ランジュ – 2011年11月1日

※nias注:旧版からの移植記事です。

2011年11月1日

孤児院フランジェにはリディアのほかに4人の孤児がいる。彼らは苗字も分からず、かろうじて名前を覚えているだけだった。皆、リーザやミーファが拾ってきた孤児だ。

一人目はixtal。年のころは14, 5に見える。が、実際いくつなのかは分からない。いつも黒紫の服を着ている。性格は大人しい。
イシュタルは数年前に雨に濡れていたところをリーザに拾われた。なぜかたまに古語が出てしまう。不思議な子だ。

二人目はmilha。11歳。魔族ディーレスと精霊のハーフだ。猫耳を持って生まれたせいで虐められてきた。魔族なのに気弱で泣き虫で怖がりな子だ。
しかしミルハのポテンシャルは強力なので、過度の恐怖を感じると無意識に周りのものを魔力で粉砕してしまう癖がある。
耳に極度のコンプレックスがあるため、常に帽子をかぶっている。頭に手が触れそうになると恐がる。撫でようとしても嫌がる。

三人目はkonoha。見た目は16歳程度。凪人の名を持つが、れっきとしたロゼットで、神と人の混血児だ。
コノハはロゼットにも関わらず、あるものを司って生まれてきてしまったため、天界から追放されてしまった。
人を幸せにすることに生き甲斐を感じる。けなげで純粋で天真爛漫。しかし呪われた血のせいで、親切心がいつも裏目に出てしまう。

四人目はfealis。17歳で、人間の捨て子だ。ユベールの達人で、ミルハを妹のように可愛がっている。
フェアリスは芯の脆いところがある。親に捨てられたトラウマが消えず、拒絶されることを異常に恐れている。

彼女たちは新顔のリディアを仲間の輪に入れようと声をかけた。だがリディアは眠り姫のようなぼーっとした表情を返すだけで、会話にならなかった。
少女らは残念そうにリディアと話すのを諦め、花を愛でるかのように遠巻きに見るようになった。

この日セレンは孤児院の手伝いをしながら少女たちの経歴や特徴を改めて頭の中で整理した。
リディアがどんな過去を持っているのかは分からない。だが経歴の暗さで言えば彼女たちは引けを取らないはずだ。
そんな彼女たちが明るく元気に振舞っているのだから、いつしかリディアにも笑顔が取り戻せるのではないかとセレンは考えた。

「少し寒くなってきたな」横に座っているメルに言うと、彼女は「寒くなってきたね」と答えた。
その言葉が暖かく感じられた。

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