dolmiyu
[魔法]
ヴィード論、ドルミーユ、魔法学、魔法理論(正確には魔法だけでなく霊力なども含むが、魔法で代表される)
[類義語]
arvina
[アクセント]
dolmIyu
[レベル]
3
20:doluuya/miir(館の理論)館の字doluuyaが三角錐で、ヴィードを構成するユノ・ヴィル・ノア・アルマがアルマを頂点とする三角錐をモデルとすることから。irの音がyuに聞こえて変化したもの。アクセントはmiにある。
[文化]
→galet, yuno, artfrim, diiyu, seles, naayu, knoosenviほか多数
<魔法学と科学>
ヴィードに関する学問をdolmiyu(ヴィード論、広義の魔法学)とし、それ以外(alved)に関するものをkamiとする。この分類はkkでアルシアが始めた。
dolmiyuとkamiは互いに独立しつつも関連しあって発達した。両者はtmの時代に萌芽があるが、どちらも経験的知識にすぎなかった。
上代では磁石や静電気が知られ、琥珀が薄い紙を吸い寄せる現象などが認知されていたが、経験的知識にすぎなかった。
kkではenvelenができ、kk後期ではアルシアが魔法の分類を行う。
中世になると魔法工学や錬金術といった分野が登場する。錬金術は医学の発展を、魔法工学は工学の発展を促した。
近世になるとほとんどの人がviidを使えなくなり、魔法学は衰退し、科学が独走する。魔法を研究してもそれを再現できないのであれば役に立たないため、研究費が割かれなくなった。
革命後はミロクが召喚省下に魔法研究所を置いたため、多少持ち直した。rdでリディアが書いた魔法学の集大成artklelに研究所が出した成果を加えて再編集した。しかし税金の無駄遣いと非難されることもあった。一方科学はこの間も幅を利かせていく。
ljになるとクリスタルにより人自体がヴィードを失ってもその力を利用できる時代となった。この結果魔法学は再発見され、現代科学と融合して実用されていった。
<魔法学史概説>
・フィアル
flでは既にヴィードが存在したが、言語自体が存在しなかった。
・アルテム
tmで初めて言語(f)ができると、エルトとサールはviid, yuno, vir, noa, armaを命名した。
体内の閉晄を体外に出すことでヴィードが光を発するため、彼らはそれを意識することができ、命名につながった。
ユノやヴィルといった種類を細かく命名できたのは光の色が違い、主観的に識別できるためである。
・ヴァステ~ラヴァス
vsで神と悪魔が戦うと、ヴィードに軍事的な利用価値が生まれるが、言語的な概念が細分化されるには至らなかった。
むろん神々は経験的にhanonとしてのyunoなどの存在を知ってはいたものの、それらを細分化して命名する必要性を感じておらず、ユノで攻撃する力というような句で表現していた。
この傾向は戦間期のsrはもとより、cvまで続く。
・アズゲル
zgになると人類の時代だが、人類は神に比べてヴィードが弱いため、少ないヴィードをどう効率的に活かせばよいかと考えた。
その結果、魔法学が芽生えることとなる。芽生えたのはシージアにおいてである。後に伝統の国ルティアになるシージアだが、zgにおいては最も栄えた国際都市であり、他民族・多言語・多文化・多変化という激動の坩堝にあった。
シージアで芽生えた魔法学は理論よりも実践重視で、魔法学というよりは実践論であった。
ほとんどが魔法を強化するための呪文の考案と実践で、いかに効率よく魔法を使うかが主眼であった。
それゆえ少ない魔力で大きな効果が出ると経験的に知られていた呪文が注目された。
結果、どうすれば効率よく魔法が撃てるかという呪文学が起こり、魔法学の源流となった。
また、呪文以外に宝石などが魔法を強化することも知られていたため、etanを利用して魔法を強めるための学問も生まれた。これを魔石学という。
魔石学は後の錬金術につながる。また、鉱物だけでなく植物も使うことがあったため、lukletia(漢方医学)の発展にも寄与した。
実際zg後期の魔石学者は同時に医師でもあった。後に魔石学は錬金術や漢方に本格的に分化していく。
なお、ユノやノアについては出して打つなど仕組みが単純で扱いが簡単なこともあって、研究の中心は魔法にあった。
・メルテナ
mtでは召喚士が力を持ったことで召喚学が台頭し、その結果相対的に呪文学は後退する。
しかし召喚学は結局のところ少ないvirで神を呼ぶための技術であるため、本質的には呪文学や魔石学と変わらない。従って、呪文学者や魔石学者が場合に応じて召喚学者を自称した。
しかし召喚にはサリュなど、呼びやすい空間といった従来の魔法にはない概念があるため、魔法学全体としてはここで「儀式性」や「契約」といった要素が新たに加わることになった。
・呪文学
呪文は魔法の効果を高めると考えられ、効果をより高めるための呪文が開発された。
開発といっても経験に基づくもので、このように読んだら効果が高かったという伝承が形式化したものである。
呪文の効果についてはsm以降明らかになる。(後述)
なお召喚学は呪文学をベースに儀式性などを加味したものである。
・カコ(アルシア以前)
kkで召喚が廃れて魔法の時代が返り咲くと、呪文でも魔石でも儀式でもない新たな視点に目が向けられるようになった。人類はますます弱くなったので、virの強化は望めず、呪文や魔石によるブーストも頭打ちであった。
そこでより無駄なくviidを使う方法が求められ、ヴィードはそもそも何なのか、どうしてユノなどの力が作れるのかといった問題と向き合うこととなった。原理を知ることで効率よく使おうとしたのだ。
研究はルティアから始まった。これが狭義の魔法学の始まりである。(広義の魔法学はdolmiyu)
今まで大雑把だったyunoなどを用途ごとにhanon、milxeなどと分類した。そしてenvelenが生まれる。→envelenを参照しておくこと
・カコ(アルシア以降)
kk後期になるとアルシアの11魔将(ユシフェール)により魔法の分類が行われた。それまで漠然と火の魔法などと認識されていたものが11種に分類された。
また、アルシアは魔法だけでなくユノなどの研究にも努めた。この意味で魔法学はヴィード学ともいえる。両者はしばしば混同されながらrdのartklelやljの再編集版artklelに至る。
・虚質量
アルシアは大きな秤の上に乗って自重を保ったままユノを放つという実験をした。ユノは斜め下に落下しながら当たった先の瓶を破壊した。ということはユノには何らかの重さがあったはずである。しかしユノを放っても天秤がつりあったままなのはなぜか。
この現象は経験的に人類も神も知っていたことであったが、学問的に実験されたのはこれが初めてであった。
ここからアルシアはユノはhanonとして放たれた際に質量を持つようになるのではないかと考え、虚質量の存在を予言した。また、彼らはこれはvir,noaなどにもいえるだろうと考えた。
・魔法学と科学
アルシアはヴィードは虚質量を持ち、磁石に反応せず、気圧、温度、湿度、電気にも反応しないことから、ヴィードとヴィード以外のものを分けて考えるべきと考えた。
万物をxalulとし、viidとalvedに分け、これらを対象とする学問を順にdolmiyuとkamiに分けた。
・セルメル
smになると戦間期となったことで事情が変わる。kkでは主に武器や防具となる金属が優先的に採掘されたが、戦間期になると建材や手工業用途の金属の需要が増した。
その結果、それまでに発見されていなかった金属や、発見されていても注目されていなかった金属が注目を浴びるようになった。
さらに戦争の終結は広範囲の貿易を可能にし、魔導師に多種多様な鉱物や生薬の入手を可能にさせた。
このことは魔石学の発展に大いに貢献するとともに、錬金術への足がかりともなった。
そして魔法学の発展はヴィードの仕組みを理解するのに大きく役立つこととなる。
なお、smでは魔法学の研究の中心はアルバ一世が建てたルシフェル校に移る。
以降、主にsmとrdにおける魔法学の発達について述べる。
・密度
金は古くからヴィルを蓄える性質があることが知られていた。この場合、アテンの体内と同じく質量を持たないという性質がある。
1立方faineluaの金にヴィルのうちの閉式赫晄を当て続けると、ある時点で赤い光を放つ。これは金が蓄えられる閉式の量を超えたため、漏れた閉式が虚質量を持ってから開式になったたためと考えられる。
一方、金と銀を混ぜた合金(ホワイトゴールドの一種)で同じ体積の塊を作って閉式を浴びせる。この合金もヴィルを蓄えられるので閉式赫晄も蓄えられるが、金よりも早く光が漏れる。なぜ体積が同じなのに時間が異なるのかが謎であった。
両金属の重さを等しくしても、やはり合金のほうが早く漏れる。このことから金の中ではvirを圧縮して詰めることができるのではないかと考えられた。
ユノを靄のように出すかそれを凝縮して弾のようにするかで密度が変わる。このことからユノには密度があることが古くから経験的に知られていたが、virもそうなのではないかと考えた。すなわち金は高密度でvirを蓄えられ、ホワイトゴールドはそうではないということである。
・霊圧
ユノの球を投げると自然と消えていくのは虚質量によるものだとしても、徐々に球の直径が大きくなることは謎であった。
しかしユノに密度があるなら理解できる。体の中のユノを無理に圧縮して球を作っているので、裏を返せば自然な状態でのユノの密度はそう大きくないことになる。
そして高密度のユノは元の自然な密度に戻ることが観測される。そこから霊圧という概念が生まれた。つまりユノには圧力があり、それと同時に平衡する性質も持っているということになる。
これは経験的に古くから知られていたが、smで初めて理論化された。
・魔圧とdien
ユノに圧力があるなら同じヴィードのヴィルにも魔圧があるのではないかと考えられ、これが先の合金と金のヴィルを蓄える量の違いから実験的に示された。
そこで銀の比率を変えていった結果、どの比率でも合金のほうが低圧になることがわかったが、金と銀が750:250の比率のときに最も圧力が低くなることがわかった。
virを蓄えるものは少ないが、ほかのあらゆる金属で試してもこの合金より圧が低くなることはなかったため、どうやらこの合金は自然状態の魔圧(=最低魔圧)のままvirを蓄えるのではないかと推測された。(後にこれが最低でないことがわかり、ホワイトゴールドの魔圧は魔圧の基準値として使われるようになる)
そして1立方faineluaのこの合金が蓄えるvirの量を合金の名dionaから取ってdienとした。
・ヴィード粒
ヴィードは何からできているかという考えに対しては、ヴィード粒(viidliil)の存在が仮定された。
ユノにはユノ粒という具合に、都合4種類想定された。
・レニウム
zgでレニウムが発見された。
地球より遥かに発見が早かった理由は、レニウムがヴィードを通さないという性質を持っていた点にある。
・ディスティマ
無色透明のサファイアにユノを集めると常態では不可能な量のユノ(後に重合度が大きいユノのことだと分かる)が得られる。
この際、サファイアが青い光を放つ。このときレニウム板をサファイアに当てても光は消えないため、ヴィード粒は光点にはないと判断できる。
一方、光点からやや離れた位置にレニウム板を当てると急に宝石内の光が消える。この点を調べた結果、光が消える点はサファイアの周囲に4箇所あると分かった。
そしてそれらを線で結ぶと正四面体になることが分かり、サファイアを包むように目に見えないピラミッドが存在していることが明らかになった。
ユノの重合度を減らすと消えた光が戻る。レニウム板の位置を変えると再び光が消える箇所が見つかる。
その位置は正四面体の頂点より内側であり、このことからユノの重合度と正四面体の体積が比例していることが分かった。
ユノの青い光はサファイアではなくその周りの不可視の4点が作る正四面体が形成していることが分かり、各頂点にあるものがヴィード粒ではないかと推測された。つまりこの場合、頂点に1つずつ合計4つのユノ粒があると考えられた。
そしてこのピラミッドはdistimaと名付けられた。
・ガレット
同じくジルコンはノアの重合度を高める性質があり、ジルコンでもサファイアと同じことができる。ただし当然光は緑となる。
ジルコンピラミッドのdistimaを2つ作り、それぞれA,Bとする。Aの頂点をひとつ選んでXとし、Bの頂点を重ねる。
するとBの4つの頂点のうちある一点を重ねると、A,Bともに光が消失する。その消失する頂点をαとする。
Aの頂点をXからYに変更し、再びαを重ねると、今度は光が消失しなくなる。そしてBの別の頂点βを重ねると消失するようになる。
実験の結果、消失点は4頂点すべてであり、AとBの頂点の組み合わせ次第でどの頂点も消失点となりうることが分かった。
このことから正四面体の頂点を形成するノア粒は均質な物ではなく、4種類の別々のものであると結論付けられた。その4つの粒は次のように名付けられた。
1:faalet(陽晄):略称はfか1。
2:xeliet(月晄):略称はxか2。
3:vialet(雄晄):略称はvか3。
4:minlet(雌晄):略称はmか4。
これらは総称してgalet(晄基)と呼ばれた。
こうしてヴィード粒、少なくともノア粒はgaletから成るということが明らかになり、ノア粒ひいてはヴィード粒という存在は否定された。
この時点ではノアピラミッドの4つの頂点にそれぞれgaletが1つずつ配置されていると考えられていた。
また1と2、あるいは3と4を組み合わせると光が消えると考えられた(後にこの数字の組み合わせは見直されることとなる)。
・各頂点のガレット数
サファイアピラミッドを2つ用いた場合、どの頂点を組み合わせても青い光は消えなかった。
また、ムーンストーンはヴィルを重合できるが、ムーンストーンピラミッドの場合でも赤い光が消える頂点の組み合わせは見つからなかった。
このことからヴィードを構成するgaletは1つの頂点に少なくとも1つより多く存在することが明らかとなった。
例えばノアピラミッドの4つの頂点が順に1234というガレットからできているとしよう。この場合、ピラミッドAの頂点1にピラミッドBの頂点2を重ねると緑の光は消失する。(この時点では1の透過値は3でなく2)
次にユノピラミッドの頂点を同じく4321としよう。この際、ピラミッドAの4とピラミッドBの3を重ねれば青い光は消えるはずである。
しかし実際にはそうならない。ということは、頂点には1つずつガレットがあるのではなく、複数個ずつあると考えられる。
例えばユノが頂点1つあたり4つのガレットを持っていた場合どうなるか。
1頂点が1234という4ガレットでできており、それが4頂点分存在する。例えば
1234
1234
1234
1234
のように16ガレットでユノは構成されることになる。
一方、ノアは
1111
2222
3333
4444
のように構成されていたとしたらどうだろうか。なぜノアだけ消失が起こるのかが説明できる。
1しかない頂点に2しかない頂点を合わせたから光の消失が起きたと考えることができるためである。(再三繰り返すが、この時点での1の透過値は2)
・各頂点の入れ子構造
ところでこのときの問題は4行何列になるかということであったが、当時最も有力だったのはこの4列説であった。
なぜこの時点で魔法学者たちは4行4列を予想していたのだろうか。なぜ4行2列や3列でなかったのだろうか。無論2列などの意見も学者内にはあったが、主流となったのが4列であった。なぜか。
頂点が複数のガレットからできていると分かった時点で、各頂点を構成しているガレットがそれぞれ三次元的な内部構造を持っていることが分かった。
このとき、最小の多面体は四面体であることから、ガレットもまた4つで1組となって四面体を形成するのが幾何的に最もミニマルかつ合理的な構成方法である。
ゆえに魔法学者はピラミッドの頂点が描く四面体の各頂点がまた四面体を描くという入れ子構造を想定した。
・トポロジー
また、これに関してはalで魔法研究所が成果を挙げている。
位相幾何学的に見て四面体はトポロジーをほかに持たない。一般に多面体のトポロジーは安定しないが、四面体は常に1つしか存在しない。つまりあらゆる四面体は正四面体と同相である。
