人工言語の辞書と参考にする辞書
辞書を執筆するときに参考にする辞書は、できるだけ多いほうがいい。
まず言語について。アプリオリ言語ならなおさら影響を排除するために多くの言語を参照したほうが良い。
といっても十言語も参照するというのは現実的ではない。dkの場合、英語、フランス語、日本語をメインに参考にしている。そこに中国語や韓国語やドイツ語などを加える程度である。
私は言語学専攻だったわりに、外国語は英中などの就職に結びつく言語に専念してきたため、情けないことに辞書を読むレベルとしてはせいぜいこれくらいしか読めない。
参考にするのは主に語義である。語義をひとつずつ読み、それが自分の言語にあるかどうか考察する。
アプリオリなので語義をそのまま拝借するのではない。その語義に相当するものがあるかどうか確認するためのネタ帳として使う。
アポステリオリの場合はそのまま拝借して良い。
もし英語だけしか使わないと、語義のネタ帳としては不十分である。
フランス語のvenirには「~したところ」という近接過去の意味があるが、英語のcomeにはない。
英英しか見ないと、この語義が自言語にあるかどうかチェックしそびれてしまう。
そういう意味で、英仏日など複数の言語を参考にしたほうが安全である。
次に規模について。
辞典の規模は大中小と色々ある。
ここでいう中というのはジーニアスや明解くらいのものを想定している。
大というのはジーニアス大辞典や広辞苑くらいのものを想定している。
ここではOEDや日本語大辞典は極大と呼んでおくことにする。
dkが参照しているのはOEDのほかに、『日本国語大辞典』と『大漢和辞典』がある。
アルカは表意幻字があるので、大漢和辞典は文字関係の用途で使用している。
とはいえ、漢和については学研の『新漢和大字典』を主に参照にしている。
私は字の成り立ちを調べるために漢和辞典を使っているわけだが、字の成り立ちの説明はこの辞書が丁寧だからである。
例えば「覇」という字ひとつとっても、大漢和辞典よりむしろこちらのほうが解字を丁寧に説明してある。
辞書の規模について述べたが、このうち参考にすべきは中~極大で、メインには大を使うのが良い。
執筆するという観点で見ると、大は小を兼ねる。中辞典に載っているものは新語を除いてたいてい大辞典に載っているが、その逆はない。
極大はたいてい語義が詳しいというより例文や出典が詳しい。大になれば人工言語の辞書を書くのに必要な語義は出揃っている。
従ってわざわざ毎回極大にあたる必要はない。しかし中では語義が列挙されておらず、不十分である。そういうわけで、大がちょうど良い。
また、辞書の種類も色々ある。
dkは一言語辞典なので、ジーニアスなどの二言語辞典は参照できない。
英英や国語辞典のような一言語辞典を使う。
一言語だとラーナーズとネイティブ用があるが、ラーナーズは数冊あると良い。dkでは主に2冊用いている。
ラーナーズは案外馬鹿にできない。向こうのネイティブが使うペーパーバックの辞書より語義や例文が詳しかったりするので、執筆するときの参考になる。
ネイティブ用は幼児用や学生用があるが、日本人だとラーナーズが既に家にあるという人のほうが多いだろうから、執筆という点で考えると語彙の制限のない一般用が良い。
まとめると、ネイティブ用の大辞典をメインにし、それ以外をサブとして使うのが良い。
次に語義欄以外について。例えばまず語源について。
私は語源も参考にする。語源を見ると語義の変遷が分かる。アルカにも語義の変遷があるので、参考になる。
語源を調べるときは別途研究社の『英語語源辞典』などを利用している。
語源辞典のような「分野ごとの専門の辞書」もあると助かる。
私の場合、百科欄の参考にするために『日・中・英言語文化事典』や『しぐさの英語表現辞典』などを用いている。
また、百科欄では百科事典を参照すると良い。
電子辞書によく内蔵されている『ブリタニカ国際大百科事典』は大百科というには小さく、情報量が少ない。
電子版の英語ブリタニカも参考にしているが、これも規模がそこまで大きくない。正直百科事典には少々困っていた。
ところが今はyahooで日本大百科全書がタダで見られるようになったので、百科事典はこれを参照するのがいいだろう。
ウィキペディアは便利だし個人的にはよく見ているが、執筆という点では信憑性のリスクがあることを述べておかねばならない。
最後に、アルカが具体的にどの辞書を使っているかだが、一応ファンタジーの言語という雰囲気をあまり壊したくないという気持ちがあるので、明言は避けておく。
ただ、ここで述べたものは使っているので、おのずと分かることと思う。
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