ。俺はそっけない反応が苦手だ。リディアたちみたいな外人とばかり付き合ってきたから、恋愛表現が結構大げさだからだ。このメールだってもっと大げさに書いてもよさそうなのにと思う。だからこそ恋愛向きの女じゃないなと思った  けど、いずれもしても可愛いと思ってしまったし、付き合うといった以上は、幸せにしたい。紗智枝のことは気に入っているしね。俺と付き合って良かったと思わせたい。当然、リディアやメルと同じく優しくするし、可愛がってあげる  俺の狙いはこうなったら恋愛感情を上手くフェードアウトさせていって、友達として収まるということだ。つまり、少ししたら傷つけないように別れようということだ。それまでは大げさでも可愛がってあげなきゃな  でも、なんだかんだいって紗智枝のことで悩まずに済むようになったので、気が楽になったということは確かだ  なにはともあれ、こい1日だった。恋くて、濃い1日だった