もし同相でないものが存在したらどうなるか。晄基の配列は同じ1234,1234,1234,1234なのに、ある相と別の相を区別しなければならない。例えば1234,1234,1234,1234αと1234,1234,1234,1234βのように。
しかしある魔法は特定の晄基配列でできていることがalには既にわかっており、もし異なる相が存在すれば、同じ魔法の配列なのに1234,1234,1234,1234αと1234,1234,1234,1234βは別のものということが起こり、αでは発動するがβでは発動しないということが起こりえる。
だが四面体なら同相がほかにないため、どのような四面体を描こうが、どの辺をどう伸ばそうが、それが四面体であるかぎり配列は常に一定の意味を持つ(例えば1111,2222,3333,4444なら常にノアの一種という具合に)。
このためヴィードにおいては4行4列で四面体を描くのが最も合理的であるということが分かる。これは現代魔法学の数少ない成果のひとつである。
・帯晄現象
ノアピラミッドの頂点から1を持つ頂点を探す(見つからなくても4回やればよい)。
バナジウム板を頂点に当ててから引き離すと、緑の光が重心の宝石の位置からずれていく。
バナジウム板が新たな頂点となり、重心の位置が板の移動によって変化する。
このことからバナジウム板に1が帯晄するということが分かる。
しかし2,3,4については帯晄現象が見られなかった。
なお、バナジウム板はカルノー石から得られ、分布が広いため、容易に入手できた。
・ガレットの単離
1を帯晄するものがある以上、2,3,4を帯晄するものもあるのではないかという予想の下、様々な鉱物が集められ実験された。
その結果、ニオブ石から得たニオブ板が2を、ニオブ石中に存在していた別の物質(タンタル)の板が3を帯晄した。
しかし4を帯晄する金属(後のドブニウム)はついぞ見つからなかった。それもそのはず、これは超ウラン元素であり、この時代では作ることができない。
そのため4についてはノアを蓄える鋼(銑鉄を脱炭したもの。いわゆるはがね)を飽和させてからバナジウム、ニオブ、タンタルを用いて脱晄して得る。
こうしてgaletの単離に成功した。
なお、このときのバナジウム~タンタルは後に化学において周期表の発見にいくらか貢献することとなる。
・ガレットの番号
galetの番号は当初暫定的なもので、どれが何番であろうとかまわなかった。
実験中にある頂点を1としたらその次が2,3と決まるだけであった。ある頂点が1ならそれに対応する頂点が翠晄の消失点となる。
しかし最初に見つかったバナジウムに反応したgaletを1と固定することで、ニオブのが2、タンタルのが3、残ったドブニウム(ここでは鋼)のが4と固定された。
これによりガレットの番号が固定されたが、これに連動して1の透過値は3となった。同様に2の透過値は4となった。
・幻晄線
それぞれの晄基が蓄えられた板を陽晄板、月晄板、雄晄板、雌晄板と呼ぶ。総称は晄基板である。
ノアピラミッドを作った後、ノアの出力を切ると当然光は消える。
出力を切ると同時にそれぞれの頂点が持つガレットに対応した晄基板を置くと、光が一定時間維持される。
しかし同じ実験で板の配置の組み合わせを変えると光は消えてしまう。
このことからノアを形成する四面体の各頂点には順序があることが分かった。つまりどの頂点も同じではなく、1は1の座る場所があるということである。
4つの各頂点にはスタート地点とゴール地点があり、ノアはスタート地点から見て
2222
1111
4444
3333
のときでないと光らないと分かった。
ノアは四面体からなるが、3回曲がった直線が四面体の各頂点を通過すると考えれば直線なので、スタートとゴールの2端点ができる。
このスタートとゴールを結ぶ線が4行4列のうち4行の並び方を決定する。つまりノアの行は2222,1111,4444,3333で並ぶときに光を放ち、そうでないときは光を放たない。
そしてこの四面体の各頂点を通過する折れた直線を幻晄線という。
幻晄線を仮定することで、それまで四面体という3次元で捉えていたものを、
2222
1111
4444
3333
のような行列という2次元で捉えることができるようになった。
本稿ではテキストデータしか扱えないため、もともと行列で表記してきたが、行列で説明できるようになったのは本来ここからである。
なお、下記seeji中の四面体の各ガレットを結ぶ線は晄基線という。
・指と握
こうしてひとつの四面体が4行4列16ガレットからなるという予想のもと、この16ガレットの行列をwalkili(握)と呼び、1行4ガレットをseeji(指)と呼ぶようになった。
つまり幻晄の各頂点は指から成り、幻晄は握から成る。握がたくさん集まることを重合といい、重合度が増えるほどピラミッドは大きくなり、重心の光も大きくなる。
・アミュレット
金銀鉄青銅の合金(アミュレット)から板を4枚作る。この板をユノピラミッドの任意の頂点に当てると、seejiが板に保存される。
これはユノだけでなくヴィルやノアにもいえることがわかった。
4枚の板をそれぞれの頂点に当ててseejiを保存してから各板の位置を入れ替えると、ノアの場合は光が消失するが、ユノとヴィルでは保たれた。
このことからユノとヴィルの各行は同じ配列であることが分かった。つまりユノのある行が1234だとすると、ほかの行すなわちほかの頂点もみな1234になるということである。
アミュレットは任意のwalkiliから任意のseejiを単離できるものとして重宝された。
ところでアミュレットに蓄えられたseejiはどのようになっているのだろうか。
例えばユノが1234,1234,1234,1234だとすると、そこから1行とって1234がseejiである。
しかしユノピラミッドは重合の結果可視可能な量の光を放つものなので、アミュレットの各頂点には相当な数のユノ指が含まれていることになる。つまり各頂点に
[1234]
nと書くべきものが含まれていることになる。
1つのseeji1234はヴィードと同じく四面体を構成すると予想されていたため、アミュレット中にはガレットからなるおびただしい数の四面体が蓄えられていると考えられる。
アミュレットに陽晄板~雌晄板をそれぞれ接触させ、元のピラミッドの1/4の辺の長さで板をそれぞれの頂点に置く。このとき宝石をノア用のものに変える。
するとユノピラミッドからもともと得られたものにもかかわらず、今度は宝石中に緑の光を示すようになる。しかもその光量はもとのおよそ1/4であった。
このことからseejiが4ガレットからなることが証明された。また、幾何学上の合理性から四面体を持つことが強く推定された。
・虚斥力
陽晄板に1(陽晄)を急激に蓄えると一時的に高晄圧となる。
同様に雄晄板に3(雄晄)をためて高晄圧にする。
そしてこれらを近づけると斥力が生じる。しかし圧力が戻ると斥力は消える。
磁石と違って特定の環境でしか生じないこの斥力を虚斥力(diatatak,ard)と呼んだ。
・偏晄現象
アミュレットを高晄圧状態にし、陽晄板を近づける。
するとアミュレット中の3が逃げるように偏る。これを偏晄現象という。
わかりやすくアミュレットで四面体をつくり、各頂点に高晄圧の各晄基を近づける。
例えば各頂点に1234と順々に板を近づけた場合、アミュレット内のガレットは偏りあった結果、3412となる。
・握化
薄板で作ったアミュレットでユノピラミッドから任意のseejiを得る。
これを高晄圧化し、同じく高晄圧化した各晄基板を近づけると、雄晄板でのみ斥力を生じる。
次に近づける角度を変えてほかの板を試すと、雌晄板で斥力を生じる。同作業で次は陽晄板、最後は月晄板を。
月晄板をかざしたときに全体から斥力が消滅すると同時にアミュレットの薄板から青い光がもれる。なぜこのような現象が起きるのであろうか。
雄晄板を近づけることでアミュレット内のガレットが偏る。無数の四面体の1の部分が雄晄板から逃げるように向く。
これを4回繰り返すと、仮にアミュレット内のseejiの集合が
[1234]
nだとすると、外側から3412を近づけたことでアミュレット内のseejiがみな同じ向きになったと考えられる。
そしてこの結果、アミュレットの重心にseejiが偏る。その高密度を平衡するためにseejiの集合体がwalkiliを再形成した結果、ユノに戻って青い光を放ったと考えられる。
なお、光量は元のユノピラミッドの1/4であった。
・開閉の発見
重要なのは斥力の生じた順序である。最初に月晄板を近づけても無反応なのに、雄晄板を近づけると斥力が起こる。これは4行4列の順に沿っているのではないか。
すなわちユノのseejiが仮に1234だとすると、斥力は3412を近づけた順で発生するということである。
裏を返せばユノは斥力が3412の順で生じたため、もともと1234の順で並んでいたことがわかる。
そしてのユノの各行の配列はいずれも同じであるため、ユノは――少なくとも青い光を放つhanonは――1234,1234,1234,1234であることが分かる。(ただしhanonのseejiが1234だと仮定すればの話)
ちなみに実験の結果、実際のhanonの配列は1243の繰り返しであることが分かった。
これはアテンの体内で安定するので閉式と名付け、閉式蒼晄とした。また、ガレットの配列を晄基配列と名付けた。
今までは光るヴィードからしか調べられなかったが、斥力を利用することで光を出さないヴィードの晄基配列も調べられるようになり、これにより魔法学は格段に進歩した。
・握の内部構造
アミュレットと晄基板と斥力を用いた実験でユノ・ヴィル・ノア・アルマすべての晄基配列が判明した。
ヴィードのうち、ヴィルはもっともバリエーションが多い。
そして16ガレットが作る組み合わせのうち「ユノ・ノア・アルマ・ヴィルの開閉」以外がすべて魔法に使うヴィルであり、これが魔法の難しさとバリエーションの多さの原因であることがわかった。
walkiliは1行あたり1~4を1つずつ持つ。ただしノアはこの限りでない。
このため、1行中の組み合わせは1234や1324など4!=24ある。
これを4行繰り返すので、walkiliの種類は4!^4=331776種存在する。(2種のノアを除外した計算)
ここからユノなど数種を引いても33万種以上あり、このうち一部が魔法として機能する。つまり魔法になりうるヴィルはこれだけあるということである。
・ルビー
ヴィルピラミッドの4頂点に4つのアミュレットを当てて調べることで魔法の晄基配列を調べることができる。
各アミュレット内のseejiについて斥力を利用して調べることができるためである。
ルビーはあらゆるヴィルを保存することができる。また、蓄えたヴィルを放射することもできる(ムーンストーンは重合度の最大値を高めるだけ)
そのヴィルが魔法として成立する配列の場合、ルビーから魔法を放つことができる。
しかしそれは戦闘においては手で撃つのと大差ない上に、ルビー自体が高価なので、これまでは実用されていなかった。だが、魔法学的には非常に有用であった。
・コバルト針
1と3、2と4を組み合わせると平板ガレットができる。
コバルト針は平板ガレットを蓄えると、ある時点で平板ガレットが分かれて2つのゼロガレットができる。
コバルト針は高晄圧で平板ガレットを蓄えるとき、N極を持つ。しかしゼロガレットに変化するとS極に転じる。
この反応を用いて平板ガレットとゼロガレットの存在を確認する。
コバルト針を陽晄板に刺すと、陽晄線が高晄圧で放射される。
この放射線を空の四面体のアミュレットに当てると、1がアミュレットに入る。
アミュレットの4頂点に同時に同じ操作をすると、4頂点にそれぞれガレットが入り、その瞬間アミュレット内でseejiが形成される。
これは人工的に作ったseejiに等しく、1234でも3241でも好きな配列が作れる。
・魔珠
このアミュレットを任意の配列で4つ作り、四面体の頂点にそれぞれ置き、重心にムーンストーンを置く。
ムーンストーンはヴィルを重合する性質がある。このアミュレットの配置はムーンストーンにヴィルをためたのと同じ状態を作る。
その結果、4つのアミュレットの間に幻晄線が生じ、ヴィードが作られる。
ムーンストーンを置く以上、ユノやノアには反応しないため、ヴィルのみ作られる。
赫晄のうち開閉以外のものを魔晄といい、魔法の材料となる。
この手法では人工的に赫晄を重合した状態にできる。
このムーンストーンにルビーを接触させて両者の位置を取り替えると、宝石の周囲にあったアミュレットからルビーにヴィルが取り込まれ、保存される。
これを放射すると魔法が成立している場合、魔法が発生する。
こうして魔法を封じ込められたルビーを魔珠という。くしくも朱という字が入っている。
・光学異性体
ところでルビーに封じ込められた魔法によっては、封じられた瞬間に魔法が発動してルビーが割れてしまう可能性がある。
今までどうして魔法は唱えている間はregalが現れ、放ってから初めて効果が出るのかが謎であった。
ある魔法Aの晄基配列がXだとしよう。この際、唱えているときにXの重合体が形成され、それがレガルを描く。
ではなぜ放って初めて効果が出るのだろうか。もし放っても配列がXのままであったとしたら変化は一切起こらないはずである。にもかかわらずなぜふるまいが発動の前後で変わるのだろうか。
そこでこのような予想を立てた。
Xは発動するとYになる。そしてYになったことで効果が出る。やがてYは開式赫晄に変化して、効果を失う。
だとしたら人工的に作った魔晄がはじめからYの状態だった場合、ルビーどころかムーンストーンで重合した時点で発動し、場合によってはムーンストーンが割れてしまう。
このとき魔晄は相当数重合しているので、人が撃つより遥かに強い力が出てしまう。それが火の魔法ならたちどころに研究所を吹き飛ばしてしまいかねない。
アミュレットの配置で作る魔法は突如Yを重合させるという、自然界では起きえない状況を作るため、配置した瞬間に発動するということがありえる。
そこで魔封石である琥珀を用いてケアの配列を分析した。
そしてケアの配列をアミュレットで再現し、ムーンストーンを置いた。
するとその瞬間、周囲数kmにもわたって結界並みの出力でケアが放たれた。
もしこれが火の魔法だったら大惨事であった。やはりYを突如重合するとその瞬間魔法が発動してしまうという予想は正しかった。
実験は成功したが、ルビーに魔法をこめるにはどうすればよいか。
魔封石はルビーと違い、発動した魔法をためこむ。相手の魔法を封じ、逆に放つことができる。ただし威力が大きすぎると割れてしまい、封じられない。
ユノなりを当てることで魔封石に入っていた魔法が押し出され、出力する。これが魔封石の使い方である。
つまり魔封石はYのまま魔晄を取り込む。
ユノで押し出すと一気に空になってしまうのが欠点である。少しずつは使えない。
一方、ルビーはXのまま魔晄を取り込む。
実験の結果、次のことが分かった。
ケアの配列を鏡像にした配列を作り、ムーンストーンを置いた。そしてムーンストーンのところにルビーを置いて魔珠を作ってからこの魔珠を発動すると、ケアが放たれた。
このことからXとYは光学異性体の関係にあることが分かった。
ルビーは魔封石と違って一気に放たず、しかも高魔圧で取り込める。つまり結界並みの総量の魔法を少しずつ取り出せる。
その上これを利用すればあらゆる魔法を魔珠に封じ込めることができる。
これにより、魔法学の軍事的・政治的・経済的な利益は計り知れないものとなった。
・魔法性
魔法学上の性質のこと。例えばヴィードを通すとか溜めるとかいった性質のこと。
導晄体:ヴィードを通すもの。多くの物質。
良導体:ヴィードをよく通すもの。鉄は特にユノ、銀は特にヴィルを通すなど、物質によって性質が異なる。
半導体:あまり通さないもの。
不導体:通さないもの。レニウム。
蓄晄体:ヴィードを溜めるもの。dionaより溜めるものが良で、それ未満が貧。
良蓄体:よく溜めるもの。
貧蓄体:あまり溜めないもの。
単蓄体:1握のみ溜めるもの。
不蓄体:溜めないもの。上記いずれもヴィードを通すかどうかは別次元の話。
揮発性:蓄えるが放出するもの。銅など。
保存性:蓄えたまま放出しないもの。金など。
放射性:蓄えたものを放出する性質。有無ではなく難易で示される。魔封石>ルビー>金の順で容易。
複写性:ゼロガレットをほかの晄基配列に変化させる性質。後述。
・放晄傾向
蓄晄体同士の間に導晄体を接触させた際のガレットの流れやすさのこと。
