四人称代名詞elを再帰で受けるには

ところでアルカの質問なのですが、el(四人称)を nos(再帰人称)で受けることは可能でしょうか。
可能だとして一般的でしょうか。一般的でないとしたら、どう受けるのが良いでしょうか。
また、elnos などの表現は可能ですか。
ご指導お願いします。経緯は下のやり取りのとおりです(上が新しい)。

faras dıl ſ @Faras_Tilasos
@na2co3_ftw @Kohelang 文法的には lu でも nos でも可能ですね。ただ nos にすると、el を nos で受けるというのがあまり一般的でないので一瞬戸惑います。ここは間をとって lunos とするのが個人的には一番しっくりきます。
炭酸ソーダ ſ c ſ lcl φ ıȷ@na2co3_ftw
@Kohelang el ser vil mal le nos en ser kos total. の方が正しいかもしれません。lu の方が僕はしっくりくるんですが、最近変更された文法規則なものでよくわかりません。
Yooza ( よーざ ) Koheluin@Kohelang
@na2co3_ftw いえいえ、自然なアルカのほうが目指していたところですので、添削ありがとうございます。
炭酸ソーダ ſ c ſ lcl φ ıȷ@na2co3_ftw
@Kohelang el ser vil mal le lu en ser kos total. el okt sen rens hot kon total rens. すいません。アルカ的な自然さを目指して弄ったら原型なくなっちゃいました…。
Yooza ( よーざ ) Koheluin@Kohelang
les ser mal l’ans en ser et vilxan olta total kos. rens hot et okt sen olta ans okt kon rens. どうやったって無理なんだ、知らない記憶を知ることは。言葉で伝えても、伝わるのは言葉だけ。

ちなみに、文は BUMP OF CHICKEN『宇宙飛行士への手紙』の歌詞の翻訳のようです。

四人称代名詞elを再帰で受けるには、lu, nos, lunosの順で自然ですが、論理的にはnosで受けるべきとも思います。
elnosは効いたことが無いですが、形態論・意味論的にはあり得る語なので登録を。

ランジュ – 2014年3月8日 エトアの箱 2/2

「運用はどうするの?」
セレンは机の書類を返す。
「アルナ電力が反物質を使った発電所について考察しているようだが、論文中のBEP、損益分岐点を見ると難しそうだ。リスク問題もある」

「もし反物質発電所がアトラス中にできたら……」
「家庭の光熱費も産業コストも下がる。貧困国の暮らしも良くなる」
「乗り物のエンジンにも使える?反物質を動力に変える装置を小型化するのは難しくない?」

セレンは椅子に腰掛ける。
「唐突だが、神々やアシェットは人型の生物なのになぜ宇宙で戦えた?」
「mirok握膜でしょ」
「複層式の握膜だな。sapli膜などから成る」
「例えば体内の圧力を地上と同じにして宇宙で戦うには」
「ron膜を張って膜内に元の気圧と同じ圧力をかける」
「呼吸に関しては」
「サプリ複合膜はzom膜などから成る。例えばzom膜は酸素を作る。膜の厚さを変えて酸素や窒素の比率を調節して大気を模す。エルトの物質生成術と原理は同じだ。戦闘中は空いた穴を修復する。もぎ大気は28度。真空に空気と熱は逃げない。アルシャンテはこの原理ではないか」

「あと神々が宇宙で話せたのは」
「elis膜でしょ」
「fo膜とtes膜から成る。神が発した音波は球面状に広まり、tes膜で電波に変換され、単一指向性を持つ。球面状に広がった電波が相手のfo膜に入ると音に戻る。アンプなどもいらないスグレモノだ」
「vl以前に携帯電話やラジオを体得していたと」
「vlの科学が宗教を肯定したわけか」
「たまに神の声を聞いたという人がいるけど、無意識にfo膜を張ったのかな」
「地上まで届くか、周波数は合うか、神がアルフィでもtes膜を張ってるか、アルフィからここまで届くかなどの問題もあるがな」

「魔法工学で握は再現できても量や圧の問題で神の魔法は再現できない。人が科学に移行するわけだわ」
「それでも魔法研究所などは税金の無駄遣いと言われながら細々と研究を続けてきたがな。反物質の応用も」
「え、その話は本に載ってなかったよね?アレイユでお上が出した実績というとガロアとかしか知らないけど……」

