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dkの問題点

dkには問題点が大きく分けて2つあり、方針の転向に伴いお休みすることになった。

こういう作業は軌道に乗せるまでが大変で、一度乗ったら後は単純作業なので楽になる。
基本は翻訳なので、0から作った幻日より気楽だ。(ただし手間はdkのほうが遥かにかかる)
面倒くさい部分だけ既に終えているので、実作業をした人間としては非常に損をした気分だ。

1:規範主義の弊害

アルカのような人工言語には規範主義と実践主義(プラグマティズム)がある。
規範主義は言語を作成し、辞書という形で統括し、辞書の持つオーソリティを背景に言語を管理する。
プラグマティズムは言語の運用を重視し、用例や文献の持つ実効性を背景に言語を管理する。
これらは両極端に位地し、同時に選択することはできない。どの割合でどちらに傾けるかを決める。

5:5という中途半端な位置に置くことはかえって後の作業効率を悪化する。
二兎追うものは一兎も得ずで、そういうどっちつかずな態度はやがて混乱の種になる。
かといって10:0などに振ることもできない。例えばプラグマティズムだけに傾いた場合、辞書は一冊もいらないことになってしまう。
現実的には7:3などに傾けることになる。

新生はこの岐路に立たされ、後者を選ぶこととなった。
dkはユーザーから大変不評で、この不評がプラグマティズムへ駆り立てることとなった。
(なお、セレンはこれまで作者の立場から規範主義を通してきた)

実際には、いちいち喋りながら辞書を引かないし、後から引くこともない。
語法は制時代の語法書を既習しており、語義も体で覚えている。
自然言語に近い言語なのだから用例に基づくべきで、用例で学習すべきだとのこと。

日本人は国語辞典で言語を覚えないし、英語を習うときも辞書で勉強しない。
受験生はするかもしれないが、それは勉強であって、それでは使えるようにならない。
日本人の悪い癖だそうだ。耳が痛い。

dkは規範主義の象徴で、ユーザーにはアレルギーがあるようだ。
dkで規範付けられるより、用例の中で使っていきたいということのようだ。
そのほうが言語らしくなるとのこと。

また、dkを細かく作りすぎると覚えるのが大変で、それを忌避したのもあるようだ。
細かすぎると幻想的でなくなるので、さじ加減が大切だというのもあるようだ。
セレンのやり方では息の使い方や手の振り方まで細かく指定する。当然それに慣れていない人はストレスがたまる。
ある程度ファジーだと誰にとってもストレスがない。そういう意味で幻想以外の面でもファジーさは大切だそうだ。
人付き合いに似ていると思った。あれしろこれしろと細かく規定すると嫌がられる。

2:死にデータの膨大さ

これは作業をしたセレンが個人的に思って補足したものだが、ほかの人工言語作者にとってはこちらのほうが重要なはずだ。
dkには必要のない死にデータがかなりあり、これは作業中に気づいていながら黙殺してきたものだ。
dkの記事を見てみよう。

●名詞「男性」の例

vik
[nif] 1
[caf] vIk
[hacma] viku
1 [asa] pit e him le til envi len dans min. << vikhim
<l viku.f 18.s
leim, vik et kanvi kont min et naav on ern e yuuma.
2 [ayua] e vik. vikte. et vik.
<
3 [asa] mav e vikhim e lan. ail, kav malt.
<hem
im fis, xe vik le si lab fosat yu nain ka felzel mel e seelarna man toet lukan kon esn.
4 [asa][pul] altian
"tyu xir vik sa total lana em maas"
<kelt
5 [asa][eld] >> vikasa
<xik
[on]
+ lutta, diize, lanko, frexxe, frexxel, pikol, vikhim
- min
[rap]
vik vien, vik kai, vik sor
[yol]
el yol sen tu vet lana apia en lan hot tet kum tan.
tu de xille xel el apia fi lex vik xalt fel tet alt.
[antis]
\kum
ko pit e him, kitto e min. el jap sen fi lex vik xalt arme/tanthim/pothim/alan/kaxu/nakl/eelit. el jins sen fi et vik az se sof var sain tanthim kaen zamo luut. vals vilot yol tu kos lana nanal et alnana az. see xalt valnfel, pothim tan et volx ova himgek lad mixi.
leim, naklet rist himgakt pot main e lan. tal im malt, vik til miyu himgakt di mil rist vist e naklet. see tu fit soa mesa a lanko sein. himgek em raz. himzon em fil/jax. himini em nok. xiv em hait. vime em kanvi. main em sor.
\alan
im galveeyu, ern e yuuma sit tuns ento luus taf xaf kulala vol tafl kum, sak vank wen. min alxa livl yuli ento luus leev vil ra. hayu vik sein yuit ke kulala. son min arat ralab kont vik yuit kulala.
xi galveeyu, diiva at sod sov voe ento ern e yuuma vas fal xok lana kulala/notus wen. min til vir vein nod vik ento luus emat lusian, kont vik emat frein. min tan at vasan im feme sid.
xi ardia, xalt e vik at sor man min sit art. hayu vas emat lab e vik. vik tilat lang di nod min var nadia/artil. tal im velei, minlangakn at nok ento vik tifl lang se rom. min labat miyu ka loit, em kag ento en xir miyu vik. see tu dilat mals, fitat yuli kalo al alan.
xi mirokizm, vik en spatat yu miyu a min tet velxat yu.