例えば金>ルビー。両者の間に銀を入れて接触させると金からルビーへガレットが流れる。
例
アミュレット>ムーンストーン>単蓄体>ルビー>氷晶石
・脱晄
ルビーと氷晶石の間に銀を入れるとガレットがルビーから氷晶石に流れる。
結果、ルビーはガレットを失う。これを脱晄という。金とルビーの間でも成り立つ。
金やルビーは一度脱晄すると空気中からガレットを蓄えないため、空の状態を保つ。
・魔月館
任意のアミュレットを配置し、ムーンストーンを重心に置くと幻晄線が生じ、ムーンストーンを通して単蓄体に1握溜まる。
単蓄体(後で詳説する)を動かし、ルビーに接触させるとルビーに握が移る。単蓄体をピラミッドの重心に戻すと、再び帯握する。
これを繰り返して次々とルビーに握を入れていく。重心にルビーを戻さなければ次の握が装填されることはない。
アミュレットを変えれば違う握を装填できる。
アミュレットは24種なので写植のように順次配置を変えていく。
最大4個同時に同じ種類のアミュレットを使うので、96個用意しておけばよい。
毎回手動で単蓄体を動かすと大変なので、紐を引いたり鍵を押したりするだけで単蓄体が動く仕掛けを作り、人では所定のアミュレットを置くだけという作業ですむようにするのが通常である。
そしてこのようにした機械を魔月館といい、プログラム機械であり、sorsの前身である。
・月光蟲
生物学や動物学に相当する魔法学の分野である魔物学もまた魔法学の発展に貢献した。
魔物学者のgranbel dainは月光蟲を生物でなく魔法学的現象ではないかと考えていた。
月光蟲とは月の出る晩に山などで起こる現象で、紫などに光る虫のことである。
グランベルは鉱山で広く目撃される点に注目し、光が生物でなく鉱物から出ていることを突き止めた。
水晶(石英)を通った月光がニオブ石に当たると、そのニオブ石中に月晄が溜まっている場合、青緑色の光を生じる。それとともにニオブ中の月晄が放出される。
これがカルノー石ならバナジウムによる紫色の光となる。
たまにしか目撃されないのは、鉱山などで掘り起こされた土からニオブ石などが出てきて、その夜以降に月光を浴びるためである。
こうした環境がそろわないと見られず、また石英を通すという条件もあり、さらに発光時間が短いことが重なってまるで蛍のように生き物と誤解されてきた。
月光蟲は徐々に光が弱くなるのではなく、晄基が鉱物からなくなるまで一定の光を出す。
なくなると同時にぱっと消えるのが特徴で、このため1つずつ晄基が鉱物から光に変換されると分かる。
体積や表面積がいくつであってもニオブ等の分子が連続している物質からは常に1つずつ晄基が放射されるのが特徴である。
鉱物中のニオブは通常ほかの物質と交じり合って存在しているため、月光が当たると各個のニオブの塊が光を出し、小さいものから順に光が尽きていく。
このため、生き物の光が弱まっているように見え、蛍のような虫と誤解された。
たとえ晄基が1つでも(実際は1握4ガレットが月光蟲の最小単位だが)可視できる程度の明かりを放つこの特徴が魔法学の進展に寄与することとなる。
・単蓄体
バナジウム板にレニウムを混ぜるとレニウムが62%を超えた時点で不導体となる。ところがこの合金には月光蟲現象が見られる。
ここでレニウムの比率を高めて75%を超えると、不導体である点は変わらないものの、月光蟲も起きなくなる。
このことからこの合金はレニウム比62~75%の間で貧蓄体となることがわかる。
レニウム比に幅があるということは、蓄える晄基の量にも幅があると考えられる。
すなわち62%の合金は75%のそれより多くの晄基を蓄えると考えられる。
逆にレニウム75%の合金は不蓄体になる寸前なので、ほとんど晄基を含まないことになる。
75%が不導体と貧蓄体の境界であるといえる。これは極限まで晄基を減らしたものといえ、合金内に1つしか握が存在しないものと考えられた。
ところでなぜ1晄基でなく1握として蓄えると考えられたのだうか。
通常バナジウム板には陽晄のみがガレットの形で無数に存在する。
もしガレット単位で光を発するなら、コバルト針などでバナジウム板から陽晄を追い出した際に、紫の光が出るはずである。
つまり放射線としての陽晄線は紫色のレーザーになるはずである。だがそのようなことは起こらない。
そこで月光はバナジウム板のガレットを握化し、それがバナジウムを出るときに光るのではないかと考えられた。
そしてアミュレットピラミッドで人工的に1111,1111,1111,1111を作ると紫の光を出して消えるのが確認され、この説は肯定された。
ときにガレットの大きさはあまりに小さいのではないかと考えられていたため、人間が作れる合金の精度ではたしてたった1握だけ得られるだろうかという疑念が残った。
・テンペスト
この後、チタンとレニウムの合金に月光蟲が起こることが発見された。
光は白であった。バナジウムが紫がかった藍、ニオブが青緑、タンタルが黄味がかったオレンジときていたことから、虹のような可視光ではないかと考えられており、白は4ガレットすべてを含むのではないかと考えられた。
チタンとレニウムの合金もまたくだんの62~75%という幅を持っていた。レニウムを75%にし、これを金などから銀箔を介して帯握させると1握(推定量)のみ帯握する。
この合金をtempestといい、単蓄体の一種である。
ときに単蓄体が1握のみを含むというのは、数学的な推論にすぎなかった。
テンペストが月光蟲を起こす時間をtとすると、62%から75%に近づくたびにtは指数関数的に減っていくためである。
ただし75%のときは光が出る時間が肉眼視できない短さになるので、光を使っては確認できなくなってしまう。
月光蟲は握が少なくても光の強さは一定だが、握が少ないと光る時間は短くなるためである。
月光が鉱物にあたってすぐ月光蟲が起こるわけではなく、握の多寡にかかわらず月光蟲が始まるまでに数秒間の間鉱物に磁力が発生する。
75%のときは発光が肉眼視できない長さなので、砂鉄を使って月光蟲開始前の磁力の有無で晄基の存在を確認するという手法が取られた。
なお、テンペストは1111,1111,1111,1111から4444,4444,4444,4444という最低4握を持ったときに白になる。
ただし4握では肉眼視できないので、これはあくまで理論上の話。単蓄のときは1~4のいずれかの晄基色になる。ただしこれも肉眼視はできない。
・崩月現象
月光蟲が起きているときに水晶と鉱物の間に菱沸石をはさむと、月光蟲が停止する。
間に挟むのが例えばガラスの場合では月光蟲は停止しない。
この月光蟲が停止する現象を崩月(ほうづき)現象という。崩月は握化した合金中の握をガレットに分解する現象と考えられた。
・白金橋
さてここでテンペストの単蓄体に崩月を起こす。テンペストは細長い板にし、裏側に白金鋲を取り付ける。
このとき白金鋲をテンペストとダイアモンドに接する部分以外はレニウムで覆っておく。
崩月の分解作業は幻晄線と晄基線の崩壊によるものなので、握のうち1行1列目から始まり、4行4列目で終わる。
しかしその速さは電気や光並み(このころ光速はまだ科学的に求められてはいないが、圧倒的に速いことは分かっていた)と考えられており、肉眼で確認できるものではない。
だがどんなに短い時間であっても確実に1行1列目は一番に晄基に戻るため、何より先に白金鋲を通る。
なお、鋲の先にはダイアモンドが取り付けてある。そしてこの仕組み全体を白金橋という。
ダイアモンドは不蓄良導体と考えられてきたが、白金と接触すると単蓄良導体になることが月光蟲の解明以降明らかになっていた。
ダイアモンドは白金経由で1ガレットのみたくわえることができ、単に閉式をためようなどとしても握単位では大きすぎて蓄えることができない。
蓄えずに通過させるため、ずっと不蓄良導体だと考えられてきた。
ダイアモンドに1ガレットを白金経由で与えると、晄基色(陽晄なら紫)を約0.7秒の長きにわたって放つ。
これによって晄基配列を肉眼で確認することができるようになった。それとともにテンペストから送られた握数も把握できるようになった。
0.7*16秒間光れば元データは1握であることが分かる。これを使ってレニウム比75%のテンペストが数学的推論通り1握を持っていたことが確認された。
また実験の結果、およそ73%からすでにテンペストは1握しか持っていなかったことが判明した。つまりレニウムが73~75%の間はテンペストは単蓄体となる。
なお、白金鋲中にプールされたガレットは順次ダイアモンドに送られるが、256ガレットをこえるとダイアモンドの発光が途絶える。
ダイアモンドを砕いてやりなおしても光は生じない。新しいダイアモンドに交換すると光は生じるようになる。
これにより、この技術を使って半永久的に使える照明の発明は失敗に終わった。
しかし晄基配列が肉眼視できたことと、何より単蓄体が1握を含むことが確認できたことは大きい。
・複写性
魔月館を用いてルビーに記録された魔晄はもはや魔法ではなく、データとして機能する。
ゼロガレットを帯びさせたエメラルドとルビーの間に水晶板を置き、ルビー側から光をあてるとエメラルドはルビーと同じデータを持つようになる。
これをエメラルドの複写性という。
・魔動回路
鉛を25%含んだ白金板は放晄傾向を逆転する性質があり、単蓄のテンペストを白金鉛合金で包んだものにエメラルドを接触させると1握分合金にデータが移る。
この合金にレニウムで包んだ白金の針金をつなぐ。針金の先端にトルマリンをつなぐ。そしてトルマリンの反対側にまた同じ材質の針金をつなぐ。
ここでテンペストを崩月するとトルマリンにガレットが流れる。
陽晄ではトルマリンがゼロガレットを2つ白金に流す。月晄ではゼロを1つ渡してから1つ空気中に放出する。
雄晄ではゼロを2つ空気中に放出する。雌晄ではゼロを1つ空気中に放出してから1つ白金に渡す。
この仕組みは後の電気のオンオフによる回路と同じであり、ゼロガレットの有無で回路が動く。
これが後のコンピュータにつながる。
・実践魔法学
今まで見てきた理論魔法学の対。呪文学を前身とし、smで体系化された。呪文学を前身とする度合いは理論魔法学より大きい。
魔法を使う行為そのものよりも、魔法を使用する局面に焦点を当てている。理論魔法学のノウハウを活かしつつ進歩してきた。
ヴィルひいてはヴィードの仕組みを解明しようとするのが理論魔法学であり、魔法を使うときの仕組みを解明しようとするのが実践魔法学である。
例えば人はなぜ魔法を使えるのか、どのようにユノやfaiを撃つのかといったヴィードを使用する局面に焦点を当てている。
実践魔法学(より厳密には下記の発動魔法学)は音声学でいうと調音音声学の局面に相当する。
また、撃った後どうなるかという学問は効果魔法学であり、音声学でいうと音響音声学と聴覚音声学にあたり、実践魔法学の下位概念である。
撃つ局面についての学問を特に発動魔法学といい、効果魔法学の対であり、実践魔法学の無標の下位概念である。
理論魔法学は魔珠や魔月館ができるまで大きな軍事的・経済的利益をあげなかったため、それまでは実践のほうがもてはやされがちであった。
しかし魔珠や魔月館以降は立場が逆転する。
実践は人はなぜ魔法を使えるのかという素朴な疑問から始まった。その意味ではsmよりも昔から存在するが、学問体系ではなかった。
われわれは歩くように自然と魔法を使える。仕組みが分からずとも子を残せるように、仕組みを知らなくとも魔法が使える。
幼児は歩行の練習と同じく、体にたまったヴィルを体外に集中させ、何度も発動しようとする。しかしほとんどは魔法として成立しない。
幼児を観察していると、誰に教えられたわけでもなく足を使って歩く。手では歩かない。それと同じくヴィードを集中するときは手を使い、足を使わない。彼らは本能的に手のアフォーダンスを学び取ることができる。
あるときうまく立てるようになるのと同様、手に掌紋のような円陣が現れる。レガルである。レガルが出ると同時に魔法の萌芽が手のひらの前に現れる。
たいていの場合、最初の言葉がパパかママであるのと同様、最初の魔法はfaiである。おそらく幼児にとってfaiの閉配列(閉式魔法については後述)が最も自然に出しやすいためであろう。
あとは同じ配列を崩さないように集中しながら重合度を高めるが、これは息が途切れないように風船を膨らませたり、倒れないように自転車をこぎ続ける感覚によく似ている。
風船を膨らませるとある時点で息を吸いたくなるのと同様、重合を高める集中力が途切れる。このとき風船の中の空気を口から吸えば息が肺に戻るのと同じく、重合したヴィードを体内に戻せば光などとして消えた分以外は体に戻る。
一方、息を風船から飲み戻さずに口を離すのと同じく出したヴィードを体内に戻さなければ、風船の空気がぴゅーっと出て行くのと同様に魔法が発動する。
幼児は風船に働く科学もfaiに働く魔法学も知らないが、どちらも体得することができる。この意味で魔法現象は科学現象によく似ている。
仕組みを知っていれば効率よく現象を起こせるが、知らなくとも現象を起こせないことはない点が共通している。
例えば力学的にボールは45度の角度で投げると最も遠くまで飛ぶが、その仕組みを知っていなくともボールを投げることはできるのと同様である。
・魔法を使えない人
rdまではユノを撃てない者はほとんどいないが、男性を中心に魔法を撃てない者は神代から存在する。
この原因は理論魔法学とのコラボで分かることだが、魔晄は配列が30万種以上あり、一方ユノは数種しかないため、特定の配列を会得するのにコツがいるためである。そして女性は先天的に自分の体の中のヴィードの配列に敏感である。
また、lukletiaでは一般的に感受性の強いタイプ、思い込みの激しいタイプ、知的なタイプ、神経質なタイプはヴィードの配列にも敏感であることが多いとされている。
なお、nd以降はほとんどの人がユノすら撃てない。これは感受性の問題よりselesの3,2遺伝子が原因と考えられる。
・改めて重合とは
1握は正四面体を描く。光が起こる場合、その重心に光が発生する。
重合しない1握のヴィードは光が弱すぎ、知覚できない。知覚するには同じ配列のヴィードを集める。
集めることを重合という。重合度を上げると正四面体の辺が長くなり、光も大きくなり、頂点には多くのseejiが集まる。
閉式赫晄は光を出し、閉式魔晄は閉式魔法を出すとともに光を屈折させてレガルを生む。
よく現代アルバザードのアニメや漫画ではレガルに幻字が書かれるが、あれはファンタジー上の演出にすぎず、本物のレガルに文字は浮かび上がらない。
なお、重合度はユノ弾や魔法の威力に比例する。
・魔法光
faiを重合している間、レガルとともに炎が手のひらの前で渦巻く。恐れを知らない幼児が左手をこれにさしこんでも火傷をしないのはなぜだろうか。
これは閉式が効果を持っていないためである。
実はこの光は炎と勘違いされやすいが炎ではなく、火属性の魔法であることを示す光(魔法光)にすぎない。
閉式魔晄は本来体内で安定するので、体外に出すと外側からどんどん揮発してヌルになる。この際、魔法の種類に応じた11種の魔法光が起こる。
アルシアはこれを元に魔法を分類したわけである。
闇:黒
水:青
風:緑
土:茶
火:赤
雷:黄
光:白
聖:淡い青味がかった銀
邪:黒い赤みがかった紫
利:淡い水色がかった緑
害:黒い黄味がかった緑
聖邪利害は2色が混じってマーブルになる。
このことからこれら4種に比して闇~光が基本属性と呼ばれる。
・閉式魔法
風船を口から放すと自動的にぴゅーっと空気がもれる。魔晄も同じで、魔圧を平衡するために流れだす。
そして気流が逆方向になるのと同じように、魔晄もまた逆方向になる。
何をもって逆方向というかというと、それは晄基配列である。
配列が光学異性体、つまり鏡像になることで逆方向になる。すなわち反転する。この反転によって魔晄の配列が変わり、発動状態となる。
鏡像反転はwalkiliに起こるので、ミクロにいえばすべてのseejiにも起こるといえる(walkiliは四面体の各頂点がまた四面体をしているという入れ子構造なので)。
まずseejiの配列が1234行の順だったのが1432行の順になる。そして各seejiの中もまた1432となる。
つまり魔晄が1234,2341,3412,4123だった場合、その異性体はまず2,4行目を入れ替え、次に各行の2,4列目を入れ替え、1432,4321,3214,2143となる。
前者が閉式魔法だと、後者が開式魔法となる。
開式魔法になると効果を持つが、時間とともに開式赫晄に変化する。
