『椿山荘』 14,ral,pin div  ral,neeは火曜だった。2限で村野さんの教授法にいった。相川さんたちの発表だった。発表が終わってから村野さんが一人ずつ感想を言わせていった。俺の番になったので 「まず、ハプニングで1人欠けてしまったにもかかわらず、特に慌てることなくできていたのは良かったと思います。ただ、気を抜くと「〜でぇ」「〜みたいなぁ」という言い方をしてしまうことがあって…かわいいんですが」  といった瞬間、みんな笑い出した。村野さんが「ダメよ、貞苅さん。あなたにそんなこといわれたら女の子は母性本能感じてくらっと来ちゃうから!」といった。あーと思って右方向の紗智枝を見たら、前方を見て笑っていたので安心した 「いえ…とにかく、その言い方が生徒さんに移ると問題かなぁと思いましたので」と締めくくった  すると右隣に座っていたタカがすっと紙を出してきたので見たら、「おこられるよ」と平仮名で書いてあった。しかも怒という字と怒りマーク付で。俺は紗智枝の顔を確認してるし、淡白だと思っているので「大丈夫だよ、怒らないって」といった  2限のあと、西海でラーメンを食べた。そのあと3限へ。隣に紗智枝がいるはずなので行こうかと思ったが、まぁ渡辺さんというのと話してるだろうと思い、そのままでいた  授業でレポートの発表があった。一遍の念仏というテーマだという。挙手して「少数宗教との対照でもいいですか」ときいたら「いいです」というので「ありがとうございます」といって寝た  3限が終わってからハンズへ歩いて頼んでいたキャストパズルを買った。あと、MUSASHIのFUという健康食品を買った  学校に戻って少しすると4限が終わった。4限は紗智枝は日本語教育のボランティアだが、今日は最後なのでパーティをしたんだと。俺はピラ校の中に入ってソノリティの実験をしていた。今度のディアセルで、例のメルの発表を補助するためだ  そしたら紗智枝からメールが来た 「終わりました!」 「今、ピラ校の中にいるよ♪」  少しすると声が聞こえた。下を見ると紗智枝がいた 「何してるの?」 「え?あれ、紗智枝?」  全く気付かなかった。意外だ。というか反響が激しかったので外の声かと思っていた 「もしかして何度か呼んだ?」 「うん、「何してるの?」って」 「ごめんごめん、アルカの実験をしてた。ソノリティの」 「ふーん」 「パーティ終わった?」 「まだなの。続けるつもりらしいから私、すごい忙しそうなふりして逃げてきちゃった」 「え、いいよ。ちゃんと最後まで出てきなよ」 「いいのいいの、そんなこと。それより見つかるとヤだから」 「そっか、じゃあ逃げよっかね」  そのまま学生部にいって大学院の願書の話を聞いた。願書はいつでもいいらしいが、提出機関は秋と春で2度別々らしい。2度受けるなら2枚必要。一部800円。紗智枝はその気がないようだった。やはりタイムリミット付の彼女なんだな  エレベーターで紗智枝が「処女の血っていうお酒を今飲んだの。一口でダメ」という。処女の血という言葉を連呼するので乗り合わせた女の子がじっとこちらを見てきた  学生部を出て西門へいった 「そういえば俺らどこに行ってるの?」 「さぁ…」 「どこか行きたいとこある?」 「うーん」 「椿山荘、行ってみる?」 「あー」 「実は、今日調べてきたんだよね。道も分かってる。そんなに遠くないみたい」 「うん、じゃあ行こう」  正門を出たところで「そういえば、2限で俺がかわいいっていったとき、タカが紙を出してきてさ。見たら「怒られるよ」って書いてあったんで、「怒らないよ」っていったんだ」といった 「いや、怒ったよ」 「え、怒ったの?」 「怒ったよ。だって私、きって睨んだでしょ」 「いや、チラッと見たら笑ってた」 「笑いながらかなり怒ってたし、その前は思い切り睨んでたよ。授業中に何いってんの!って思ったよ。だってさ、「あー、なんか喋ってんなー」って思ってたらいきなり「かわいい」とかいうから思わずハッとして「なにをー!?」って思って振り向いちゃったよ。