2015/11/15 seren arbazard
【コンテンツ病(contentism)】
自分の人工言語や人工世界を使ったコンテンツを躍起になって作るないし作らせ名声を得ようとすること。ARTに多い。典型的な罹患者は2003~2013のセレン。
一般に、コンテンツが多いことはユーザーの増加につながり、人工言語や人工世界の知名度や評価を高める。また人工言語史においては「初めて人工言語で○○した」(たとえば小説やマンガや映画などを作ったとか)は確かなマイルストーンであると同時に動かぬ証拠となるため、early adaptorにとっては自分の名や自分の人工言語や人工世界を歴史に残すチャンスである。さらに、コンテンツの存在は教材になったり、その人工言語の使用実績やコーパスになる。そのため、コンテンツを作ること自体に弊害はない。
しかし、功を得ようと焦り、人工言語が本業であるのに絵や音楽やプログラムなどと広い範囲に手を出し、それらに時間を取られてしまうと、人工言語の制作そのものが停滞してしまう。
作者が一人でいろいろな分野のコンテンツを作ると広く浅くになるので、各コンテンツの質が落ちる。そのため専門家に外注すると、今度は費用がかさむ。
【商精反比(Inverse Proportion between Business and Elaborateness:IPBE)】
人工言語や人工世界の作り込み(精度)と商用可能性がしばしば反比例する現象のこと。ARTにおいて顕著。
【コンテンツ病】にかかると最終的には詰む。作者一人でプロ並みに様々な分野のコンテンツを作ることはできない。かといってコンテンツの質を求めると外注になり金がかかる。そこで作者はこう考える。「どこかの企業が自分の人工言語や人工世界を使ってくれないか」と。ところがよく作りこまれた人工言語や人工世界はすでにそれら自身が一つの作品になっていて、企業が手を加える余地が少ない。特にARTでIMGな人工言語の場合、背景世界がすでに作られており、企業の作りたいコンテンツと矛盾しがちである。しかも本業が人工言語の作者の場合、一般人にとって魅力的な、つまり売れる人工世界を作ることは難しく、商用に適さないことが多い(cf.『紫苑の書』)
一方、コンテンツ力を持っている企業は逆に人工言語を作るノウハウがない。そこでconlangerに依頼すればよいのだが、精度の高い人工言語を作るのは時間がかかる。企業としては締め切りや予算があるため、人工言語ビギナーのようなインスタント人工言語を社員か下請けの人間が作ることで済ませる。企業の客は一般人であるため、人工言語の精度にはこだわらない。そのため、インスタント人工言語で十分ということになる。例として、Final Fantasy Xのアルベド語などが挙げられる。
なお、比較的人工言語や人工世界の精度が高めで商用にもなった例としては、指輪物語のエルフ語やスタートレックのクリンゴン語が挙げられるが、こういう例は作品が最初にあって人工言語はおまけで、売れた後に人工言語が作りこまれるパターンが多い。
>IPBE
英訳の言い回しを見て思いましたが、IPBEの記事でトールキンの言語を挙げた後に「作品が最初にあって人工言語はおまけで、売れた後に人工言語が作りこまれる」と書かれていますが、トールキンは最初から言語をメインで作っていた例なので敢えてここで挙げるのはそぐわない気がします。というかそもそもこういう順序性のある例というのがそれほど多いのか疑問に思いますけど。