・半式魔法
閉式魔法から開式魔法になる際、半式魔法という状態を経る。
半式は閉式のt殻が0になったものである。
閉式から開式になる際にガレットは所定の位置にワープするのではなく移動するので、移動経路ごとに渡りの配列がいくつもできていくことになる。
ではもしこの渡りの配列がたまたま別の魔法の配列だったらどうだろう。
なぜその魔法として発動しないのかという疑問が当然起こる。
それについては魔法学者たちも当然不可解に感じていたが、その答えがこの半式である。
閉式が開式になる際に一度閉式のtを0にしておく。
こうすることでガレットの移動中に他の魔法になることはない。
そして移動が終わったらtを4に戻し閉式とすることで発動するというわけである。
まこと自然の仕組みというのは合理的にできている。
・半式の特徴
半式は魔法として半分成立した状態であり、開式になった際の形を持っている。
例えばeezならつららの形として空気中に現れる。しかしまだ発射されていないので飛びはしない。
半式は虚質量を持ち、eezならつららの重さとして実現する。
同様に光の魔法なら虚電磁波を持つということになる。
半式はアテンに触れた瞬間に開式となる。
例えば魔導師が何本もeezを出して威嚇しているときに誰かが前方からeezの一本を触るとたちどころに発射され、少なくとも一本はその誰かに刺さるということになる。
・半式の配列
半式の配列は閉式を
4kxs
nvfm
dgpb
hycr
とし、開式を
4sxk
hrcy
dbpg
nmfv
とすると
0sxk
hrcy
dbpg
nmfv
であり、あくまで開式に近い。
これらは互いに一瞬で変化する。
その一瞬であっても配列が別の魔法になってしまわぬよう、半式があるのである。
・持続時間とキャンセル
術者は半式を任意の時間保っていられる。
従ってeezを10本出す際、できたものから順次撃っていくこともできるし、後からまとめて一気に撃つこともできる。
ただし開式にするまでは風船に空気を入れ続けるようなもので、半式で耐えている間は息こそ吹き込まないものの、風船に口を当てたまま鼻から空気を吸わないで息を止めた状態と同じである。
従って半式のままずっと止めておくのは不可能で、集中力が持たない。
開式魔法にしないまま止めると閉式魔法に戻り、さらにそこから閉式赫晄に戻り、体内に吸収される。
廃棄した分等以外はnalfeが戻るので、魔法のキャンセルといえる。
なお、キャンセルはユノなどにもいえることである。
・廃棄率
魔力の通りをよくする服装やアイテムというのがあるが、あれはどのような仕組みなのだろうか。
魔法は重合して使うもので、100握は10握よりガレットの数が10倍多く、単純計算で10倍強い。
100握の魔法は1600ガレットからできている。魔法物理的に考えて、この数をアイテムで増やせるわけではない。
しかしアイテムは確かに効果があるように感じられる。それはなぜだろうか。
実は体内のヴィルを開式魔法に変える際、アナログで配列を作っているので、少し配列の違う魔晄も作られてしまう。
リコーダーは穴を押さえれば決まった周波数の音が出るが、口笛は必ずしも決まった音階が出せない。その感覚と似ている。口笛だと同じドなのに少しずつ周波数が異なるのがふつうである。
間違った配列のヴィルは重合には寄与しないので、開式赫晄に変化してしまう。つまり1600ガレット集めるのに2000や3000もかかっているということである。
言い換えればヴィルを廃棄しているということになる。体調が優れないときに魔法を使っても効果が低いのは廃棄率が高くなるためである。
そして一部のアイテムは脳に働きかけて集中力を高め、廃棄率を低減する。
なお、魔法の威力を高めるアイテムもあるが、あれもまた1600ガレットを3200に増やすというような代物ではない。
単に重合可能な容量を増やすにすぎない。小さい風船の代わりに大きい風船にするようなもので、膨らませれば大きくはなるがその分使う息の量も増えるのと同様、使う魔力も増える。
・連続魔
大道芸人やサーカスの道化が右手から炎を出しながら左手から氷を出すのを見たことがあるだろう。
同時に2つの魔法を出すのを連続魔という。2種類の魔晄を個別に同時に重合する能力が必要で、ほとんどの人はできない。
まれに右目と左目を別々の方向に動かせる人がいるように、連続魔を使える人がいる。
たいていの場合、先天的にできる者がその能力に気づいて練習し、熟練させていくものである。
ある人の出せる重合度が100の場合、連続魔をしても200は出せない。50ずつになるだけであり、戦闘的にはそれほどアドバンテージがない。
よって現実には大道芸人のパフォーマンスなどとして見られることが多い。
・魔法の覚え方と古代魔法
魔法は一定の配列の魔晄を集め、それが閉式魔法になるかどうかで魔法として成立するかどうか調べる。
この点において魔法は経験的な存在といえる。
後述の調合魔晄学は魔法を理論的に作る技術だが、調合魔晄学ができるまでは人も神も悪魔もこのようにトライアンドエラーの連続の中で魔法を編み出してきた。
これは要するに慣れと経験とセンスの問題なので、寿命の長い生き物のほうが必然的に長けることになる。
よって神や寿命の長い世代の人類にしか使えない魔法があり、古代魔法と呼ばれた。
魔法の中にはfaiのようにアテンの体が配列を作りやすいものもあれば、fortのようになかなか配列を作れないものもある。
これは例えばアテンの指が内側に曲げるのはたやすいが外側は難しいというのと同じで、身体性によるものである。
従って同じアテンの中でも身体性やセレスの遺伝子が異なる者の間では、使いやすい魔法がそれぞれ異なるということが起こりうる。
つまり極端な話をすれば、ある魔族にとっては人間にとって簡単なfaiが非常に難しく感じられ、fortは容易に感じられるということがありうるわけである。
そしてたいてい古代魔法というのは人間にとって難しくて使えなくなった魔法を指すことが多い。
魔法は出してみて成立したらその感覚を忘れないうちに何度も繰り返すことで習得できる。
感覚を忘れてしまえば忘却となる。
筋肉と同じで怠けていると力を失うので、魔導師は日々研鑽を重ねる。
・魔法の教授法
魔法は感覚的なものなので人に教えるのが難しい。
言葉だけで口笛の吹き方や自転車の乗り方を説明するのは難しく、スポーツもまた口で教えるのには限界がある。
魔法はそれとよく似ている。身体技能なのでどちらかというとスポーツに近い。
結局現場ではスポーツと同じく実際に見せてみて真似させることが多い。
このとき頼りになるのは目に見える魔法光とレガル、そして半式魔法である。
例えばeezならまず水の魔法光を出させ、「そしたらあとはそのヴィルを練ってつららにするイメージで」などといって半式を作らせる。
スポーツも「こうだよ、こう。つま先でさ、ほらこんな風に」などと直感的に教えることが多いが、魔法も調合魔晄学ができるまでは同様であった。
同じ体育の授業をしていてもできる子とできない子がいて運動神経の違いとされるが、魔法も同じで、要するに魔法神経のよしあしがあり、たいてい女性のほうが魔法神経が良い。
・消費nalfeとcaspelと熟練度
人間はfaiを出しやすいがfortは出しにくい。
それは指を内側に曲げるのは容易いが外側は難しいのと同じで、身体性によるものである。
指を内側に曲げるのも外側に曲げるのも消費カロリーは本来同じである。しかし指の構造上そうはいかないというだけの話である。
魔法も同じで、faiもfortも握の数は同じで、最小1握である。しかしfaiのほうが消費nalfeが少ないのはなぜか。
それはfortのほうが人間にとって難しいせいで廃棄率が高いためである。
ということは同じだけのnalfeをかければ当然fortのほうがcaspleは少ないことになる。
そして同じ人間でも慣れてくれば同じ魔法を低nalfe高caspelで放つことができるわけで、これが魔法の熟練度を指すことになる。
・効果魔法学
放ったヴィードがどのように振舞うかについて研究する分野。
・ユノ(hanon)
凸式蒼晄はhanonとして働く。虚質量を持つか(volk)、虚熱量を持つか(vont,vanos)、何も持たないか(avon)のいずれかである。
閉式蒼晄を体外に出すと青い光を放って開式になる。閉式は虚質量を持つ。
開式に変化して消滅するより早く意識を手の前に集中させることで閉式の重合度が増す。
ある程度重合させ、虚質量に変えると凸になり、volkになる。同様に虚熱量に変えると凸でvontになる。
avonの場合は凸になり、虚質量も虚熱量も持たない。この場合、光って見えるのは閉式だった部分だけである。
・加速膜
ユノを放つ際、手のひらに薄い青い膜が見られる。これは加速膜といい、閉式でできている。
手の前の閉の弾を凸に変換すると、膜と凸の間に斥力が生じる。この斥力をFとし、凸の虚質量をmとすると、ma=F、a=F/m≠0が生じるため、加速度が生まれる。
ユノ弾の質量は人体よりも圧倒的に軽いため、人間側に生じる反作用は銃を撃ったときの反動のように小さいものである。すなわちvolkを撃ったことにより反作用で人が怪我をすることはない。
飛行も同じ原理で、ユノに虚質量を持たせ、加速膜を利用して斥力を生じさせ、その力で飛ぶ。
加速膜を使って相手のユノをはじき返すことは可能だろうか。これは物理的に不可能である。
相手の弾が自分の手に当たる寸前の速度をVtとした場合、ここに反対向きの斥力Fを加えて加速度aを加えても、Vtがほんの少しだけ低くなる程度であり、意味がないためである。
手に当たる寸前から実際に当たるまでは0.1秒もないわけだが、このときの速度の変化は0.1a程度であるから、Vt-0.1aでは現実的にはほとんど意味がない。
・ユノ(tilma)
さて凸式はhanonだが、凹式のtilmaでこれを防ぐ。tilmaはhanonをヌル化する。
平板ガレットになったhanonとtilmaはすぐに2つの開式蒼晄に分解される。
tilmaを抜けた凸がmilxeを侵食する。
tilmaは偏晄が容易で、弾の当たる箇所に凝縮することで、局所的な防御力を高めることができる。その反面、milxeに比べて総量が少ない。
しかしtilmaはmilxeよりも圧倒的に回復が早く、ヌル化した先からmilxeがtilmaに変換されていく。
tilmaはたとえ0になっても敵の攻撃が止まれば1秒もせず元に戻る。
つまり人体は2段階の防御システムを持っているということになる。
・ヴィル
閉式赫晄は赤い光を放ち、虚質量を持つ。光を放つと開式に変化する。
赫晄のうち、開閉以外を魔晄という。魔晄は虚質量を持たないが、閉式魔法として成立すると虚質量を持ち、光を歪めてレガルが生じ、魔法光が手のひらの前に渦巻く。
赤い光でなく属性ごとの魔法光である点に注意。
開式魔法は虚質量を持ち、魔法の内容に応じた魔法学的現象を引き起こす。
この場合も虚質量は赤い光以外のエネルギーに変換される。
例えば火の魔法は分子の運動速度を高める。よって厳密には熱の魔法である。
開式魔法は開式赫晄になるとともに消えていく。このとき光は生じないが、魔法の効果によっては魔法自体が光を出すので、光が消えたように感じられるものもある。
魔晄の重合度をcaspelという。その魔晄を開式に打ち消すのがpialesで、これは入ってきた魔晄を即座に分析してその透過値を与えるものである。
pialesを通過したcaspelはmilxeを侵食する。
・ノア
翠晄は体内で働く。閉式が体内で筋肉の代わりとなって力を発揮するときがbcainで、関節や腱などの代わりをして柔軟性を出すときはklenasという。
これらは閉式が何の身体部位の代理をするかという役割の違いでしかなく、どちらも同じ閉式である。
これが消費されると開式として体外に放出される。緑の光は体からうっすらともれた閉式よるものである。
ユノの場合は炎のように青い光がたちこめるが、ノアの場合は体が緑の薄い膜で覆われたように見える。
ノアは体外に出すと急速に開化するため、魔石などを用いない限り、ユノのように弾として取り出すことはできない(実験室では別。ノアピラミッドなどを作れるため)
翠晄で強化した筋力は敵に物理的なダメージも与えるが、ノアを帯びているためヴィード傷に分類される。
実際のところ直接reevを削らず先にmilxeを削ることからもそれは明らかである。
tilmaやpialesのように局所的な盾として使えるノアにはないため、milxeを削る割合は大きい。
ノアで強化された格闘家は目にも留まらぬ速さで激しい威力の打撃を放つ。一発一発のmilxeを削る割合が効率的なためである。
世界的に有名なのはヴェマの格闘兵である。肉体を極限まで鍛えた格闘兵による肉弾戦力は絶大である。
欠点はノアがほとんど体外に出せないことによるリーチの短さである。
接近戦には強いが、魔法兵や弓兵とは相性が悪い。しかし接近戦は騎兵や剣兵を遥かにしのぐ。
というのも、格闘兵の速度からすれば剣兵など象が動いているように感じられるためである。
ノアはほとんど金属にも乗らず、乗ってもすぐに減少してしまうため、爪やグローブのような武器が前提となる。あるいは裸拳である。そのためリーチはさらに稼げない。
なお金属では青銅、有機物では牛革がノアをよく通すため、素材として使われる。
・アルマ
アルマは開閉がなく、このまま武器にも防具にもなる。
強力なヌル化能力を持っているため、武器として使えば効率よくtilmaやmilxeを侵食し、防具として使えば敵のヴィードをヌル化できる。
・幻晄の整理
ヴィードはyuno(蒼晄)、vir(赫晄)、noa(翠晄)、arma(輝晄)、の総称である。
armaはyuno, vir, noaを合成したものである。
●凸式蒼晄
晄基配列
1243
1243
1243
1243
効果
hanonとして使われるもの。
凹式蒼晄を侵食し、ヌル化できる。
凹式蒼晄の分量を越えたものは閉式蒼晄を侵食し、開式蒼晄に変換する。
すなわち、hanonとして機能し、tilmaを侵食する。tilmaを越えた分はmilxeを侵食する。
●凹式蒼晄
晄基配列
2134
2134
2134
2134
効果
tilmaとして使うもの。詳細は上記のとおり。
●開式蒼晄
晄基配列
1234
1234
1234
1234
効果
アテンの体外で安定する。
hanonに侵食されたmilxeは開式蒼晄として空気中に放出される。
●閉式蒼晄
晄基配列
2143
2143
2143
2143
効果
アテンの体内で安定する。いわゆるmilxe。
hanonに侵食されると開式蒼晄になり、体外に流出する。
●開式赫晄
晄基配列
1234
4321
1234
4321
効果
ヴィルの無加工形。
アテンの体内では安定しない。人間が体内で開式赫晄を作って放つのは非常に難しい。
空気中に好んで存在する。魔導師はこれを体内に取り入れて、閉式赫晄にする。開式のままだと安定せず、取り込めない。
●閉式赫晄
晄基配列
3412
2143
3412
2143
効果
配列が開式の透過値になっている。
開式をヌル化することができる。
アテンの体内に安定して大量に存在するが、空気中では安定しない。
そのまま放出しようとすると無茶苦茶な配列になって放出されるため、魔導師は配列を整えて放出する。
ルーキーテは閉式をそのままcaspelとして放つ。そのままpialesの透過値なので効率よくpialesを侵食できる。
閉式は体内ではnalfeとpialesに分配される。
どちらも消費するとともに減る。nalfeは魔法を使うと減る。pialesは魔法を喰らうと減る。
nalfeは長期的に回復し、回復には時間を要する。pialesは瞬時に回復し、敵の魔法を弾いたら、次の魔法を喰らうころには回復している。
生物の赤筋と白筋のように長期的に使うものと短期的に使うものに分別して保有することで、生存競争力を上げている。
●開式翠晄
晄基配列
1111
2222
3333
4444
効果
アテンの体外で安定する。
●閉式翠晄
晄基配列
2222
1111
4444
3333
効果
アテンの体内で安定する。蒼晄に比べ少量だが、安定していて流出しづらい。
開式翠晄になるときに生じる物理エネルギーを利用して、運動能力を一時的に強化する。
つまり消費することで開式になり、空気中に放出される。しかし休むことで閉式がふたたび蓄えられる。
●輝晄
晄基配列
1234
4123