思い切り見てたよ、あの瞬間は」 「そっか、そっか。でも、怒った方が可愛いな」 「でも、そういう自分が嫌いなの」 「彼氏を独占したがるのは当然だよ。もっと怒ってもよかったよ」 「自分が嫌な人間に見えるから…」 「うん。ま、怒ってたのは意外だったからちょっと嬉しかったよ」  目白通りに沿って歩いていたが車がうるさいので中に入った 「俺ね、うるさい道とエレベーターの中と電車の中では無口になるんだ。怒ってるわけじゃないから安心してね」と伝えておいた 「ところで、中に入ったけど、多分迷うよ」 「えっ?」 「ま、そのうちつけるよ。人に聞いたり迷ったりしてると中々面白いよ」  といってぶらぶら歩いていた。結局神田川沿いに歩いていったので、倍近い時間がかかった 「そういえばハートと楕円どっちがいいって昨日メールで聞いたでしょ」 「あ、うん。あれなんだったの?」 「いや、心理テストなんだけど」 「こわいなぁ、で、答えは?」 「それが、答えが分からないまま俺仕事に行っちゃったから」 「あ、そっか…気になる…」  椿山荘にいったが、凄いね、あれは。豪華すぎる。ホテルを突き抜けて庭に行くのだが、豪華すぎて恐縮だ 「私、こんな服できちゃった」 「俺も。これじゃ不良だしなぁ」  だが、景色は圧巻。滝の裏側やパゴダ、蛍がいた池、水車、井戸、赤い橋、様々なものをみた。途中紗智枝が「あー、長嶋先生!」というので見たら、福禄寿の像が立っていた。俺は爆笑して「なーがしま先生!こーんなところで何してんすかー!」といってペシペシ叩いていた。「出張だ、出張だ」といって笑っていた  パゴダのところで会った係員のおばちゃんが話しかけてきたので暫く話していた。その三重塔を見て「男が作ったんですよ、これは。男の世界ですよ」といっていた。俺は「でも、その影で支えていたのは女だろ」と思ったが、黙って聞いていた  粉糠雨が降りしきる日で、俺は傘をハンズにいったときにファミマで買ったのでそれをさしていた。紗智枝は俺がさそうとすると「ささないで」といって相合傘をしようとしてきた。恥ずかしいからという理由で俺が傘をさしていたら、折々に何度かいってくるので、ささずに肩にすりよって「にゃー」といったら「かわいい!かわいすぎ!ねこがきたよ!」といってはしゃいでいた。そのあと砂利がソールにはまってジャリジャリいうので、紗智枝の足を取ってソールの砂利を取った。勿論自分のも  そのあと俺が水が飲みたいので自販機を探したいといったが、ないない。しょうがないので外に出て買ったが、なんかもう戻る気力がなくなったのでそのまま帰った。今度は目白通りを通って帰った  大学に帰る途中でサンクスによって夕飯を買った。大学に戻った 「紗智枝、どこに行こうか?」 「うーん、どこでもいいよ」 「あ、そうだ。誰もいない教室って行ってみたくない?」 「あ、うん、行きたい」 「レトロな和風と新しい洋風のどっちがいい?」 「レトロがいい」  ということで最寄の東別館に行った。自分たちがふだん授業を受けている教室にいってみようということになった。金曜3限の教室に行った。先生の席に座って、いちゃついていた。窓は開いていて、まだ少し明るいが、徐々に暗くなっていく 「膝の上においで」 「重いからイヤ」 「大丈夫、俺は男だよ。おいで」  といって膝に乗せて、ぎゅっと抱いた。リディアは勿論、メルよりも大きいのでちょっとキスがしづらい体勢。そのままいちゃいちゃしてた。キスした 「今日、初めてしたね」 「…うん」  そのまま首筋と耳に進んでいった。紗智枝が強く俺を抱きしめてきて、吐息がやがて可愛らしい嬌声に変わっていった。手も弄っていた。しばらくあやしてあげた 「耳、されると思った?」 「むしろ期待してたかも…」  雨に濡れたから上着を脱いでタンクトップ姿になったら紗智枝が急に「良い体ー!」といって腕や胸を触ってきた 「ねぇ、私の前に、何人の女の子がいたの?」 「うーん…」  椿山荘とその帰り道で2度似たようなことを聞かれ、これが3度目だ。もう避けられないなと思った 「だから、多からず少なからずだよ?」 