セレンは紙を差し出す。
「設計図?」
「反物質カーのな。箱内には反物質の塊。壁面にはgalt膜。異界の門のアーチと同じ握で、物質の移動を防げる。下面にはatoeがかけてあり、塊は上面に押されている。下面を刺激すると上への重力が増し、塊が強く押される」
「壁面はガルト膜なので対消滅は起きないわけね」

「上面にはミクロの穴」
「正物質の空気が入って対消滅するでしょ」
「なので穴にはヴァンガルディ膜を。不思議に思わないか?門の向こうはユマナで、正反逆の世界。なぜ境界面の門で対消滅が起きない?」
「言われてみれば……」
「あの門には正反物質の移動を防ぎ、かつ通る物質の電荷を逆にする機能がある。死神はただの門番だ」
「ふむ……」
「ヴァンガルディ握は前者の機能を果たす。あの門は複層式だ」
「つまりこの穴は異界の門の再現?」
頷くセレン。
「ガルトとの違いがわからない」
「ガルトは物質の移動阻止。ヴァンガルディは正反物質間の移動を阻止。どのみち箱外の正物質の空気が入ることはない」

「あぁ…。てゆうか門が二層式とは驚きだわ」
「いや、四種の膜から成っている。門の彼我で特定の力やエネルギーを遮断ないし吸収する複合膜のメルティア膜と、ヴィードのやり取りをしないヴィード膜の計四種」
「メルティアの召喚ゲートも同じ仕組み?」
「ガルト膜の有無を除いてな。箱上面の穴はヴァンガルディ膜とメルティア膜。アトエで塊が強く押されると圧力で反物質の一部が二膜を通る。門が歩行の推進力で通れるのと同じだ。反物質は膜の向こうの正物質の空気と対消滅。その際のエネルギーはメルティア膜のおかげで箱内には来ない」

メルは設計図を見る。
「反物質が気筒内で内燃し、その圧力でピストンを動かす。車や船のエンジンの原理ね」
「穴の面積や塊への圧力を変えて対消滅させる量を調節できる」

「魔法研究所がこんなことを……」
「立役者はアルシェ=アルテームスという研究者だ。アルナ大卒で、アレイユでユマナの研究をしていたらしい」
「よくそれて食べていけたわね……」
「なんせ親がアルタレスのハイン=アルテームスだからな」
メルは「え、あのフェンゼル=アルサールの乱の!?」と目を見開く。

「でもさ、握なんてたくさんあるのにどうやって特定したの、そういう膜」
「メルティアにゲートを分析させてもらったりと、色々だな」
「どこにそんなコネがあるのよ……。来てくださいで来てくれる相手じゃないでしょ」
「アルシェの奥さん、レイン=ユティアとかいったかな、元アルナ大のレンスリーファで、今はディアクレールの編集らしいが、娘時代にメルティアと知り合ったんだと」
「……は?」
「まぁそれでいろんな握が見つかったんだが」
「え……じゃ何……ユマナって……実在するの?」
「みたいだな」
メルは額に手を当てる。現実をにわかには受け入れがたいようだ。

「ちょっと待って。じゃあなんで反物質カーは実現してないの?」
「メルティアのゲートってすぐ消えるだろ。安定して存在させるには魔圧が足りない。人工的にも無理。で、頓挫。研究所はこの結果を公開しなかった。メルティアにコネがあることがバレる内容なので、研究者の安全を考えてな」
「ならなんでお兄ちゃんが知ってるの?」
「そのアルシェの娘がシオン=ユティアっていってな、今年14歳のアルナ校生で、うちのサイトのユーザーなんだよ」
「あ~……」
「ネカマだったんでオフ会で会って驚いたよ。俺が現代魔法学の民間大家だから興味を持ったらしい。口外しない約束で研究について教えてくれたんだ」
「それで本に載せなかったのね。まぁどのみち机上の空論だし」

「それなんだがな。やってみたらできたんだよ、膜とか」
「……生成したの?」
「装置のサンプルも作った」
「そんなの車に積んだら危なくない?事故とかテロとか」
「箱の壁面は外から順にガルト、ヴィード、メルティアだ。ガルトがあるので物理的に穴を開けるのは不可能。エネルギーが通ると反物質の体積が増えて常に反物質が気筒に漏れる恐れがあるのでメルティアでカット。二膜は握膜という網なので別の握は網目を通れないが、ガレットなら通れる。ガレット銃で箱内にzom握とか形成されたら対消滅するのでヴィード膜を二膜間に挟む。この膜は網目の隙間もガレットの通過を許さないからな」