3412
2341
効果
輝晄は開閉や凹凸がなく、この配列しか持たない。
アテン体外でも体内でも安定せず、すぐヌルに変化してしまう。
蒼晄、赫晄、翠晄をバランスよく組み合わせることで作れるが、量は多くなく、非常に不安定。
他の幻晄に対する侵食力が極めて高く、接触した幻晄をヌルに変える強い特性を持っている。
このため、攻撃時には相手のtilmaを打ち破り、milxeを侵すことができる。
逆に防御時には相手のhanonを強力にヌル化することができる。
●透晄(ヌル)
晄基配列
1234
3412
4321
2143
効果
何もない空虚な状態。
放置状態での安定性は高いが、同時に加工性も高い。
アテンの肉体は透晄を吸収し、加工して蒼晄などに変える。
これは意識的に行うこともできるが、呼吸と同じで必要な分は無意識で行われる。
休むとヴィードが回復するというのは、ここから来ている。
ほかに回復は開式を閉式に変換することでも行われる。
例えば開式蒼晄を吸って閉式にするなど。
透晄は何にでもなれるが、この場合は蒼晄にしかなりえない。
1234を並べていくと12341234……となる。
このとき1から見て常に3は接しない晄基である。
同様に2から見たら4が接しない。3は1、4は2と接しない。
このような接しない数字のことを透過値と呼ぶ。
ヌルの配列では接しない晄基(透過値)同士が次の指と隣接している。
1234に対し3412を重ねると、接しない幻基同士が縦方向にぶつかることになり、相克が起こる。
1,2指目は相克関係になっており、3,4指目はまったく同じものが逆さまになっている。
このように透晄では相克が起き、性質的に無色透明化される。
●魔晄(vivid)
上記で挙げた配列以外の配列がすべて魔晄と呼ばれるもので、いわゆる魔法のエネルギーである。
上記以外のすべての組み合わせなので、魔晄の配列の組み合わせが最も多い。
だからこそヴィードの中でヴィルを使う魔法が、最も複雑な体系を持っている。
・魔法の持続時間
魔法は閉式魔法が開式魔法になると発動し、開式魔法が開式赫晄になるまで持続する。
銅は一旦魔晄を蓄えゆっくり揮発させる効果があり、銅に魔法を放つと徐々に魔法を放出する。このとき単位時間あたりの魔法の威力は持続時間に反比例する。
この性質を活かし、魔灯などの日用品に役立てる。
また、ルビーから徐々に魔法を吸い出す方法もあり、これでも魔法の持続時間を長くすることができる。
・回復の原理
人(より厳密にはアテン)は閉式を体外に出す一方、開式を体内に取り入れ、閉式に変換する。
ちょうど二酸化炭素を出して酸素を吸うのと同じである。
体内に入る幻晄の量は体全体の体積と単位体積あたりの晄圧による。そして晄圧のほうが通常ものを言う。
金がホワイトゴールドよりヴィードを蓄えるよう、人にも蓄えられる密度がある。
この密度すなわち圧力の違いが神と人との違いであり、また古代人と現代人の違いでもある。
ただし、重合力の違いも力の差の主な原因である。
体外からヴィードを取り込んで回復する速度もまた人によって異なる。疲れてもすぐ元気になる人となかなか回復しないで寝込む人がいるのと同じことである。
一般に老人は回復力が衰えており、幼児は蓄えられるヴィードの総量が少ない。
回復とは基本的に減ったmilxeを戻すことである。keaの魔法の原理はcaspelが対象の体内に入ってmilxeに変換されるというものである。
人は閉式蒼晄を別の人にmilxeとして閉式蒼晄の形のままで与えることはできない。
また、nalfeをmilxeにすることもできない。それゆえ白魔導師が存在する。
ケアはまずnalfeをcaspelに変換する。そのcaspelは開式魔法になると対象の体内に入り、milxeに変わる。これがkeaの効果である。
自分を対象にすれば自分自身も回復できるが、nalfeをmilxeに直接変換することはできず、あくまでケアを自分にかけることで実現する。
・ヴィード傷とアルヴェド傷
milxeは衝撃から体を守る効果があるが、milxeも結局はユノの集まりなので、ユノ間の隙間を縫っていくらか衝撃が体に到達する。
したがって痛いとか重いといった主観的ダメージを知覚することになる。
このうち敵のヴィードがすり抜けてできた傷をヴィード傷という。
なおmilxeが減少した分については体に傷がついたわけではないので、ダメージとは言っても傷とは言わない。
一方、そのヴィード傷のせいでよろめいて転倒したとしよう。このときもmilxeによって守られるが、すり抜けた衝撃でカスリ傷などを負うことがある。
こちらの傷はヴィードによるものではなく土と体の接触や摩擦によるものなので、アルヴェド傷という。
keaの効果はmilxeの回復だけでなく、ヴィード傷を癒すものでもある。
例えば敵のユノ弾のすり抜けによってかすり傷ができたとしよう。
keaはこのかすり傷をふさぐ効果がある。というよりもkeaはこの傷を通して体内に入る。そしてその結果、milxeに変換されてmilxeが回復する。
つまりkeaの本来の効果はヴィード傷をふさぐことにある。
だからこそヴィード傷のない元気な状態の人間にkeaをかけても何も効果が現れないし、アルヴェド傷を持った人間にかけても意味がないのである。
もしそうでなければkeaをかけ続けることで際限なく対象のmilxeを増やせてしまう。(もっとも、その場合でも体内の最大晄圧は超えられないので限界はあるが)
魔法で通常の物理的な怪我による人間を救えないのもこれが原因である。
子供のころ誰もが「keaをかけ続けたら怪我をする前よりも元気になるのではないか」と一度は考えたものだろう。
それがそうならないことは大人になるにつれ経験的に知っていくが、そのからくりはこのようなものである。
また誰もが老いて死ぬゆく祖父母に対してどうにもすることもできない魔法医に、心中怨嗟の声を投げかけてきたことだろう。
これもまたamitiが医学的な病にほとんど効果がないことの結果である。(ただしamitiは体を芯から暖める魔法なので、ある程度健康にする効果はある)
・呪文学再考
実践魔法学の発達により、sm以前の呪文学に魔法学的根拠がないことが明らかとなった。
魔法学を紐解いても言葉が関与する部分については学問的に証明されないためである。
つまり簡単にいえば、呪文が効果的というのは思い込みや暗示の類にすぎないということである。
実践魔法学が台頭しだしたころは実践魔法学への偏重により、呪文は一切無意味なものであると断じられた。
しかしその後smになると学会の実践魔法学への熱が冷めたこともあり、「そうはいうもののやはり呪文を唱えたほうが魔法の威力は明らかに強い。事実は事実と認めた上で対処しなければならないのではないか」という風潮が起こる。
これにより呪文は見直され、なぜ効果があるのかが論じられるようになった。
しかしそれは魔法学的な根拠に乏しいため、あくまで推論の域を出なかった。
おおむね多くの学者の一致した意見はこうである。つまり呪文を唱えることで精神が集中するとともに、呪文と魔晄がセットになってパブロフの犬化するというものである。
魔晄の重合は目に見えないし触れることもできない。魔法光とレガルしか知覚できるものはない。これでは非常に特定の配列の魔晄を出しづらい。
そこである魔晄(=ある配列)を重合するときには決まったある文を唱えながら重合するようにする。そうすると呪文という知覚できる音声が特定の魔晄と関連付けられる。
われわれはサイレンが鳴れば火事だと分かるが、サイレンと火事は本来関係ない。
しかし関連付けられているので、逆に出先でサイレンを聞くと火事を想起するようになる。
本来は火事があってサイレンを鳴らすのに、誤報でサイレンを聞いた場合、火事を見なくても慌てるようになる。
ちょうどパブロフの犬と同じ原理である。
このパブロフの犬を利用したのが呪文ではないかというのが大方の一致である。
つまり知覚しにくい魔晄の重合作業を、知覚しやすい発声という作業で想起させる。
特定の発声(呪文)と特定の魔晄を関連づけることで、正しい配列の魔晄が得やすくなる。
これにより廃棄率を減らすことができる。その結果、呪文には効果があると感じる。
従ってsm以前の「呪文はfvやszのような威厳のある言語で唱えなければならない」というのは思い込みでしかなく、逆に呪文が無意味というのも誤りであるといえる。
しかし、思い込みというのは人の精神に影響を与える。fvやszでなければ駄目だと本人が思い込んでいれば地方の言語で唱えても効果は弱くなる。
それにより「ほらやっぱり」とネガティブに捉え、ジンクスのように逆説的に古語の品格が上がっていったと考えられる。
――つまり、ということは、別にアルカでなくても良いのだ。
(そしてこのことは現実にはアンティスのアルカに対する優位性の象徴である)
・エーステ
→eesteの
[魔法]
の項
・錬金術
魔石学を前身とする学問。smで起こり、rdで大成。
→yuliant
・魔法工学
1200imごろから起こり、rdで大成。
→ragnalen
・魔晄学
既存の魔法の晄基配列を解析する解析魔晄学と、魔法として成立する晄基配列を人工的に作って調べる調合魔晄学に分かれる。
後者は24種のアミュレットを用いて魔法を調合していくことからそのように呼ばれる。
・獅晄
魔晄以外の幻晄を獅晄という。開閉の赫晄をも含む。
魔法学舎のレリーフが杖で、剣兵や格闘兵などの養成所のレリーフが獅子だったことから魔法以外を獅法といい、そこから来ている。
・解析魔晄学
ある握が持つ16のガレットをsmではエスタの子の名で表していたが、より素早く書けるようrdでは幻字を使って次のように示した。
tkxs
nvfm
dgpb
hycr
このとき1つ1つのガレットの入るtなどの位置をそれぞれt殻などと呼ぶ。
さて、これを閉式魔法とすると、その開式は光学異性体で次のようになる。
tsxk
hrcy
dbpg
nmfv
このうち位置が開閉のどちらにおいても変化しないものはt, x, d, pである。
1,3行目は動かないガレットがあり、2,4行目はみな動く。
2,4行目をその位置関係からそれぞれ天行、地行といい、1,3行目を頭行、胴行という。
また、t, x, d, p殻を静殻、それ以外を動殻という。
このうちtは幻晄線および晄基線の最も先端にくる殻であり、これを頭殻(トップノート)という。
頭殻はそのヴィードの顔であり、全体の性質を決定する、ということを解析魔晄学は明らかにした。
獅晄のトップノートを見てみると、1,2,3のいずれも現れているが、4だけは現れない。
解析の結果、魔晄のトップノートは必ず4になることが分かった。すなわちトップノートが4かどうかで魔法になりうるか否かという全体の流れが定まる。
残るはx, d, pの3殻であり、ここにそれぞれ1~4のガレットが入る。
このうちxとdは魔法の属性を決定する殻で、属殻という。
xは4以外の3種で、dは1~4の4種であり、都合12通りとなる。
xが2のときは相魔法といい、相殺関係にない魔法である。
xが1か3のとき(1と3は互いに透過値)は、相殺関係にある克魔法という。
相殺関係とは火と水のように、打ち消しあう関係のことである。
火の魔法を打ち消すのには水の魔法を使うのが効果的であることや、火の属性の魔物に水の属性がよく効くことは、これらの魔法が相殺関係にあることから来ている。
他方、ケアを害の魔法でかき消すことができないのを見ると、利と害が相殺関係にないことが分かる。また、土の魔法を相殺する属性がないことも経験的によく知られている。
解析魔晄学は、xが1でdが2の魔法は、xが3でdが4という魔法で相殺できることを明らかにした。
{1,2}と{3,4}はそれぞれの殻同士が透過値であることから属殻部分がヌル化され、魔法の骨子たる属性を失うために相殺が起こるのではないかと考えられた。
他方、xが2の場合、xが4になるものがあれば理論的に相殺可能だが、魔晄はトップノートが4で始まるため、xが4になることはありえない。
それゆえ相殺関係にない魔法が4種存在することになる。それが利、害、土であればこれまでの経験知に背かない。そしてそこに魔法光のない無属性が加わってちょうど4種となる。
組み合わせごとの魔法の属性は以下のとおり。
x,d属
-----
2,1利
2,2土
2,3害
2,4無
1,1闇
1,2水
1,3風
1,4聖
3,1雷
3,2邪
3,3光
3,4火
このうち2,4無以外は魔法光を放つ。これは可視できるため、kkでアルシアはこの光を元に魔法を11種に分類した。
アルシアは11種に分類できない魔法を無属性としており、魔法光の出ないことを特徴のひとつとしていた。
無属性が事実存在することは誰も否定しなかったが、無属性というのは他の11種より広い範囲を持ったものではないかと考えられていた。
しかし解析魔晄学は無属性が他の属性と同位であり、属性のひとつでしかないことを明らかにした。
なぜ2,4のみ特殊なのかを推理すると、tとx、xとdがそれぞれ互いに透過値になっており、これは他の組み合わせでは見られないことが何らか関与しているのではないかと考えられている。
・魔法の段位
さて残る静殻はp殻であるが、これは何の働きをしているのだろうか。
p殻はd殻で使ったガレットを除いたものから成る。その出現パターンは1~4の4通りである。
闇の魔法では1以外の3種、聖では4以外の3種というように、p殻全体の出現パターンが4通りあっても、各属性ごとには常に3種しか存在しえない。
解析の結果、p殻は重合、つまり魔法の威力に関与することが明らかとなった。
我々はfaiと聞くと子供でも使える簡単な魔法というイメージを想起する。その一方で、dialiivaと聞くと極めて強い魔法だと感じる。
しかしこれはおかしくないだろうか。faiもdialiivaも配列が違うだけで、1握のfaiは1握のdialiivaと同じ威力のはずである。
だが日常的にはdialiivaのほうが強く感じる。これはなぜかというのが長年の疑問であった。
魔法には段位があり、zgの段階で既に経験的に低位、中位、高位の3段階に分類されていた。
実はこの3段階という主観は的を射ていたということを解析魔法学は明らかにした。
d殻が2のとき、p殻が透過値の4の場合、その魔法は低位となる。
同様にp殻が3の場合、その魔法は中位となる。
そしてp殻が1の場合、その魔法は高位となる。
これ以外に組み合わせは存在しないため、3段階分類は魔晄学的に正しかったことになる。
段位の組み合わせは以下の通り。
d,p段
-----
1,2高
1,3低
1,4中
2,1高
2,3中
2,4低
3,1低
3,2中
3,4高
4,1中
4,2低
4,3高
・経常廃棄率
ところでこの段位というのは魔法学的には具体的に何を示すのだろうか。
これは経常廃棄率である。経常廃棄率とは、「重合の際に常に一定の割合のヴィードを廃棄しますよ」という意味で、これが少ないほど同じ数のヴィードを消費したときの重合度は高まる。
廃棄率については前述の通りで、人は100のヴィードを使っても100を重合できるわけではない。個人差が大きいし、その日の体調によっても異なる。
例えば100のうち80しか重合できないとしよう。ここで魔法の段位によって経常廃棄率が掛かるので、さらに「高位の場合は70まで重合できるけど、低位の場合は50までしかできないよ」というようなことが起こるわけである。
廃棄率は間違った晄基配列の握が捨てられることについての値である。集めた握の配列がすべて間違っていなければ、廃棄率は理論上ゼロになる。
一方、経常廃棄率は正しい配列の握のうち捨てられてしまう握の割合を指すので、原理が全く異なる。
つまり配列は合っていても漏れなく重合できるわけではなく、どれだけ効率よく重合できるかは最終的にこの経常廃棄率にかかっている。
しかしなぜこのような段位の差が生まれるのだろうか。それは静殻であるdとpの関係による。
d殻は魔法の属性を決定するが、p殻はそれを補佐して同じ配列を集めて重合する糊のような役割を果たす。
そしてd殻の透過値をp殻が持つ場合、重合の際に干渉が起こり、重合しにくくなる。
分かりやすく言うならば上司がdでpが部下だとし、透過値というのは反りが合わない状態を指すとした場合、dとpが透過値の関係にあれば、仕事の出来高である重合度は当然悪化する、という話である。
一方、中位と高位はどう決まるのだろうか。
そもそも1と3が透過値になるのは、これらが組み合わさって平板ガレットになるためである。
