だが2005年12月19日にエスタは突如セレンを捨てて出て行った。
セレンは最初事件に巻き込まれたのかと思って警察に駆け込んだが、やがて弁護士を通して離婚してほしいという手紙が来た。
彼女は妊娠していた。セレンは子供のことを相談させてほしいと頼んだが、一切話し合いには応じてくれなかった。
きちんと別れ話をしてほしいと言ったが、弁護士を通じての冷たいやりとりしかしてくれなかった。
結局セレンは捨てられ、彼女は子供を産んで第2の人生を歩み始めた。
リーザらはそれ以来塞ぎこんで精神安定剤に頼って生きるようになったセレンを憐れんでいた。
2011年にセレンが子供の顔を見たいのでエスタの居場所を知りたいと言ったとき、リーザはすぐに調べてやった。
今セレンは彼女の居場所を知っている。彼女は知られていることを知らない。
離婚の本当の原因は分からない。彼女の言葉は信用できない。
ただ言えることは、セレンは離婚当時、彼女との性格の不一致ですでに彼女に愛想を尽かし、もう愛しておらず、冷たく当たっていて、彼女もまたセレンに嘘の笑顔を浮かべていたということだ。
彼女は今看護師になるべく学校に通っているようだ。
息子のアルシェは6歳になった。元気に学校に行っているようだ。5歳の時点でルティア語の数が言えたり、1/3などの分数が分かったようで、自転車も乗れるようだった。
離婚自体は自分に問題があったと思っている。ただこちらを不快にさせ続けた彼女にも問題はあると思っている。まぁそれでも総合的に見れば最初に二人の恋愛を裏切ったのは自分だ。
彼女は最初に「私そんなに頭良くないよ。勉強が出来るだけ。期待しないでね」と言った。セレンは「過度な期待はしない」と約束した。だが彼女は想定外に頭が悪かった。そしてトロかった。セレンはそんな彼女に苛つくようになっていった。
約束を最初に破ったのはセレンだった。だから離婚は仕方ない。だが子供のことを何も相談をせずに勝手に決めたこと、父親である自分を徹底的にコケにし馬鹿にしたこと、子供を奪ったこと、本人と手紙でもメールでもいいから別れ話がしたいと何度も長文で懇願したのに無視し弁護士を通して冷たい対応しかしなかったこと。
許せなかった。
結婚していた頃、ある日セックスが終わって彼女の顔を上から見ていたとき、ふと「いつかこの女が一番殺したい相手になるかも」という予感がした。