例えば僕の隣の席の人がこれを読んだとする。
その場合、彼にとって必要な部分はこれだけになる。

●名詞「男性」の例

vik
[nif] 1
[caf] vIk
[hacma] viku
5 [asa][eld] >> vikasa
[on]
+ lutta, diize, lanko, frexxe, frexxel, pikol, vikhim
- min
[yol]
el yol sen tu vet lana apia en lan hot tet kum tan.
tu de xille xel el apia fi lex vik xalt fel tet alt.
[antis]
\alan
im galveeyu, ern e yuuma sit tuns ento luus taf xaf kulala vol tafl kum, sak vank wen. min alxa livl yuli ento luus leev vil ra. hayu vik sein yuit ke kulala. son min arat ralab kont vik yuit kulala.
xi galveeyu, diiva at sod sov voe ento ern e yuuma vas fal xok lana kulala/notus wen. min til vir vein nod vik ento luus emat lusian, kont vik emat frein. min tan at vasan im feme sid.
xi ardia, xalt e vik at sor man min sit art. hayu vas emat lab e vik. vik tilat lang di nod min var nadia/artil. tal im velei, minlangakn at nok ento vik tifl lang se rom. min labat miyu ka loit, em kag ento en xir miyu vik. see tu dilat mals, fitat yuli kalo al alan.
xi mirokizm, vik en spatat yu miyu a min tet velxat yu.

1~4義は日本語と同じなので彼には不要。5義はいる。
類義語はいる。
語法はいる。
文化は生物学的な説明が不要。


なんと記事の過半数が不要になるのだ。
では過半数は何のためにあるのか。
それは「アルバザードにはこういう辞書がありますよ」という体裁を繕うためにすぎない。

dkは架空の辞典なのだから、実際に使うのは日本人などになる。
男が精巣があり髭が生え云々という知識を読者はdkに求めない。というかそもそも人工言語に求めない。
読者が読みたいのはアルバザードにおける男性の扱いなどであって、余計な情報は読みづらくて邪魔ですらある。
道理でユーザーに毛嫌いされたわけである。ようやく合点がいった。

dkは過半数が体裁を繕うための「死にデータ」なのだ。言い換えれば作者の自己満足。
しかし「異世界にはこんなのがありますよ」という体裁を作るのであれば、dkのほかに百科事典もなければならないことになる。
キリがない。それを認めると今度は歴史書だ神話だとなり、いつまでたってもファンタジーパートに取り掛かれない。
設定がリアルなのはいいが、限界がないのでどこかでゴールを区切らないと、現実的には意味がない。
というか、さすがにン十年もかけて死にデータをこさえるのは流石に馬鹿馬鹿しい。それならほかにやることがあるだろう。


ところで生きデータについてだが、よく見るとこれって幻日とほぼ同じなのだ。
語法があって文化があって。地球と同じ部分や読者が知っている部分はわざわざ書かない。
必要な記述だけあって合理的。だったら幻日をテコ入れしたほうがいい。
仮に一言語辞典がないと言語といえないという理屈があるなら、幻日を翻訳してもよい。死にデータがない分、効率的だ。

それに、dkは広辞苑くらいの大きさなので、それをセレンの在命中に作るのは無理だ。
「アルバザードにある辞典ですよ」という体裁そのものが最初からまっとうできない。
どうもdk企画自体に無理があったようだ。
が、軌道に乗って実作業をしなければ、企画の綻びにも気づかなかったはずだ。そういう意味では無駄にならなかった。

一時期セレンは一言語辞典を強く勧めたが、企画の綻びを見てからというもの、すっかりお勧めできなくなってしまった。
自分を使った人体実験で、それなりに体も辛かった。ほかの作者に同じ失敗はしてほしくない。
でも、個人的にはdk様式は凄いと思う。あと数十人自分と同じ程度の作業力のある人がいれば、綻びも消えるかもしれない。

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