魔法学者はガレットには凹凸があり、1と3、2と4は互いに嵌りあうと考えていた。
他方、1と2、3と4はそれぞれ同方向のスピンを持っていると考えていた。ただしガレットを観測するのは不可能なので、あくまで説のレベルにすぎない。
そして同方向のスピンを持っているガレットの組み合わせのほうが経常廃棄率が低い。ゆえに1,2は高で、1,4は中となる。
先ほどの喩えを借りるなら、上司と部下が同じ方向性で仕事をしていると仕事の効率がよくなるのと同じである。
ところで、甘く撃ったdialiivaより本気のfaiのほうが強いことがあることも我々は知っているが、これはなぜだろうか。
これは単にこういう問題だ。先ほどの100の重合度を出せる人のケースでは、高位は70まで、低位は50まで出せるとした。
もし低位をマックス50まで高め、高位を30に抑えたら、当然低位のほうが強くなる。これが撃ち方による威力の違いの原因である。
なお、AさんとBさんの魔法の威力が異なるのも同じ理屈である。
そもそも重合できる限界値が100の人と500の人では威力が違う。500の人の本気の低位は100の人の本気の高位より強くて当然である。
・多段魔法
faiを前例で出したが、実はfaiやkeaなどは低位ではなく多段魔法という。
これは重合をしていくにつれ、ある時点で段位が変化する魔法のことである。
多段魔法はその属性の基本的な魔法に多い。
例えば火の低位魔法は{x,d,p}={3,4,2}であり、faiの初期の形もこれである。
ところがこれを重合していくと、ある時点で配列が{3,4,1}になり、中位になって経常廃棄率が落ちる。
そしてさらに重合を続けると最終的には{3,4,3}になり、高位となる。
これは非多段魔法では起こらない。低位は低位でしかなく、昇段しえない。
多段魔法のメリットは威力をどんどん高めることができる点である。
(FFでいうならファイア、ファイラ、ファイガ、ケアル、ケアルラ、ケアルガを想像すれば分かりやすいだろう。非多段とはテレポやメテオのように段階がないものと考えればよい)
しかしその反面、faiなどの多段魔法を初手から高位として放つこともできないのがデメリットである。
そのため多段魔法は高位魔法に比べ、やや時間のロスがある。
また初期の経常廃棄率が高いため、全体的な廃棄率は高い傾向にある。
・セレス
→seles
・調合魔晄学
ヴィードは33万種以上も存在するが、解析魔晄学の進歩により、魔法として成立しうる組み合わせは激減した。
頭行はtに4、xにもうひとつが入る。この時点で残るk,sは2通りである。胴行も同様に2通りである。
一方天地行には4!=24通りがそれぞれ存在する。よって全体の順列は2*24*2*24=2304である。
このうち半分は開式魔法になりうるもので、半分は閉式魔法になりうるものである。
よって魔法として成立するかを調べるには半分の1152でよい。
この1152通りが各12属性に存在するので、都合13824通り調べればよいことになる。
もともと33万通り以上あったものが1万程度に収まったことで、それまでは人間が使える魔法を分析するという帰納的な手法しか使えなかった状況から、今度は人間が知らない魔法をアミュレットの組み合わせで演繹的に作ることができるようになった。
33万通りもあれば人工的な魔法作りは難しいが、1万程度ならばずいぶん手間が省ける。このことが調合魔晄学の素地を固めた。
とはいえ1万は1万である。その作業は途方もないものであった。
・古代魔法の復古
調合魔晄学はアミュレットを用いて人工的に魔法を作成する学問である。
解析魔晄学の成果を受け、rdでは文献にしか残っていなかった古代魔法を復活させることに成功した。
神は一部の古代魔法を知っているが、自らのアドバンテージを維持するために人間には使い方を伝授せず、秘密にしてきた。
それを人が自らの手で復活させたということは、重合力はともかく人間が神の領域にtm以降初めて再び迫ったことを意味する。
・そして魔法研究所へ
調合魔晄学はそれまでの魔法学の集大成であり、魔法学の分野の中で最も新しく、すなわち魔法学最後の分野である。
rdで調合魔晄学が花開いて全盛を極めた魔法学であったが、1600imごろを境に衰退を見せ始め、ndでは人間の弱化にともなって急激に科学の独走を許していくことになる。
これが現代の魔法研究所に至るまでの魔法学史である。
魔法研究所はこれまでの成果をまとめることが実質的な業務である。
魔導師自体がほとんど残っていないため研究の進歩は難しく、さらにその学問を軍事的・政治的・経済的に使うことが難しいことからも、税金の無駄遣いと非難されることが多い。
そのためalの魔法学は困窮しており、位相幾何学の観点で見た四面体構造の合理性など、いくつかの発見を除いては成果を挙げられていない。
・魔法意味論
魔法にはもともと名前がついているわけではない。
魔導師の立場に立ってリアルに考えてみよう。新しい魔法というのは開式魔法が発動した結果生じるものである。
このときfaiのような見てすぐに意味の分かる魔法ならよいが、fortのように意味の分からないものもある。fortなど、目の前にヴィード死体がなければ何にもならない。
術者は新しい魔法に対面したときその効果を知らないので、おそるおそる実験することになる。
結局のところ何の効果があったのだかわからないことも多々ある。そのような魔法を意味が不明瞭な魔法という。逆にfaiなどは明瞭という。
こうして魔法の意味を解釈し、その効果や使用法を定めていくのが魔法意味論である。
魔法意味論の考え方自体は神代からあったが、体系化されたのは実践魔法学の下位概念としてであるから、sm以降である。
・意味素性
魔法の意味を示すもの。
魔法は味方にかける白魔法と敵にかける黒魔法に大別される。
faiは黒魔法であり、これを+verで示すと、keaは-verで示すことができる。
またfaiは火の属性であるから、+faiで示すことができる。
こういったverなどを意味素性と呼び、+-で示すことができる。
これを使えば魔法を意味の集まりで客観的に示すことができる。
また、faiとkeaのようなそれ自体では比較できない魔法同士を、素性同士を比較することで結果的に比較できるようになる。
faiの意味素性分析は以下のようになる。
fai={+ver, +fai, +senif}
senifは多段魔法である。
ある意味を持つか持たないかを+-で表す方法のほかに、有する意味そのものを記す方法もある。
これを併用するとfaiは以下のようになる。
fai={+ver, fai, senif}
+verを二値型の意味素性とすると、faiやsenifは非二値型ないし一値型の意味素性といえる。
なお、意味素性は言語学でも使われ、魔法学が言語学に輸出した概念である。
・魔法実験と魔法倫理学
魔法の効果を調べるにはまずエタンとアテンを用意し、両者に対する効き目の違いを調べる。
最初はエタンで調べる。次はアテンだが、人間を使うのは問題があるため、魔物を使う。次に人体実験を行う。
ただし魔物を使うのも魔人などから非難を受け、人間を使うのも事実上奴隷を使うことになり、いずれの場合でも倫理的な問題がある。
sm以降、魔法意味論の整備に伴って、魔法倫理学も発達した。
・mest
意味が不明瞭な魔法はたとえ魔法として成立しても効果が分からないということで忘れ去られることが多い。
fortのように不明瞭な魔法の効果が発見されることは稀である。
そんな魔法のひとつにmestがある。
mestは光の魔法で、これ自体は人間はfaiのごとく簡単に重合できる。
しかしmestは白い光が直線に飛んでいくだけなのがまずかった。
光の魔法で白い光が出るものは目新しさがまったくなく、むしろよくあるパターンである。従って照明魔法の一種程度にしか捉えられなかった。
また、エタンに当てても何も効果がないことも、発見が遅れた理由のひとつであった。
アテンに当てると効果が如実に出るが、だからといってその効果を解釈するのは難しい。それゆえなおさら発見が遅れたと考えられる。
さてmestをアテンに当てるとどうなるかだが、まず対象に当たると正面に跳ね返る。
その後光が8本の柱に分岐する。8本の柱はそれぞれ色が異なり、左が赤で右が紫である。
要するにプリズムの分光なのだが、色の推移がアナログではなく8個に分かれたデジタルである。つまり虹のようなアナログではなく、8色の光の柱に分かれるということである。
これだけ見たら何のことか分からない。
mest自体をたまたまアテンに当てた人はkk以前にもいたかもしれないが、最初にこの魔法の意味に気付いたのはkkのviizという魔法学者であった。
mestを色々なアテンに当てると、個体によって柱の長さが異なる。女性は赤側が長く、男性は青側が強い。
比較の結果、ヴィーズは左の赤側がヴィル、中間の緑側がノア、右の青側がユノの量にそれぞれ対応しているのではないかと考えた。
しかし光が3本でなく8本なのが不可解である。
実験の結果、例えば赤の柱は魔法をどれだけ使えるかを示し、橙の柱は魔法の重合力を示していることが分かった。
以下分析を続け、ヴィーズはこれまで4種しかなかった幻晄を8種に細分化し、envelenと名付けた。→envelen
内訳は赤側から順に赤nalfe, 橙caspel, 黄piales, 黄緑bcain, 青緑klenas, 青tilma, 青紫hanon, 紫milxeである。
mestを使えば対象の強さを調べることができる。戦力分析に役立つこととなった。
光の柱は個体によって長さがかなり異なる。そこで単位を決め、lunonを用いて何ルノンのように示した。
これによりmilxe2ルノンはmilxe1ルノンより2倍多いというように、ヴィードの多寡を数値で表せるようになった。
・navi
→navi
・魔法鏡
mestは多段魔法で、低位だと反射光が対象の目前まで行く。中位では中間、高位では術者の目前まで行く。
段位間は狭く、重合していくとすぐ高位になる。
光の柱をlunonで測ることにしたのはよいが、目盛りがない目算なのできちんと測れない。例えばきっちり23ルノンなど測りようがない。
そこで開発されたのが魔法鏡である。
月晄を浴びた泉の水をガラス板2枚の間に入れ、ガラス板を閉じ合わせ、水が漏れないようにする。
このガラスにmestを通すと空気中と同じく光が分散して8本の光の柱が出るが、このとき柱の長さが空気中より短く表示される。
この現象を利用して縮尺として使うのである。
水の量やガラスの厚さなどにより、縮尺は変化する。
空気中で実測1ルノンが等倍の1ルノンになるように製造したものを低位魔法鏡という。
縦の長さは1ルノン+上下の余白で、横はその黄金比で、縦より長い。
ガラスの縦方向に温度計のように目盛りをつけ、1ルノンをさらに100等分する。
縮尺を変えて1/10にしたものを中位魔法鏡といい、目盛り1ルノン分で実測の10ルノン相当(≒186cm)まで測れる。
1/100が高位魔法鏡で、100ルノン(≒1860cm、18.6m)まで測れる。
つまり空気中だと100ルノンにも及ぶ高い光の柱を魔法鏡だと手のひらサイズで表示でき、しかも目盛りで数値まで測れるというわけだ。
やり方としてはこうである。まず高位のmestを放ち、その反射光を手に持った魔法鏡に映しこむ。
すると相手のenvelenが鏡の中に表示され、目盛りで各要素の値を調べることができる。
なお魔法鏡はいったん光を受け取ると、次に使うまで光が残るので便利である。
むろん魔法鏡を使わずともmestだけで直感的には相手がどのくらいの強さか判断できる。
mestはどんなに重合しても一定以上の重合度では効果が変わらない。
重合度を最も上げてもおよそ113ルノンまでしか測定できない。
よって魔法鏡は1/100までのものしか製造されない。
100を超えるとカンストであり、高位を使ってもそれ以上は測れない。
魔法鏡はsmでアルバザードの魔法学者のkandiが発明した。
lunonはおよそ18.6cmで、これが魔法鏡のゲージの長さとなる。
ゲージは100等分されているから、最高が1ルノンで、最低が0.01ルノンである。
0.01ルノンは言いづらいのだが1センチルノンに相当する言い方が当時なかったため、kandiの名から取ってkandilとした。
つまり100カンディルで1ルノンである。
中位では1ルノンのゲージが実測10ルノンを指すので、1ゲージで1000カンディルを示す。高位では同様に10000カンディルを示す。
つまり1万カンディルで魔法鏡はカンストである。
当時は初期smで、人間には中位が使われた。
rdになると人間には低位を使用するようになった。成人男性の平均milxeは100カンディルで、空気中のルノンに直すと18.6cmである。
7歳少女の平均milxeは30カンディルで、成人男性の軍人は平均200カンディルである。
・減算測定
mestをかけた状態でヴィードを使うと、リアルタイムでゲージが目減りする。
これを利用して消費ヴィードを測る。
しかし廃棄率と経常廃棄率があるため、測りづらい。ではどうすればよいか。
たとえば魔法の場合、まず消費nalfeとcaspelの差を比べよう。caspelは重合の限界値である。これを10とする。
魔法を使うとcaspelが減少する。6減れば4残る。caspelはすぐnalfeから補充される。例えばnalfeが100だと6補充されて94になる。
caspelを6使ったうち、廃棄と経常廃棄を足した総合廃棄を調べることはできない。ではどうするか。
・琥珀測定
魔封石の琥珀に魔法を撃ち込む。そこにmestを当てると最初の魔法が飛び出す。
さらにそこに任意のヴィードを当てるとmestが飛び出す。これを魔法鏡で取り込むと、caspelの部分だけ表示される。
上のケースでは、その数値が5であれば1が総合廃棄量である。
・不可視光線
解析が発達したrdにおいてセレスの仕組みが解明されたころ、mestにも新たな動きがあった。
mestで不思議なのは、arma, seles, galeemを示す光がないことであった。これはrdで解明された。
実はmestの柱は8本というのは誤りで、それは可視光線でしかなかったのだ。
不可視光線も入れるときちんとほかの要素も分析されていた。
ただよく考えれば当たり前で、そもそも可視光線の波長域は狭いのだから、人間に都合よく毎度可視光線なはずがない。むしろ今までの現象が可視光線で助かったといってもよい。
なおselesは紫外線で、armaとgaleemは赤外線である。
このうち前者の発見は低位死神を用いた実験で明らかになった。
死神は長めの波長の紫外線(紫に近い波長だが人の目には見えない)が見えるため、mestを使うと紫の外が見える。
なお、後の学者はこのことからarmaとgaleemが逆の赤外線側にあるのではないかと予想し、科学と魔法学を組み合わせ、これらが近赤外線であることを明らかにした。
・暗領域とarvina
mestを使うと8本の柱が現れるが、それぞれの柱は下部が暗く、上部が明るい。
下部の領域を暗領域、上部を明領域という。
暗領域は圧倒的に短い。
smになると暗領域の意味が解釈された。
例えばmilxeが100の人の暗領域が3とする。このときに97kandilのダメージを当てるとその人はヴィード死する。残り3は削る必要がなく、また削ることもできない。
このことから暗領域は生命活動そのものに根ざしており、戦闘用ではないのではないかと考えられた。
ユノが多い人は日常的に活き活きしており、頭を使うとヴィルが減り、気をすり減らすとノアが減るなどといった現象は誰もが体感している。
ヴィードは戦闘に使うが、ユノ弾を撃ったからといって活き活きしなくなるということはない。
ということは日常生活に関与した部分は暗領域に支配されているのではないかと考えられる。
そこで神々と人間を比べてみると、明領域は天地ほどの差があるのに、暗領域ではほとんど差がないことが分かる。
むしろ人によっては神より暗領域が多いこともザラである。
考えてみれば神の高いnoaをもってすれば、神はいくら疲れても鬱にならないはずである。
にもかかわらずelsのような鬱な神がいる。また、ベーゼルのような肝を痛めた怒りやすい悪魔もいる。彼らの高いnoaを考えればありえない話である。
ところが調べてみるとどうも彼らのような神は暗領域のnoaが少ない。
こういった実例から、暗領域の役割が解明されてきた。
