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人工言語学

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動詞の自他はどう決まるか

人工言語制作・運用的には動詞の自他をいちいち覚えなければならないのは煩雑に思えるが、実際自然言語を見ると、動詞の自他を覚えなければならないのが通例である。
動詞の自他のややこしいところは、言語ごとに異なっていて覚えづらい点である。

では動詞の自他はどう決まるのかというと、これが法則性がないので困ってしまう。
ただ、全く自他の根拠がないかというとそうでもなく、単語の歴史を紐解けば理解できることもある。

例えば多くの日本人は学校英語をやっていて、marryが他動詞であることを習い、不思議に思ったことだろう。日本語の「結婚する」は「太郎を結婚する」と言えないからだ。
ではなぜ「結婚する」は自動詞なのか。これは元となった中国語にまで遡れば理解できる。
「結婚(jie2hun1)」という熟語自体が、「婚姻を結ぶ」という「動詞+目的語」の語順でできている。つまり「結」の部分が既に他動詞的意味合いを持っているのである。
従って「太郎を結婚する」と言うと、「太郎を婚姻を結ぶ」のようになってしまい、目的語を2つ取る違和感に襲われる。
「結婚する」を「婚姻を結ぶ」と置き換えれば、「太郎を婚姻を結ぶ」ではなく「太郎と婚姻を結ぶ」というほうが自然ということが分かるだろう。となれば「太郎を結婚する」ではなく「太郎と結婚する」が自然だと理解できる。
実際日本語でも中国語でも「結婚(する)」は自動詞である。

一方、羅(Latin) maritareから古仏(Old French) marierを経て入ってきた英marryは他動詞である。
面白いことに、英仏で「結婚する」はどちらも他動詞なのだが、英marryが結婚相手を目的語に取れるのに対し、仏marierは「結婚させる」という使役的な意味を持つ。
つまりIl a marié sa fille à un avocat.(彼は娘を弁護士と結婚させた)のように使う。
仏marierは代名動詞se marierとして自動詞のようにも使える。Il s'est marié avec une actrice.(彼は自分を女優と結婚させた→彼は女優と結婚した)のように。
同じ他動詞でも英仏という異言語間で文法的な語法が異なることがあるので、この点も注意である。

さて、このように、異言語間で動詞の自他が違うことはよくあるが、その単語の語源まで遡って調べればなぜ自動詞なのかあるいは他動詞なのかということが分かることがある。
逆に言えば、動詞の自他というのはそうやって歴史的に徐々に決まっていったものであるということである。
となれば人工言語制作者としては、そういう通時的な事情を自言語に付与する必要があるわけで、共時的な作り方だけをしていては不十分であるという結論に帰結する。

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