2012/05/31 大修館から電話があって、男の人で、「内容が非常に面白いんだが、自分のところは小説を出したことがないのでどう扱っていいか分からない。これは小説の部類になるので、言語学の教材の棚に置くのが難しい。となると小説の棚になるが、ここは会社がパイプを持っていない棚で未開拓なので、小説に強い版元に持っていってもらったほうがいいと思います。一般人でも分かる物語的仕立てというのは非常に面白いのですが、ウチでは大学教材などを主に扱っているので得意分野と合わないのです」という説明を受けた。俺のときも相手に同じこと言ったろうなぁと思った。 で、同じ出版でも教材はともかく小説界のほうはよく分からないので調べてみたら、小説は志望者が多すぎていちいち個人単位の持ち込みをしないらしい。 そこで電撃大賞みたいに一定期間で賞をとった者がデビューできるというシステムらしい。 そうなると今度は逆に「内容がアカデミックすぎる。これは専門書の棚では?」という見方をされる。言語学の概説書が小説や文学の賞をとるわけがないわ。 岩波とかいくつかの賞を見てみたが小説路線だと無理だわな。 となると新書なのだが、新書から見ると「これは新書じゃなく小説では?」と見られてしまう。 専門書、小説、新書のいずれで見ても「これはウチの分野と違うのでは?」と思われる。 それは学問の概説を物語的仕立てで行なっているから。だからどの分野から見ても中途半端に見える。 一般人のパイが大きいジャンルならともかく、国内に何人いるんだってくらい過疎な言語学。当然数学ガールやソフィーの世界のようにはいかないってことだ。数学は義務教育で国民すべてが認知しているけど、言語学は語学とすら区別が付かない人が99%という世界だからなぁ。 ともあれ大修館は対応がいいわ。 好きな会社なので、ここを敵視しなきゃいけないと辛いところだったから助かった。 調べたら、デビューするにはいくつか方法があって、まず持ち込みでデビュー。これは今回潰れた。 次は小説大賞などでデビュー。これはバベルや紫苑やアルカでは専門的すぎて無理。 残るはネット。ネットで公開して人気が出れば出版社から声がかかる。これも確かによくあるパターンだ。 サイトに載ってるものをそのまま本にしただけのやつが結構出てる。 ただこれは問題があって、この系統のやつはポップなやつが多い。要するに低俗なサブカルチックなのが多い。 オタリーマンは編集とコネがあったので多少事情が違うが、方向性としてはああいうサブカルチックなのじゃないとネットで人気を博すとまではいかない。 ウチは人工言語と言語学でやってる。もともとのパイが小さすぎる。これらの業界では人気が出るかもしれないが、分母が小さすぎるので版元が俺に声をかけてくるほどのことは起きないだろう。 まぁやっぱ世の中を変えるしかないわな。 電子書籍が普及し、一部の作家が個人で出版し、版元を通さなくなる。 それに混じってアマが個人で出す。一見、プロの作ったものと区別がつかない。 プロとアマの垣根を作っているのは版元の権威だが、これが失墜すればプロとアマの垣根はぼんやりとする。 境界が不明瞭になった時点で、俺にチャンスがあるわけだ。 その時代を10年以上待つとして、その間は私費を投じるなどしてやるしかないなぁ。