つまり暗領域は生活用で、明領域は戦闘用というわけである。
アシェットのフルミネアはyunoが多いが、活き活きというよりは大人しく物静かな女性である。そして調べてみるとやはり暗領域のyunoが少ないことが分かった。
明領域は先天性や戦闘経験や修行によって増減するが、暗領域は主に生活リズム、食餌、健康状態、運動習慣、呼吸、睡眠などによって増減する。
食餌は特にユノに効果があり、呼吸は特にノアに効果があるなど、得意分野はそれぞれ異なる。
結果、暗領域の増幅と安定は国民のQOLを下支えするという考え方が起こり、sm後期でlukletiaと魔法学が合わさってarvinaができる。
arvinaはさらにrdでリディアにより深められ、一般の国民にも紹介された。
その後alでミロクにより推進され、さらにアルバザード全土に広く普及した。
・自然回復
ヴィードは時間とともに回復する。空気中の透晄を取り込んで変換するためである。
低位魔法鏡で測れるレベルであれば、10分で1%程度回復する。よって1000分で全回する。
rdの人間であれば17時間程度で全快することになる。宿屋に泊まって翌日にはおおむね回復というイメージに沿う。
中位では100分ごとに1%程度である。10000分なので、166h、6.9dなのでほぼ1w。
弱い神や魔物や上代の人間がこれに当たる。1w寝込むので風邪のようなもの。
高位では1000分ごとに1%程度。100000分なので1666h、69d、2.3mかかる。
ここまで行くとふつうに回復するのは難しいのでaletが必要になってくるわけである。アレットを使えば10分で1%程度になる。
・ヴィード死からの回復
ヴィード死すると回復には10~100倍程度の時間がかかる。
しかし肉体的な死を迎えないのが特徴である。
例えば神がヴィード死すると10万分(ふん)の100倍で千万分(ふん)だとして、6944d、231m、19.2yほどかかる。
vsのころは神も悪魔も上代よりさらに強かったため、そもそも1000分ごとに1%ですらない。
そういった事情もあってcvなどのころは戦争が長引いたのだといえよう。特に人員が少ないcvではすぐ膠着ということもある。
上代になると人間は事情が変わる。
ヴィード死したまま放置すると肉体的な死を迎えるようになる。
期間はヴィードの総量に比例し、rdの人間で数日、上代の人間で数週間程度もつ。なお、寒いところのほうが長持ちする。
これにより古代魔法fortが作られた。神はもともとヴィード死から肉体的な死に移行しないのでfortが必要ない。
・魔法物理学
mestと魔法鏡でヴィードを定量的に捉えることができるようになり、それによってヴィードの効果を物理的に捉えることができるようになった。
科学の物理学と並行して成長した分野で、smで起こった。
・ユノに関する諸計算
http://cid-dd6eff55a81cbf67.skydrive.live.com/self.aspx/arka/yuno3.pdf
・加速膜斥力
アテンが1秒浮くのに使うハノンは個体によって異なる。重い個体ほど大きいエネルギーが必要である。
実験の結果、65ionの人が1秒浮くのにおよそ0.1hanon必要と分かった。これは0.1 kandil e hanonの意味である。
加速膜斥力は重力をGとすると、体重によらず中世の人間がおよそ1.2G、上代が1.5G、神々は2Gである。
アルデスは2Gまで出力できるので、0.2hanonで1秒飛べる。130ionの人間は1秒浮くにも0.2hanon必要になる。
65ionの男性が100milxeで10hanonの場合、どれくらい飛べるか。
飛ぶのはhanonを使うが、hanonは消費するとmilxeから回復するので、結局100hanon分飛べることになる。
65ionの人が1G使って浮くと、1000秒浮ける。同じく1.2G使って飛ぶと、833秒飛べる。それぞれ約16分と13.8分である。
すなわちrdの人間は全力で14分飛ぶとヴィード死する。
1.2Gということは、荷物を持ったら飛べない。
1.5Gでも自重の半分程度しか持てない。
2Gでも体重程度まで。しかも体重まで持つと浮くことしかできなくなる。
ゆえに神人貿易が栄えた。
・斥力の安全性
中世の人間の斥力は体重によらず1.2G程度である。
つまり30ionの人も130ionの人も同じ速度で飛べる。最大速度は同じである。
ただし消費hanonは軽いほうが少ない。
なぜ1.2Gで固定かというと、生命の合理性にある。
仮に人類が女性が飛べる程度のFを出せるとしよう。
このとき男性は浮けもしなくなるし、幼児は頭を天井にぶつけて死ぬ。このような生命では早晩滅ぶ。
ゆえに体重に比例するFを出せるようになっている。その比例の結果、出せる出力は1.2G程度に固定される。
体重が減ればジャンプ力は増えるかというと、筋肉も細るので飛距離は変わらないというのと似ている。
自分の質量*重力加速度9.8の1.2倍まで出力でき、これがFである。Fは体重(厳密には質量)に比例する。
同じ1.2G出力してもGの内訳はここではmaなので、mに比例して大きくなる。
なので130ionの人が1.2Gで飛ぶのは65ionの人が1.2Gで飛ぶのの倍のhanonがかかる。
・虚質量とユノの形
閉式蒼晄を体外に重合すると、hanonとして出すことになる。
このhanonは虚質量を持つが、hanonの形によって質量が変化する。
虚質量を持つ場合、主に形は2種類ある。
1つは薄い膜状のもので、飛行に使う。1つは弾状のもので、攻撃に使う。
膜の場合、極めて薄いシートになる。
これと加速膜との間に斥力を生じさせ、足元に噴射する。
この反作用により体が浮き上がる。つまりロケットと同じ原理である。
シートの面積は足元に出すなら自分の肩幅程度で、前に進むなら身体程度である。
虚質量は膜状だと消失が早くなる代わりに質量が大きくなる。薄いシートにも関わらず極めて重い値になる。
60kgの人間を浮かす場合、170tの虚質量を噴射すれば仕事率は1Wで済む。100Wでも1.7tである。
浮くだけでそれであるから、いずれにせよシートは非常に重い。
一方、弾にすると質量は極めて軽くなり、1ion程度になる。
・volk
通常1ion程度の質量を持ち、1lunon程度の直径を持つ。
重合度と体積は比例するが、y^2=xのグラフになるため、弾の直径は頭打ちである。
つまり人間と悪魔のvolkには天地ほどのhanonの差があっても、弾のサイズは大して変わらないということである。
質量には幅があり、人間では0.25ion~2ion程度である。
直径も同様で、スーパーボール~ボウリングの弾程度である。
一般的な値は質量が1ionで直径が1lunon程度である。
強力な悪魔の弾は最大バランスボールくらいの大きさになる。
弾の時速は50~200キロエルア(≒km)程度である。
つまり国道を少し遅めに走る車から、野球選手より何十キロか速い程度、あるいは新幹線程度である。
すなわち銃より遥かに遅い。目で見てよけられるレベルである。
(避けるや弾くといった動作がないと、ファンタジーバトル的にヴィード戦がつまらない)
volkにおけるhanonの多さはvolkの弾数を示す。volk一発一発は人も神もそう大差ない。
何が違うかというと連打率である。volkは連打してなんぼの攻撃なので、神々は大きな一発を放つのではなく、激しく連打を重ねる力があるといえる。
とはいえ神々のvolkは人間に比べて大きく速く強い。その上弾数も多いので、極めて強力である。
・vont
hanonの重合度に関せず熱は100度程度で一定。
(あまり高いと金属を人力で加工したり氷床を溶かしたり鉱山を手で掘れたりして便利すぎ、歴史が狂う)
重合はvontの幅(直径)とすなわち飛距離に関与する。
光なので直線に飛んでいき、徐々に消える。(かめはめ波のようなものをイメージすればよい)
人間のvontはせいぜい懐中電灯の灯りくらいの手のひらサイズの直径だが、神々のvontは刑務所のサーチライトくらいの直径があり、身体より直径が大きいこともある。
・avon
avonは熱も質量も出さないので、純粋にhanonによるtilmaおよびmilxeの削りである。
・vanos
vanosは原理はvontと同じである。
周囲に出すことで敵を一掃できる。周囲を完全に取り囲まれない限り、エネルギー効率はvontより悪い。
・tilmaとホメオスタシス
tilmaは防御以外に重要な役目を持っている。対アテンよりも対エタンで重要な特徴を持っている。
tilmaにはエタンから受ける衝撃を緩和する役目がある。その緩和率は衝撃の強さに比例する。
従って、軽く触れたくらいではほとんどそのまま衝撃がtilmaを通過するのに、爆弾並みの衝撃では高い緩和率が働いて衝撃をほとんど通さない。
銃弾や爆弾程度なら軽く突き飛ばされるか倒れこむ程度である。
だから悪魔に銃弾や爆弾は効かず、rdまでは銃火器の発達も遅れた。
そしてだからミロクやソーンは少なくとも起床時には暗殺することができなかった。
tilmaには衝撃を緩和して平生の自分でいるためのホメオスタシスの効果があるといえる。
これは宇宙で生まれたアテンには生きていくために必須の能力であった。
圧力が低すぎたり逆に高すぎたりする空間でも生きていくにはこの能力が必要で、だからこそ能力の高い悪魔や創世記の神は宇宙で暮らすことができた。
tm以降の神は宇宙で生きることもできるがアトラスでの生活を選んでいるあたり、創世記の神より弱いことが伺える。
特に身体を人間型に固定してからはますますアトラスでの生活に適応した体を持つため、ホメオスタシスに依存する割合が高まったといえる。
ホメオスタシスはtilmaによるもので、milxeによるものではない。
もしmilxeなら無意識でも発動するため、kkで少女リディアがソーンを暗殺したのは不可能なはずである。
tilmaは着地時にも使う。
そもそも空を飛べてもそのまま落ちたら死んでしまう。
着地時に足に出すことで衝撃を緩和できる。倒れるときは背中に出せばよい。だから吹き飛んで岩にぶつかっても死ぬことはない。
しかしヴィード傷を受けたショックで気絶して空から落ちれば死ぬ。ゆえに戦闘中に飛ぶのはリスクがある。
tilmaは腹にふっと力を軽く入れるだけで出すことができる。
着地や受身のような日常的に慣れたホメオスタシスの場合はほぼ無意識同然、呼吸のように半無意識に行える。
戦闘中で敵のヴィード攻撃を防ぐときに腹に力を入れればよい。
・霊力摩擦
重力と垂直に発生する力で、加速膜と薄い虚質量膜を使った飛行中に生じる。同じhanonであっても体でなくユノそのものを投げるvolkには生じない。霊力摩擦は肉体というアテンにしかかからないためである。
(要するにこれは前向きに進むときに後ろ向きにかかる抵抗力のことで、上下移動にはかからない。これがないと速度が加速度的に増え、地球上で横向きにロケットを飛ばすがごとき速度にまでなってしまう)
およそ50km/hで0.2G弱の力が生じる。
同200km/hで0.5G弱、1000km/hで1.0G弱。
この「弱」に空気の摩擦による抵抗を加えると「弱」が取れておおむねちょうどになる。
つまり50km/hで空気の摩擦を加味してほぼ0.2Gの霊力摩擦が生じる。
従ってrdの人間は50km/hまでしか速度が出せないということになる。
1.2Gを出して飛ぶと1G使ってまず浮かぶ。残り0.2Gで前進する。
0.2Gだと1秒に2mずつ加速する。速度が50km/h(=13.8m/s)に達するのは7秒後。
100milxeで65ionの人は833秒間1.2Gで飛べるので、約825秒ほど時速50km(=より厳密には50キロエルア)飛べる。
つまり原チャで13分半走るようなものである。
これは遅く見えるがそうでもない。本来人はせいぜい100mをせいぜい10秒程度で走る。10m/sである。しかも十数秒しか全力で走れない。その上地面しか走れない。
それに比べれば13.8m/sを13分半、しかも空を走れるなら、やはり便利である。
(ある程度便利でないと飛ぶ意味がないし、ファンタジー的に見栄えがしない)
かといってこれでは長距離移動には馬のほうがよい計算になる。
(馬より飛ぶほうが便利だったら馬の飼育もしないし、軍も騎兵がいらないし、砦もいらない。しかしこれらがないファンタジーは面白味に欠ける。適度に便利で適度に不便な飛行がちょうどよく、このくらいのものであろう)
なお、上代は時速200キロ、神々は1000キロまで出せたことになる。
rdでもアシェットは最終的に神レベルになるはずだから、1000キロは出せたことになる。
アトラスを40時間、2日以内で一周できる計算だが、こんなものだろう。
あまり一瞬で移動できると古代の何年も続く戦争や、rdでのアシェットの長旅が説明つかなくなってしまう。
・ヴィードの持続時間
出した弾や波は虚質量や虚熱量でできている。これらはおよそ4秒前後で消失する。
地面に着く前に消失することもある。ヴィル等についても同様である。
・幻晄武具
vontなどは4秒で消えてしまい、速度も200キロ程度までしかでない。
そこでアテンは武器を使った。
hanonをそのまま伝えるのはavonだが、これは人体to人体なので効率が悪い。人体自体のユノ伝導率がよくないからである。
そこで鉄を使う。剣にして相手を斬る。このときユノが相手に効率よく伝わる。
剣の刃は砥いでおく。刃が鋭いほうが接触面積が少ない。ということは相手からすればtilmaでガードできる割合が減る。結果、大ダメージになるためである。
矢の場合は錫を使う。鉄は駄目である。鉄の矢尻はエタンを狩るときに使う。
鉄はユノを伝えやすいので、手から離れた瞬間は鉄がユノで満たされても、手を離れるとすぐ空気中へ逃げてしまう。
そこで錫を使い、ユノを逃がさないようにする。近接武器と遠距離武器で金属を使い分ける。
また、木にもある程度ユノが蓄えられる。なので投擲棒、木のブーメランなども武器として使える。
投槍の場合は錫を使うが、木でも良い。
ヴィルの場合、手から魔晄を出すより銀を通したほうが良い。
銀のヴィルの伝導率が人体よりよいためである。
それゆえ魔導師の杖はたいてい銀製である。
ノアの場合もともと体内で働くので青銅には大して意味がないように思われる。
しかし格闘家が相手を打突した際、bcainが流れ込んでmilxeを崩すため、その際は青銅を使う意味がある。
ゆえに爪などはたいてい青銅で作られる。
・計量魔法学
厳密には計量幻晄学だが、慣例につきこのように呼ぶ。
ヴィードによるダメージ等を計算する学問。mest等により実現した。
・ダメージ算出法(ユノ)
防御量(vano):v
防御率(oksgal):o
防御係数(dolkalx):d
接触したhanon:h
接触したtilma:t
式1: v = o/100 * d
式2: t = h/v
・防御率
防御率は0~100%の変域。
体のどの部位で防ぐかなどによって値が変化する。
tilmaに対するhanonの割合が大きいほど防御率は高くなる。これは一見逆に見えるがそうでない。
volkもvontも重合を上げるほど直径は大きくなるが、その増え方は一次関数的ではない。
悪魔の弾でもせいぜいバランスボールくらいである。ということは重合度が増すほど体積がそれに見合わないので、密度が高くなるわけである。
一方tilmaは接触面に対して働く。そのため、防御率は接触面の表面積に比例する。
ゆえにtilmaとhanonの差が大きいほうが逆に防御率を高くする。
防御率は弱者に有利な数値である。
・防御係数
hanonに対するtilmaの割合が大きいほど防御係数は高くなる。これは感覚に沿うだろう。
要するにテームスをただの人間がいくら攻撃したところでほとんどダメージを与えられないということである。
これは強者に有利な数値である。これがなければただの平民でもかき集めればよってたかって悪魔を倒せることになり、歴史はアシェットを必要としなくなる。
防御係数はhanonとtilmaの比で決まる。
hanonに対してtilmaが1倍程度の場合、d=1である。以下表。
比:1倍、10倍、100倍、1000倍、10000倍
係数:4、16、64、256、4096
hanonが10でtilmaが100のとき、攻撃に対して防御力が圧倒的に強いことを意味する。このとき防御係数は4から16に上がる。