「それってどれくらい?」 「…いつから?小学生?」 「ここ。大学で」 「うーん…」  まともな付き合いというのはちょっと…。まともでないならともかく 「いえないの?じゃあ告白されたのは何回?」  そういえば数えたことがないなと思って思い出してみた。まぁ記憶してるだけで7回程度かなと思い、正直に告げた 「7回!?そんなに?ふぁーーー…。え、なんでふったの?」 「だって、前の彼女がいたから」 「あ、そうか…。ねぇ、金曜にセレン君がもてるって聞いてから凄い不安なの。あのときはそうでもなかったんだけど」 「俺が浮気するってこと?」 「うー…」 「もししたらどうする?」 「え?」 「怒る?悲しむ?」 「悲しむ、かな」 「じゃあ大丈夫。こないだ行ったでしょ、池で。紗智枝が悲しむようなことはしないって」 「バイトの子はどうなったの?」 「なんかカラオケ行くってことになったんだけど、困ってるんだよね。俺にはその気はないのに。どうやって巻くか考えてるところ」 「2人きりで?」 「ん、そうかもしれない」 「むー、友達までなら良いよ。あ、しかも彼氏持ちの女の子ね。じゃないと嫌」というので可愛いなと思った 「じゃあ紗智枝は浮気しないの?」 「え?わ、わたし?そんなのする気も起きないよ。ってゆうか時間が勿体無い。そんなことしてるくらいなら私、セレンに会いたい」 「そっか。んー、たとえばタカとかナリとかは?」  といったら紗智枝はぷっと笑って口に手をあて、「えー?佐藤君と成田君〜?」といって終了した。あいつら、男でさえないのか。つーか紗智枝の切り方は恐ろしいなと思った 「じゃあ八嶋ちゃんは?」  といったら今度はまともな反応で「あー、八嶋君ね。沖縄行って焼けたね。それだけ」といった。女って… 「でも、私が浮気したらいやでしょ?」 「うーん」 「いやじゃないの?」 「どちらかというといやかな」 「どちらかというとってどういうこと?」 「浮気される時点で俺も半分悪い」 「セレン君は悪くないよ」 「だって、引き止めておく魅力がなかったってことでしょ?」 「あぁ…。でも私、浮気なんかしないよ。ってゆうか考えられない。それに浮気するなんてセレン君に対して失礼だって思ってる。だから私、絶対浮気しない」  紗智枝はあまり絶対とかいう強い言葉を使わないんだが、珍しく絶対といっていた 「紗智枝ってさ、あまり人に甘えてこない人生だったでしょ」 「うん」 「だから、俺には甘えていいよ。その方が嬉しいし」 「でも、きっとわがままになるよ」 「そこは大人だからね。甘えと我侭のラインを保っていれば」 「私、子供だよ。わがままいっちゃう」 「んー…まぁ、我侭でない程度に甘えてもらえれば…」 「あのね、やっぱり皆にはばれないほうがいいかも」 「なんで?」 「だって、セレン君にふられた娘に何されるか分からないし…」 「そりゃそうだね」 「私、勉強で嫉妬されることはあったけど、恋愛じゃないから」 「あのね、池で「もし別れても人間的には尊重しあおうって」私、言ったじゃない?」 「うん」 「でも、あれ無理かも。離れたくないよ…」 「セレン君ってもてるんだね。凄く心配」 「大丈夫だよ。光源氏みたいなことはしないから。それに彼氏がもてないよりはいいんじゃない?」 「やだよ、彼氏がもてるなんて。心配だもん」 「じゃあ、しっかり捕まえてなきゃね。俺は紗智枝が思ってる以上にもてるかもしれないよ?」 「いやーん、そんなこといわないでー」 「今度の金曜さ、無理しなくていいよ。生理なんでしょ。別に俺はそういうことするために紗智枝と付き合ってるんじゃないから」 「うん。てゆうか本当に生理終わってなさそうだし」 「やっぱり今でも怖い?」 「怖いというか…子供が心配…」 「そうか、そうだね。生活力ないもんな、それは怖いな」 「私の親戚ね、避妊したのに2回もできちゃったの。そういう家系なのかもって思うと…」 「とにかく、俺は紗智枝を傷つけるのは嫌だから、しないならしないでいいよ」 「うーん…でも、生殺しじゃない?」 「そりゃ、まぁね」 「じゃあ、直前までしよう!」