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複合語中で左の形態素は格と品詞情報を失う

単語レベルではアルカは格と品詞情報に詳しい。
同じコト語setが目的語に来たとき、その形は実に多彩だ。

set:受動名詞(殺されたもの)
setol:対格動形名詞(殺されるもの)ないし殺されるような
setan:主格動形名詞(殺すもの)ないし殺すような
setels:普通動名詞(殺すこと)
setont:自発動名詞(天災などが人を殺すこと)
setast:再帰動名詞(自殺)

このように、品詞情報や格情報が細かい。
この性質は複合語でも当然言える。
だが、複合語の格と品詞情報は一番右に来ている形態素によって決まる。
左の形態素は情報を失う。

例えばvassais(塹壕)。モノ語である。名詞である。
saisが名詞なので、vassaisも名詞である。vasは情報を失っている。

vasは「戦う」という意味の動詞だが、動詞の位置に来なければ受動名詞「戦われた相手」という意味になる。
となるとvassaisは「戦われた相手の溝」になり、塹壕にはならない。

「戦いの溝」としたければ、vasを動名詞にしてvaselssaisにしなければならない。
だが、冗長だ。

複合語全体としてはひとつの単語なので、単純語同様、細やかな格品詞情報が必要だ。
だが、複合語の内部となれば話は別だ。必要なのは右側の形態素の格品詞情報だけだ。
左がどうなろうと、右が複合語全体の情報を決める。言い換えれば左の情報はどうせ使用されずに捨てられる。

となれば語形が短いほうがいい。
複合語の場合、形態素の持つ概念の中からその形態素の格品詞情報を想像する。
例えばvassaisのvasはel vas el kon saisという文におけるvasのことなのだろうなと考える。
同じくvaskaのvasはel vas el ka kaという文におけるvasのことなのだろうなと考える。

vasの格品詞情報がどうであれ、単語全体の情報を決めるのはsaisやkaである。
従って、左に来る形態素は情報を失ってよい。むしろそのほうが単語が短くなって効率的である。

形態素同士を掛け合わせるときは概念同士を掛け合わせ、意味の通る組み合わせを想像する。
ここには人間の認知や常識を利用する。

だが複合語全体の格品詞情報は単純語と同じく細やかに管理する。
そしてその情報を決定するのは一番右側の形態素である。

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