「上面の穴に正物質を流し込んだらメルティア、ヴァンガルディを通って対消滅よ」
「だな。なのでメルティアの上にガルト弁をつけておく。弁は下からノックされると側面のスリットに収納され、反物質が通過すると共に戻る。上から正物質が流入することはない」
「上からメルティアの各々の膜の透晄を照射し、メルティアを溶解。同じ容量でヴァンガルディ透晄でヴァンガルディ膜を溶解。そしてzom握を照射して対消滅。……どう?」
「お前よくそう言うの一瞬で思いつくよな。なので、ガルトとメルティアの間にヴィード膜を入れてある」
「ふむ……」メルは指をトントンする。

「そもそもガルト膜をガルトの透晄で破って物理的に箱を壊して対消滅させればいい」
「ガルトには透晄が効かないんだよ」
「何その中二的キャンセル能力!」
「キャンセルしてるわけじゃない。透晄無効化なんて魔法学的に無理だしな。ガルト握と同じく物質移動を防げる握がある。互いに一箇所しか配列が異ならない、エルトガルトとサールガルトという、異性体みたいなものだと思ってくれ。エルトの透晄を極限まで近づけるとサールに変わり、サールの透晄を近付けるとエルトに戻る性質がある。異界の門のアーチの材質になっているくらいだからよくできているわけだ。なおガルト弁があるのでヴァンガルディ膜は取る」
「その箱、お兄ちゃんにしか作れないわけ?」
「あぁ」
「壊せるの?」
「無理だ」
「じゃあその箱を車から盗めば最強の盾じゃん。そのテロどう倒すの?」
「なので魔圧を少し弱めに膜を作り、魔圧を維持する台座に載せておく。台座は車に備え付ける。台座から箱を取ると魔圧が弱まり、メルティアのゲートと同じく握が膜の形を保てなくなる。外側から順にな。一番外側のガルトが崩壊すると台座から正物質が射出され、ヴィード、メルティアを通って対消滅。だがメルティアにより箱外に被害はない。その後ヴィード、メルティアも崩壊。箱を崩壊できなきゃ産廃の問題も出るしな」

「台座から正物質を射出しなくても、流入した空気で自然と対消滅しない?」
「真空中で作業されたらどうするよ」
「そっか……。じゃあ台座ごと持ってけば盾として使えない?」
「台座やそれを変える部分に強い力を加えると箱が外れるようになっている。嫌がらせで車の燃料をダメにされるリスクはあるが、手の届くところには置かないし、車分解されたらもはや燃料云々の話じゃないしな」
「事故ったら燃料はだめになる?」
「箱代より修理代を心配した方がいい」
「膜や台座は大量生産できるのね?」
「最初少しとあと定期的にちょいちょい俺が働くことになる人力な世界だな。工学技術にも頼るが。下面のメルティア膜からは垂直膜を除き、アトエは台座に設置する。ここまで発展するとエトアのネーミングから逸れる。台座も箱から外すと膜が崩壊する。乗り物以外に発電所もだから、最初ちょっと多めに働かんとなあ」

「ふむ……。異界の門や召喚ゲートにはヴィード膜があるのよね。通ると体は通れるけど、ヴィードはごっそり門前に残していくことになるわけか」
「あぁ。ユマナにヴィードがあれば向こうのヴィードを体内に補充すればいいが、俺のヴィード場仮説に従うとユマナにはヴィードがないだろうな。逆にユマナからこっちに来れば人によってはヴィードを持てるかもな。アテンならだが」
「異世界の少年セレン……」
「さてね」
セレンは箱をくるくる回す。

「これが実用化されれば……」
「発電所も小さく、車のエンジンもコンパクトになるな。電気代も安くなる。アルナ電力の構想よりいい」
「目処はあるの?」
「ウチのユーザーに車屋の技術デスクがいるんで投げようかなと」
「シオンって子に許可は?」
「取ったよ」