と屈託なくいうので、すっかり毒気を抜かれてしまった。直前までしたら男は余計辛いんだって 「ま、それに俺はこうやっていちゃいちゃしてるのが好きだしね。ふつうの男だったらどうにか女の子を言いくるめて抱こうとしてるところだけど」 「そうなんだ…」 「俺は変わり者なんだよ」 「そうなの?どうして?」 「理由を聞いたら嫌になるよ」 「でも、聞きたい」 「ん…元々俺って凄い性欲強かったのね。で、女の子をとっかえひっかえしてたの。まぁ、割ともてる方だったから。年齢なんかヤバイよ。下も上も」 「一番下はいくつ?」 「俺が8歳のとき」 「は、はっさい!?あ、相手はお姉さん?」 「いや、相手も8歳」 「んなっ…どんな娘?」 「隣の席の娘」 「あ、ありがちぃ…凄いね、それ。でも、よくできたね」 「まぁ、その頃なりのことはしたよ。で、そういうことばっかやってて、あるときもう飽きちゃったんだよね、そういう淡白な関係。結局今抱いてる女が自分のこと好きじゃないなって思うようになった。それが不満でね、愛情のないえっちに興味が失せた」 「そうなんだ…欲望が満たされたんだね」 「そう。それからはすっかり今の俺に変わっていった。要するにふつうの男は欲望が満たされてないから余裕がなくて焦って女の子を傷つけるんだよ。でも俺は飽きちまったから、その辺で余裕がある。…失望した?」 「ううん、してないよ。むしろ聞いてよかった。安心したよ」  そのまま話していたら守衛が来そうだったので外に出ようとしたら本当に守衛が来た。暗い部屋でいちゃついていたので守衛は驚いて「びっくりした」といっていた。若い男だ。「もう時間だよ」というが、ちょうどでていこうとしていたので好都合だった  そのまま西1にいって109に入って夕飯を食べていた。紗智枝が明日は7:01の電車に乗るというので8:30には帰るという。しかし、話しているうちに9:15になってしまった。45分オーバーだ。俺は何度か「もう帰らなきゃだめだよ」といったが、「離れたくないの。帰りたくないの。ずっとこうしていたい」という 「俺もだよ。でも、帰らないと。明日仕事でしょ。ね?」 「うん」 「また金曜会えるから」 「うん」  で、結局いちゃいちゃしてた 「セレン、好き」といってきたが、俺はおにぎりを食べていたのでうんと頷いただけだった。言い返したいけどいえないと伝えた 「えへへ、じゃあ今のうちに言っちゃお。セレン君、好き、好き、大好き」  俺はうんと頷くだけだった 「今日ね、8時に学校に来たの。もうその頃からセレンに会えるって思ってどきどきしてた。早くセレンに会いたくって」 「俺、飯を食うとき目をつぶることがあるんだ。食べるのって気持ち悪いなって思ってるから。でも、紗智枝が食べてるのを見ても少しも嫌じゃなかった」 「そうなんだ。私も目をつぶって食べたことあるよ。父親と食事が一緒になったとき、どうしても見たくないから目をつぶって食べてたの」 「それは…怖いな。いつか俺もそう嫌われるのかな」 「あ…それは大丈夫だと思うけど。でも、私は好きから一気に嫌いになるしなぁ」 「そういえば、欲望って満たされたんだよね。その女の子たちがいたから」 「うん。で、さっき紗智枝が気持ちいいって言ってくれたけど、それもその娘たちの存在が前提となってるわけで…それでも嫌じゃない?」 「昔の女のことだから」 「まぁ、そういう踏ん切りさえ付けば彼氏が下手なよりはいいでしょ」 「うん。でも、なんか悪いな、その女の子たちに」 「いいって。折角なんだから自分はラッキーだって思わなくちゃ」 「そっか、私、ラッキーなんだ。あんなに優しく気持ちよくしてもらえたのはその娘たちがいたからなんだよね。うん、ラッキー」 「そういえば、ピラ校で耳をされたときに、この男遊び人だって思わなかったの?」 「そんなこと考える余裕なんてなかったよー。何も考えられなかった。私ね、あれだけ優しくされたし、気持ちよかったし…なんか初めてでこんなによくされるともう抜け出せなくなっちゃうよ」 「うん、それが狙いだからね」 「えー?」 