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フルミネアの月

1993年4月8日

　魔族の国ヴェルシオンの空軍大佐であるヴァーナが再びアルシェの末裔であるセレンを狙ってアシェルフィ小学校を襲撃。
　セレンはリディアとオヴィと共闘し、これを再び追い払った。
　戦闘中、リディアとオヴィの額に紋章が浮かび、彼らもまたアルシェの末裔であることが分かった。

2013年4月14日


　セレンはフェリシア大学の朱塗りの橋の上に一人でいた。
　池を眺めながらため息をつく。

　十年前、恋をした。
　十年後、誰がこんなことになっているとあのときの自分たちは思っただろう。

　彼女はもう新しい道を見つけ、自分はまだ止まった時の中に生きている。
　殺したかった相手が別人になってしまい、もう殺す相手がいなくなってしまった。

1993年4月15日

　ヴァーナを追い払ったセレンたち。
　リーザは授業で現在の戦況について語った。
　イムル1498年に起こったヴェルンサールの悲劇により、1500年に西アンシャル連合国とヴェルシオン・ベルガンド両国との戦争が勃発。後の百年戦争である。
　1590年には悪魔テームスが復活し、テームスの子らである悪魔たちも復活。

　開戦からヴェルシオン・ベルガンドの魔枢軸は飛空艇を使って徐々に勢力を伸ばし、ジンディア山脈を占領し、そこを大動脈として西アンシャル連合国の諸都市を占領していった。
　悪魔の復活により魔枢軸の戦力は急激に増強。侵略の手を早めていった。
　アルバザードもまたアルシアなど北西部から侵略され、魔枢軸は今や首都アルナ付近まで手を伸ばしている。

　戦況を聞かされたセレンらは戦々恐々とした。
　よもや連合国の戦況が百年でここまで悪化していたとは。

　リーザは魔枢軸からアルバザードを守るには戦力が必要だと述べた。それにはアルシェの末裔の力が使える。
　アルシェの末裔は1人の司徒と13人の使徒から成る。リーザはルシーラの紋章が浮かんだセレンを司徒に任命した。同時にリディアを第一使徒、オヴィを第二使徒に任命した。

　目下自分たちに必要なのは残る使徒の末裔を探すことだ。しかし使徒が世界のどこにいるのか見当も付かない。だが使徒は窮地に追い込まれると紋章を浮かべ、尋常ならざる力を発揮する。そのような人間は当然人づてに有名になるだろうから、世界中を旅して目撃証言を追っていけば見つかるのではないかと考えた。というよりも、そのような地道な手段しか方法がなかった。

1993年4月16日

　リーザは現アルバザード王であるアルバ十世ことヴレヴラント王に謁見できるよう王府に上申。
　アルシェの末裔発見の吉報に王府はすぐ動き、昨日の上申にもかかわらず即日謁見が許可され、上申の翌日である今日謁見することとなった。
　先月ヴァーナを追い払ったのがアルシェの末裔だという噂はアシェルフィからアルナへ渡っていたようで、その評判が功を奏したようだ。

　リーザはセレンとリディアとオヴィを連れ、ヴレヴラント王に謁見。
　事情を説明すると、ヴレヴラント王はセレンらに通行証を発行し、世界各国を旅できるよう手配した。
　ヴァーナはセレンらアルシェの末裔を狙ってくるので、セレンらがアシェルフィを離れることで自然とアシェルフィへの侵攻は弱まる。
　しかし依然としてアシェルフィはアルナへ至る要所なので、ここの防衛は重要だ。前回ヴァーナの飛空艇を迎撃したにもかかわらずあえなく小学校へ侵入させてしまったという失態があるため、軍部は今まで以上にアシェルフィの防衛に注力しようとしている。

　原文