メルはため息をついた。
「その子のこと、私にも内緒にしてたんだね」
「メールでやり取りするタイプのユーザーだし、大事なことはオフでしか話そうとしない子だからなあ」
「現代魔法学が専攻なの?」
「まさか。趣味だそうだよ。将来はアヴァンシアン入所を希望しているらしい」
「その子って……」
「あぁ、ラヴェルヴォルトが起こると考えている派閥だよ」
「お兄ちゃんやメルと同じだね」
「んー、俺はシオン君に近いかな」
「君?」
「あ、ネカマだったんで、その頃のクセで」
「あぁ……」

「411年にアヴァンシアンが月面基地シェラザードを建て、412年にシェラザードはディミニオン型の物体を発見し、アトラスへ送るも、テロ組織ランフィオーレに一体を奪われた。413年にアヴァンシアンとランヴィオーレはアトラスで柩晶を発見。アヴァンシアンのものは現在施設内に安置。で、お前の論文読んだよ」
「アンジェリカの試論について?」
「お前なんで数学科なんだよ。工学行けよ」
「だけどディミニオンが再来したら対抗手段はそれしかない」
セレンは背を反らす。
「お前、なんつーかエヴァ的な想像してない?」
メルは顔を赤らめる。
「だ、だってユリウスのときは実際そうだったわけだし!」
「うーん、俺やシオン君はそう考えてないんだよなぁ。化物が来て人型兵器で決戦!――とかさ」
「じゃあディミニオンは現れないと?」
「いや、現れるだろ。でも来るんじゃない」
「どういうこと?」
「なんていうか……逃げる」
「……逃げる?」
「確証がないんでまたの機会にな」と言ってセレンは手を振った。

ランジュ – 2014年1月23日 1/2

2014年1月23日

懲役30年でヴェナカルカへ。
誰一人として出て行った後の仕打ちに関しては彼女も悪かったと認めず、誰もこちらの悔しさを理解しなかった。
むしろ苦しんだ8年に関し、長々と逆恨みして異常と言われ、罪が重くなった。

世間の無理解が許せない。

しかしここは酷い。熱いし寒い。医療も。特に歯は痛くても何ヶ月も待って抜くだけ。体は痛いし同室からの虐めはあるしカルカンも人間扱いしてこない。何かあっても病死と片付けられそうで不安になる。
こんなところで30年。今すぐ殺してくれ。苦しめて生かされる。

今日はメルと付き合った日だ。
裁判にはネットユーザーしか来なかった。手紙も面会もない。見限られたのだろう。

夜、痛みに耐えていたら、面会だと言われた。
こんな時間にありえないと思って面会室に行くと、ドアの向こうからリーザが入ってきた。
「先生!?」
「久しぶりね」
「どうしてここが?どこにいるかは調べられないはず……」
「まぁ、ね。じゃ、帰りましょうか」
「帰る……?」
「あなたの事件は世間の耳目を引いたから、すぐには出せなかったのよ」
「出す?」
「そ、このまま幻京橋へ戻るわよ。あ、帰りは運転してね」

思わず立ち会いのカルカンを見る。苦々しそうな顔をしている。
「え……だって僕、懲役30年ですよ?」
「あなたは特別なのよ。せいぜい8ヶ月もいれば十分」

ランジュ – 2013年6月30日

2013年6月30日

退院と同時に殺人未遂で逮捕。
彼女と一緒に逝けないなら恋人時代の彼女の言葉を守れない。これでいい。
だがその後刑事から死亡を告知され、目の前が真暗になった。自分は死ねなかったのに咎のない彼女は逝ってしまった。
もう彼女はいない。帰ってこない。そういう風にしてしまったのは自分なのだ。

取調室で聴取が行われた。
正直に彼女の言葉を出したらどうなるだろう。
「そんなの相手が好きなうちだけの話だろ。そんな言葉本気にしてたのか?」
そんな風に、彼女のあの時の想いは汚される。
心ないものによって、あの頃が踏みにじられる。

捨てられて逆恨みしたのだと説明した。それ自体は本当だし、周囲も納得するだろう。
しかし動機はどうするか。2011年から計画していたのを突発的に見せるにはどうするか。
4月に息子の登校を確認させたときに気付かれたら、計画を以前書いた小説の5/21に前倒しするつもりだ。
だがイレギュラーがなかったので十年目の6/27を迎えてからの計画となった。