「なんてねー。でも、抜け出してほしくないのは事実。紗智枝が誰かに取られたら嫌だからね」 「ふふ、私はセレン君のものだよ」 「俺も、紗智枝のものだよ」  紗智枝が俺の右手を取って、手の甲に何度も何度もキスをしてきた。離すとも離さずともなく、何度もちゅっちゅとしてきた。吸うように、舐めるように。やがて俺を上目遣いで見て、怪しく微笑む 「今、手の甲に嫉妬したよ」 「ふふ…」 「ん、日本語より先に英語が出てきた」 「英語?どうして?」 「仕事で使っているからかな」 「聞きたい。聞かせて」 「Why don't you kiss me on the lips?」  はじめは囁くように。紗智枝が「もういちど」というので、低いトーンで"Why don't you kiss me on the lips?"と告げた 「あぁ…かっこいい…。英語だとそんなにかっこよくなるのね…」といって目をつぶって顔を少し上げてきた。俺はゆっくりとキスをした。この教室で。電気が赤々とついた教室だ。前にここで授業をしたかもしれない。外から人が通れば見えるだろう、そんな教室だ。紗智枝の唇は濡れて柔らかい。マシュマロとは違う。潤ったマシュマロだ。弾力があって、それでいて溶けそうなくらい柔らかい。唇をはむはむしたり、唇に舌を這わせてくすぐったり、唇の間に舌を出し入れしたり、向こうも舌を絡めてきた。舌は唇以上に柔らかく、ことのほか興奮するようだ。そこらへんは日本人でも外人でも変わらないんだなぁと思った。歯や歯茎にまで舌を這わせて、紗智枝の口の中を舐め尽すように食べていった。濃厚なキスだ。そんなこと教室でやるなよって感じ。なんか間近で話していたのに全く無臭だし、キスをしても無臭だ。凄い健康だな、というか若いなと思った。むしろなんかいい匂いがした。甘い吐息というが、正にこのことなんだろうなと思った  終わったら「わたし、乱れてた。乱れてた?」というが、なんといったかはじめはよく分からなかった  教室を出て、駅へ行った。途中、小鳥姫の話をした。大学1年の6/19だったかな。或いは5/19だったかな。紗智枝に説明した。セレスとトワーユ・ヴェーユの話もした。小鳥を埋めたところを通ったので、「ここだよ」と説明した 「あの小鳥はトワーユへ行けたかな」 「ん…よくわからないけど、二人の…セレン君とその女の子にそれだけ優しくしてもらえるだけの価値がその小鳥にはあったんだね」  そのまま西門を出て、駅へ行った。話していたら9:15になった 「あ、長嶋先生!」と紗智枝がいう。振り返ると福禄寿ではなく本物がいた。しかもこちらには気付いていない。そのまま駅へ消えていった 「あぶなー、今、俺、キスしようとしてた」 「せんせぇ…」 「いやー、さっき椿山荘であったばかりなのに、お帰りが早いなー!」といったら紗智枝が大爆笑しだした 「ふ、ふくろくじゅ…」といいながら大笑いしてた 「バンドの人にはばれた?」 「微妙に。でも、ばれたくない」 「なんで?俺は自慢できない彼氏なの?」 「私ね、自慢するときは自信のないときだけなんだ。今は幸せだから自慢したくない」 「でも、紗智枝はもっと自信を持っていいよ。なんせ難攻不落の俺を落としたんだから」  俺は紗智枝の髪を撫でた 「この知的な頭と、理知的な眼と、そして気立ての良さでね」 「うー…。でもね、セレンのいいところは私だけが知っていたいの。誰にも見せたくない。外界に触れさせたくないの」 「取られそうだから?」 「…うん」 「かわいいね、紗智枝は」 「さ、もう時間だよ。最後に何されたい?」 「…もっと話していたい」 「…あと1分でできること」 「じゃあ」といって目を閉じた。俺は最後なので心を込めて甘くキスした。紗智枝が「んん…」というので「どうしたの?」と聞いたら「傘、落としそう。力が抜けてくの…」という 「落としちゃえ、そうすれば誰にも見られないよ」 「んー、いやぁ…」  唇を付けて離し、優しく見つめて「またね」といって別れた。紗智枝も「またね」といって微笑んでいた。俺は粉糠雨に濡れながら帰っていった