リアルファンタジー小説『アルディア』

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2012年3月9日

 メルの部屋のベッドに腰掛け、セレンは彼女に問いかけた。
「針金をある比率で半分に折り、円と正方形を作る。このとき面積の和が最小となるときの比率はいくつだと思う?」
 セレンは手におびただしい量の式を書いたメモを持っていた。代数で定石通りに解いたのだ。
 メルは一瞬だけ目をチラッと右上にやると、「π:4」と答えた。

 あまりの早さにセレンは驚いた。
「なんで分かった!? いくらなんでも暗算早すぎだろ。というか暗算できるほど単純な式じゃないぞ」
「暗算以前に代数で解いてないよ」
「じゃあどうやったんだ?」
 するとメルはさらっと答えた。
「円が正方形の内接円になるとき、面積の和が最小になる。よってπ:4」
 セレンはぽかんと口を開けたまま放心した。


1992年3月19日

 リーザの寺子屋。リーザは生徒に算数を教えていた。
「3-2は1ですが、2-3がいくつか分かる人はいる?」
 生徒たちは首を捻った。ある生徒は「引く数が引かれる数より大きいので引けません」と答えた。
 セレンは手を挙げると、「0に1足りない数」と答えた。
「よく分かったわね。それをマイナス1というのよ」
 リーザはパチパチと手を叩いた。

 左の席に座っていた少女ファミイがセレンに問いかけた。
「セレンさん、どうして分かったんですか?」
 彼女はアシェルフィからリーザを慕ってここに通っている学生で、セレンがこの寺子屋に来たときからずっと隣の席だ。
「6歳くらいから知ってた」
 少し離れた席のリディアがそれを聞きつけ、「セレン君、記憶ないんじゃなかったの?」と尋ねた。
「なぜかそのくらいから知っていたことを覚えているんだ」
「そうなんだ……?」首を傾げた。


 原文

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