人工言語屋の仕事
・3種の仕事
人工言語屋の仕事は3種類に分かれる。
1つは言語の創り込み。1つは言語を使った作品の創造。1つは言語の普及。
これらは上に挙げた順序で重要である。
人工言語屋に与えられた作業可能な時間は有限である。どう労力を割り当てるかが課題である。
割り当ては作者の考え方や言語の種類によって異なる。
一般に国際補助語にとって言語の普及は重要課題であるが、架空言語にとってはそうでない。
架空言語も普及を目指すものとそうでないものがあるだろう。その比重は言語による。
例えばアルカは他の架空言語に比べ、普及に割く意欲が極めて低い。
しかしそんなアルカもサイトの英語化をしている。
ただこれは普及が目的ではなく、現在の事実上の国際語である英語にすることで、歴史に遺る確率を高めるためである。
・アルカにおける労力の割り当て
アルカは言語の創り込みを特長としている。よって創り込みに割り当てる割合が最も多い。
当会は、「人工言語屋本人はただひたすら言語の創り込みに時間を割くのが理想的である」と考えている。
しかし協力者や理解者の獲得のためには、作品の創造や言語の普及をせねばならない。
本来これらは無駄な作業である。作品はユーザーが作るのが理想的である。だがそう簡単に客は付いてくれない。
そこで最初の頃は作者自身が作品を作り、普及活動をし、ユーザーを集めねばならない。
最初の作品は小説や絵や漫画などのコンテンツである。
作者自身が多芸で、これらをこなせなければならない。
この作品を元手にユーザーを確保する。
そして絵描きなどの才能を持ったユーザーにコンテンツを作ってもらう。これが理想的である。
アルカの場合、まさに上記の計画通り事が運んだ。
しかしそれには5年以上の歳月を費やした。協力者の獲得は容易ではない。
作者がすべき創作はせいぜい小説を書く程度であるべきと考える。
それ以上の手の込んだコンテンツはユーザーに任せるべきである。
そういう人間が出てこないのであれば、外注するか自分でやるか作業を簡単にしてくれるソフトを導入するなどして対処する。
あくまで作者は限りある労力を言語の創り込みに費やすべきである。
・ザメンホフとイェフダー
ザメンホフは言語の創り込みに労力をあまりかけず、普及活動に注力していた。
上記の価値観でいうと、彼は生粋の人工言語屋ではない。たとえ彼が業界内で最も有名だったとしてもである。
むしろ知名度の低いイェフダーこそ、生粋の人工言語屋である。
・人工言語屋の本分は
人工言語屋の本分は言語を創り込むことである。
翻訳は同じものを二倍以上の労力をかけてduplicateするだけのことであり、生産的でない。
言語の普及もまた同様に必要以上にすべきことではない。
同じ価値観を持った少数の人間と付きあえばよい。
無駄に広めればむしろ純粋性が失われてしまうリスクすらある。
人工言語屋の本分は言語を創り込むことである。
見習うべきはザメンホフではない。イェフダーである。
どちらも架空言語に属さないが、両者には明らかな違いがある。
人工言語屋の本分は、自分たちの言語を創り込むことである。
ゆめゆめそのことを忘れて脇道にそれてはならない。
稼働力は限られている。時間がないか金がないか体力がないか。それらすべてが揃うことなどまずない。それに、たとえ全て揃ったとしても時は有限である。
自分が生涯打てるキーボードの回数は有限である。少しでも多くの自言語のコーパスを編まねばならない。
言語など5~10年もあれば骨子は創り込める。
あと残った作業はひたすら辞書やコーパスを作ることである。
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