人工言語学事典記事:【設計的と発生的】

人工言語学事典記事:【設計的と発生的】

2016/6/10 seren arbazard

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イラストレーターに人の絵を描かせると、大抵の場合、絵の教本に従って、人体の骨格から考え、それに筋肉をつけていく。そうしてやがて皮膚や髪などができ、目が入る。このようなものの作り方は設計的といえる。人が何かをデザインするときは大抵骨子となるものから順に設計的に作る。人工言語も同じで、音、文法など、ジャンルに分けてその人工言語の骨子を設計していく。
翻って現実の生き物はどのように進化してきたかを考えると、生物は元々単細胞であり、後に多細胞になった。この時点では各細胞に役割分担はない。しかし進化にともなって細胞に役割分担ができるようになり、生物は多様性を獲得するようになった。最初は今でいうミミズのような無脊椎動物だったが、一部の細胞が固くなって骨を形成するようになると、魚のような脊椎動物が生まれた。骨や臓器や肉が最初からあったわけではない。多細胞生物は元は均質な細胞を複数持つだけのものだった。均質な細胞が分業化し、あるものは骨になりあるものは肉になった。こういう進化の過程は発生的である。言語でいうと、自然言語は発生的である。
人工言語は本来設計的なもので、自然言語は元来発生的なものである。ふつうイラストレーターは設計的に人を描くが、人は元々発生的である。生物の進化と全く逆のベクトルでイラストレーターは人を「創って」いる。人工言語屋も同じで、音や文法などジャンルに分けて設計している。「人工言語を自然発生させる」という発想をふつう人工言語屋はしない。
RELは「人工言語を発生させる」人工言語である。RELは世界ができて宇宙ができて星ができて知的生命体ができて言語が生まれるという手順で、すなわち発生的な手順で作られる。REL以外の人工言語は設計的で、RELは発生的といえる。生命の進化、イラストレーターの物の描き方、人工言語。これらはすべて無縁ではない。2016年現在の科学では人類はRELを作ることはできないが、そのような人工言語が存在可能であるということは現段階で予想できる。

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