もっと防御力が強くてtilmaが1000もあったら、比は100倍だから係数は64になる。
・tilmaの凝縮
防御率が変化するのはtilmaを体の一部に凝縮できるためである。
tilmaは体全体を覆っているが、一部に凝縮できる。
凝縮しやすいのは手で、手は防御率最大100%まで高められる。
凝縮した場合、それ以外の部分がtilmaで覆われないため、無防備になる。そこに攻撃が当たると危険である。
手は凝縮しない状態で通常25%程度の防御率を持つ。
体は着弾を意識すれば10%程度、そうしなければ5%程度。
無防備だとむろん0なので、v=0となり、防御量は0となり、すべてが直接ダメージとなる。
・例
平均的なrdの成人男性のenvelenを以下に取る。
milxe:100
hanon:16
tilma:16
この人間を2人集め、攻守に分ける。
攻はvolkを16hanonで撃つ。
volkを重合するのに4kandil廃棄したとする。残り12である。
これが4秒間で消えるとする。2秒後に防に当たったとする。すると6当たったことになる。
1:防が手でガードした場合
v=1であり、h=6であるから、t=6/1=6で、防は16tilmaから6だけ搬出する。
結果
攻:-16hanon=-16kandil
防:-6tilma=-6kandil
防の勝ちとなる。
2:防が意識して体でガードした場合
v=10/100 * 4 = 2/5
h=6
t=h/v=6 * 5/2=15
16tilmaから15だけ搬出する。
結果
攻:-16hanon=-16kandil
防:-15tilma=-15kandil
防の勝ちとなる。
3:防が油断して体でガードした場合
v=5/100 * 4 = 1/5
h=6
t=h/v=6 * 5/1=30
30tilmaあればガードできるが、16しかないので防ぎきれない。
そこで16tilmaで何hanon防げるか計算すると、
16=x * 5/1となり、x=3.2である。
h=6なので、tilmaを抜けたhanonは2.8。
さて、tilmaを抜けた分であるが、これは1kandilの攻撃につき4kandilのmilxeを削る。よって11.2milxe削る。
結果
攻:-16hanon=-16kandil
防:-16tilma, -11.2milxe=-27.2kandil
攻の勝ちとなる。
4:防が無防備だった場合
h=6で防御がないので、6hanonがそのまま4milxeずつ削る。
結果
攻:-16hanon=-16kandil
防:-24milxe=-24kandil
攻の勝ちとなる。
3のほうが防御しているのにダメージが大きい。
しかしmilxeだけで見ると4のほうが損失が大きい。
tilmaの補充はmilxeからされるが、milxeを直接削られると体内の晄圧が落ちる。
晄圧が急落するとアテンは意識を失う。急落でない場合でもよろめきやくらっとするなどの症状が出る。
従っていずれの場合にせよ、milxeを急激に失うのはリスクが伴う。
4は3に対し、気絶のリスクが2倍以上高い。
・ダメージ算出法(ヴィル)
ユノの計算式と同じ。
ただし、v = o/100 * d * eとなり、eの要素が増える。
eはelmetで、属性値。属性値の種類は以下の通り。
属性名:倍率(小数):倍率(分数)
弱点:2.0:200/100
克性:1.5:150/100
異性:1.0:100/100
相性:0.66:100/150
半減:0.5:50/100
無効:0:0/100
吸収:-1.0:-100/100
強みと弱みはselesの遺伝子によって決定される。例えば火の属性の遺伝子は水の属性に弱く、火に強い。
遺伝子が同じ火でも極めて水を嫌う魔物とそれほどでもない魔物がいるように、同一遺伝子でも強みや弱みの程度は個体によってあるいは種族によって異なる。
特に弱い場合は弱点でダメージ2倍となり、そうでない場合は克性となりダメージ1.5倍である。
火から見て水が弱点と克性。火が相性と半減と無効と吸収。それ以外が異性。
しかしこれはあくまで基本であり、例外が存在する。例えば火の魔物なのに光を無効にしたり水を吸収したりといった特徴を持つものがいる。
従って後述の怪獣図鑑を読み込んで、各魔物の特徴をよくよく理解しておく必要がある。
吸収の場合、吸収作用を持つのはpialesのみ。
pialesを通過した分は吸収されず、ダメージとなる。
従って火の魔物を火で倒すこともできる。ファンタジーでありがちな「吸収させすぎると破裂して死ぬ」とは過程は異なるが結果は同じ。
なおヴィルの場合、hanonに当たるのがcaspelで、tilmaに当たるのがpialesとなる。
魔法の場合、ヴィードのダメージのほかに火や氷などの自然現象による追加ダメージがある。
追加ダメージはほとんどはアルヴェドのダメージである。これは対エタン防御で防がれるので、pialesでなくtilmaによってガードされる。
しかし熱いとか冷たいとか痛いといったダメージがすべて防がれるわけではないため、攻撃側はアルヴェド傷も期待できる。
これはreevなどを直接削ったり、士気の低下などの精神的ダメージを与えることにも貢献している。
・ダメージ算出法(ノア)
tilmaやpialesに当たるものがないので防御量は存在しない。
じかにmilxeを削る。ダメージはbcain*4で求める。
効率は良いが、ノア自体量が少なく、素手や爪などで当てねばならないため、難しい。
bcainは体の表面からほとんど出ないため、接触時に相手の体に移る。
この際bcainを20%ほど廃棄する。修行によっても異なる。
ノアは体を訓練すると効率が良くなり量も増えるので、鍛えると廃棄率は低くなる。鍛えなければ半分以上廃棄してしまう。
なお、爪などの武器のほうが効率が良く、廃棄率が低い。
・ダメージ算出法(アルマ)
じかにmilxeを削る。arma*16で計算する。
逆に防御側がアルマを使用した場合、自分のtilmaやpiales以前に働き、arma*16分のhanon, caspel, bcainを削り、arma*1分のarmaを削る。
従って1アルマの攻撃を1アルマで防ぐと、攻防ともに1アルマずつ失うことになる。
・魔物学
主に魔物の生態や特徴を調べる分野で、zgに端を発する。
人間は魔物よりも弱いため、効率よく戦うためにこれを分析する必要があった。
kkやsmで花咲き、rdでも華やいだ。
特に学者だけでなく旅人にも広く知られ、非常に実用的な分野であった。
selesの遺伝子、月光蟲など、魔法学の別の分野と組み合わせて論じられることも多い。
・怪獣図鑑
rdでそれまでの魔物学の成果を元に、さらにリュウらが自分たちの旅で得た成果を加えて図鑑にしたもの。
リュウ編纂で、絵はオヴィ、それとその後に加わったミルフが担当した。
魔物の特徴や属性、envelenのmest計測値などが書かれている。
怪獣図鑑はlansklelという。主に悪魔が載っているが、神なども載ることがある。
鋭い人はlinsでは?と思われるだろうが、ヒュート語で悪魔がlans。アルバザード人もよくlinsでは?と混同する。
・魔法の種類
lusia
・体格と幻晄
一般に幼児や老人は幻晄が少なく、若者は多い。子供は未熟なため少なく、老人は老いたため少ない。
思春期から30代までが最も強い。およそ体力と同じである。
ユノは一般に体格が大きく腕力があるほうが多い。
ただしユノはノアと違って体格だけで判断しづらいことがある。というのも、小柄なのに爆弾のように元気でユノの多い人もいるからだ。
結局のところユノははつらつとして元気な人に多い。元気な人は一般に運動が好きで体格も良い確率が高い。それゆえ体格が大きいほうがユノを持ちやすいと述べたにすぎない。
性別では男性のほうが多い。
ヴィルは知的な人に多い。神経が細やかで几帳面で繊細で傷つきやすい人に多い。鈍感な人には少ない。
また体格的には痩せ型で小柄なほど多い傾向にある。
性別では女性のほうが多い。
ノアは筋肉がしなやかで引き締まっているほうが多い。これはユノと違ってほぼ体の問題である。
一般にbcainは男性に多く、klenasは女性に多い。
アルマは心身ともにバランスの取れた人に多い。
ユーマの一族の中にはヴィードの量が非常に多い特異体質がいる。たいていは神の血が入っていることが多いのだが、彼らには身体的な特徴がある。それは華奢で動物としての力が弱い点である。
今までの歴史を振り返ると、筋骨隆々なタイプや太ったタイプは特異体質に存在しない。メテ然り、アルシェ然り、ソーン然り、アシェット然り、ミロク然りである。
その理由は恐らく幻晄の強さで生きていけるので腕力に頼らなくて済むからではないかと想像されている。腕力が不要であれば小柄や華奢であるほうが必要なカロリーも少なく、より少ない食糧で生存でき、合理的である。動物であれば体力的に弱ければ生き残れないのでしばしば大きいほうが有利である。
また寒い地域のほうが表面積を大きくして体温をできるだけ下げないよう体格が大きくなるが、それも強力な幻晄があれば生存を脅かさないので必要ない。寒い地域は食糧が乏しいので、温度の問題をクリアできればむしろ小柄なほうが生存できる。
幻晄のおかげで外敵や温度からは身を守れても、食糧とカロリー摂取だけはどうにもならない。ならば強力な幻晄を持っている個体は小柄なほうが有利であり、そのため歴史上の特異体質は皆華奢だったのではないかと考えられる。
・魔法分類学
zgに萌芽。sm,rdで大成。
効果:黒、白……→elfer
難易:難合、易合、無標は並合
属性:闇、水……
段位:上位、中位……
上記の分類項目に従って分類。
属性、段位、難易、効果の順に付ける。「闇の上位難合黒魔法」のように。
<余禄>
・魔法体
魔法体とは魔法性を帯びた物質で、ほとんどの物質がこれに当たる。
中でも特に魔法学で多用されるものを指すことが多い。
主な魔法体は以下の通り。
●金属系
錫:ユノを蓄える
金:ヴィルを蓄える
鋼:ノアを蓄える
鉄:ユノをよく通す
銀:ヴィルをよく通す
青銅:ノアをよく通す
銅:魔晄をゆっくり揮発させる
ホワイトゴールド:ヴィルを蓄える
レニウム:ガレットを遮断する
バナジウム:1を帯晄
ニオブ:2を帯晄
タンタル:3を帯晄
ドブニウム:4を帯晄
金銀鉄青銅(アミュレット):seejiを保存
白金:ヴィルを非常によく通す
コバルト:平板ガレットを蓄えてN極、ゼロガレットを蓄えてS極を持つ
チタンレニウム合金(テンペスト):1~4のいずれでも月光蟲を起こせる
鉛:銀などに混ぜることで放晄傾向を逆転
●鉱物系
水晶(石英):月光蟲を起こす
氷晶石:放晄傾向が弱く、脱晄に使う
菱沸石:崩月を起こす
蛍石:セレスを単蓄
●宝石系
サファイア:ユノの重合限界値を高める
ムーンストーン:ヴィルの重合限界値を高める
ジルコン:ノアの重合限界値を高める
ルビー:ヴィルを蓄える。また、放射性を持つ
エメラルド:複写性を持ったルビー
ダイアモンド:白金橋に使う
トルマリン:魔動回路に使う。ゼロガレットを白金に渡す
●動物系
牛革:ノアを通す
●植物系
琥珀:魔封石
木:ユノをやや蓄える。樫などの硬い木のほうが蓄えやすい。
●自然系
月光:月光蟲や崩月を起こす。ヴィルの回復を促進
日光:ユノの回復を促進
<カルディアの魔法と地球の魔法>
魔法は2種類あると思う。
ひとつは錬金術のような「何と何を混ぜるとどうなる」といったものや、呪文や魔方陣のように「こういった言葉や図形を書くとこのような効果がある」といったものである。
これは経験的、人文、文系、東洋医学的に感じられる。
ほとんどの魔法の市販書籍はこのタイプに思える。
そしてひとつは解析魔晄学のような理論的な分野である。
これは科学、理系、西洋医学的に感じられる。
恐らくアルカを見て面白いと思うような人は魔法理論もこちらのほうが好きなのではないか。どちらかというとセレンに感性が似ているように思える。
カルディアの場合、どちらも備えているというのが恐らく特徴だろう。
地球の場合、だいたい前者しかないものが多いように思われる。
後者の理系的なほうを備えた魔法学というのは見たことがない。
が、魔法は人気のある分野なので、ウチが世界初とも思えない。
ただ、カルディアの魔法が世界初な面もあると思う。
それは土台となる歴史、世界観、言語が詳細にわたって備わっている点である。
<魔法学ができるまで>
地球では魔法学は21年に主にセレンが作った。
それまでのヴィード論などを統廃合し、設定を大幅に加えた。なお、それまでのものはリディアが主幹である。
セレンは子供のころから魔法が好きで、機械物には興味がなかった。魔法物のアニメばかり見ていた。
(今でも機械物は苦手。戦争物も苦手。動物が人間のように振舞う(DBのウーロンのような)物も不気味に感じてしまって苦手。だからディズニーが非常に苦手。それゆえrdでも動物っぽい人はあまり出てこない。ただし人に猫耳がついた程度ならなぜか逆に好きになる)
FFとDQ世代なので、魔法の大まかなイメージはこれらのものである。特にSFCまでのFFが幻想の原風景である。
魔法学自体はアプリオリだが、影響は受けている。影響と流用の違いは言語論等で述べているので別途参照のこと。
影響は例えば「ゥリーデャ」という名前の少女がいつの間にやら「リディア」で正式になっている点などに現れている。多段魔法やMPのnalfeなども影響が色濃い。
ちなみにメルはdolmiyuの草案を読んで、FFの影響を残したいのだというセレンの思惑を一瞬で見抜いた。それくらいセレンはこのゲームに傾倒していたといえる。
しばしばアルカは影響すら排他しようとする傾向があるのにここだけは残そうとしたのは、きっとそれだけ心の中の思い出を占める割合が大きいのだと思う。
セレンの魔法好きは少し異常だった。
小6のころ、「魔法使いになるために」というような感じのタイトルの本を読んだが、それを読めば本当になれると思って買ったのがポイントだ。
なれると思って期待したが、そのような内容の本でなくがっかりした。よく覚えていないが小説だったかもしれない。
子供文庫みたいなもので、新書くらいのサイズで、白い表紙の本だったような気がする。
中2のころ、「魔術の事典」というような文言の入った長いタイトルで、オレンジと茶色の間の色の表紙の本を買った。5000円くらいして、分厚い本だった。
今の子供はどうだか知らないが、当時の子供が買うようなものではなかった。
しかしこれも期待はずれだった。錬金術的なことや呪文的なことしか書いてなかったからだ(と思う)。
要するにセレンは魔法の仕組みを知りたかったのだ。dolmiyuでいうガレットのような量子論や解析魔晄学のような「魔法の仕組み」そのものを知りたかった。
経験論でなく自分で仕組みを知って演繹できるようにしたかったのだ。
また、アイテムというより魔法を撃つほうに興味があったことも落胆の原因のひとつだ。
簡単に言えば、「ポーションの作り方はどうでもいいから、とっととファイアの撃ち方を教えてくれ!」と思っていたわけだ。
それ以降、どことなく魔法の本というと東洋医学的な経験知の集合というイメージを持ってしまった。まぁ実際書店を見るとそうなのだけれども。
それで、自分で作るときは科学のような理論にしたいと思った。
めぐりめぐってそれが今の魔法学に繋がったような気がする。
リディアも魔法好きな空想少女で、だいたいセレンの周りにはこの手のタイプが多い。
だが女の子のリディアはセレンほど理論立てて魔法を考えようとはしなかったので、21年にセレンに主幹を譲った。
<魔法は存在するか>
魔法は残念ながら使えないわけだが、使えないことは存在しないことの論理的な証明にはならない。
このことを子供のころ理解していなかった気がする。
「使えないのは単に地球に使える要素がないからではないか?地球でなければ存在するのではないか?」
そういう考えがヴィード論を生んだ。ヴィードさえあれば、少なくともその世界では理論に基づいて魔法が使える。
ということは、地球に限定しなければ魔法は存在するのではないか――などと考えた。
子供のころの夢を叶えるために人は大人になるのだと思っていた。少なくとも年を取るために大人になった人などいない。
魔法学を作ってみてカルディアが見えてきた。子供のころのぼんやりとした幻想風景が理論だった明瞭なものになり、すっきりした。
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