計画が知られれば背景にある「彼女の言葉」もいずれ引き出される。そうなると単なる逆恨みが動機でないとバレる。計画は知られてはならない。

単なる逆恨みによる犯行という説明の動機付けとして、前日に母親であるリーザに暴力をふるい、出て行かれ、生活を頼っていたので生きていけなくなって動転してやったと述べた。彼女を突き放したことが動機づけに使われることになるとは。
今後知人と連絡が取れても嫁と母に捨てられ悔しいと伝えよう。

だが生活ができなくなったのと8年前に離婚した妻を刺すのとは繋がりがないと整合性を指摘された。
犯行時には貯金もあったから立て直しもできたし、最悪生活保護がある。生活ができるのに生活ができなくなったからでは説明がつかないと言われた。
慣れない嘘は吐くものではないなと感じた。
結局逆恨みで押し通し、マスコミにもその情報が渡った。

ランジュ – 2013年6月28日 2/2

自分で刺しても死にきれないことが多い。痛みで深く刺せないためだ。
そこで安定剤とラム酒で鈍磨させる。電車が使えなかった場合に用意しておいたものだ。
しかし飲んですぐパトカーが走ってきた。ここにいては怪しい。通りに戻る。
急がねば。薬が回る前に早く。しかし道が混んでくる。ここで刺しても無駄だ。
意識が朦朧とする。混んでいるので事故でも死ねない。
死なせろ、死なせてくれ。

双子の進路

2/17記
「獣医」のウィキの刷り出しと、それになるにはどうすればいいかのまとめ的なものを送っていただけないでしょうか。
ユルトがなりたいと言っていたのでどうなるのかなと気になっているのです。
日本の情報でいいです。
あとウィキは仏版も送ってくれると嬉しいです。

2/26記
獣医セーレ!
娘が「ゆうちゃんが獣医なら動物の看護師になろうかな」と言ったので
「頭が良いので創薬したら?動物の薬は人のほど良いのがないだろうし」と言ったら
「そうする」と言ってたのですが、創薬って薬学部からの製薬会社ラボのコースですか?
動物薬の創薬についてどんな進路や勉強をするのかご面倒ですが調べていただけないでしょうか。
日本の情報でいいです。
出所時、娘が18で、日本なら大学生で、その時何か支えてやれないかなと思って。

あと前回と今回の子どもたちに関するやりとりをBBSに上げてもらえませんか。
見ててくれないかなと。

ランジュ – 2014年3月8日 エトアの箱 1/2

seren注:前倒し記事です。

2014年3月8日 エトアの箱

「セレン革命では世界中の生活水準をアレイユのアルバザード並に引き上げる」
「70億人全員を?資源問題はどうするの?よく『牛肉やビールなどの贅沢品を減らせば貧困国の食糧事情が~』とか言うけど十分じゃないし、水産資源等には限度がある。第一エネルギー問題をどうするの?石油資源をアレイユ並に世界中で使ったら、あっという間に枯渇するし、それ以前に短期的に半端ない高騰を招くよ」
「石油は石油製品の生産には使うが、エネルギーとしては使わない。依存からの脱却だ」
「じゃあ原子力?アルバザードは80%が原子力だけど、プレート境界にある凪等では地学的に無理よ。アルバザードだって原発はリスキーだし。まさか太陽熱とか夢見てないよね?」
「原子力はリスキーすぎる。それに核分裂のエネルギー効率も2%程度だしな。理想のエネルギー効率は言うまでもなく100%だ」
「100%……?ありえない。何らかのエネルギーを――」
メルははっとした。
「――まさか」

「そう、反物質。1gで20キロトンのエネルギーになる。TNT2万トン分だな。初期の原爆に匹敵する」
「キロトンってあのね……兵器でも作るつもり?」
「エネルギー利用ならジュールを使うべきだったな」と笑う。「たった1gでアルナ中のエネルギー2、3日分になる。原子力と違って放射線もないしな。対消滅時、全ての質量が光子に変わるのでエネルギー効率は100%というわけだ」
メルは頭痛を抑えるように手をやる。
「それはいいけど、どうやって反物質を作るのよ」

「枢軸原子核研究機構、通称月の雫。レスティリアにあるお馴染みの機関だが、ここがかつて反物質粒子を生成したろ?一から説明しようか。まず加速器を使って粒子を光速くらいまで加速させる。直径8km、円周28kmほどの巨大な円形の装置さ。管の中では磁石がオンオフを繰り返し、粒子を加速させる。2つの粒子を逆方向に衝突させる。そして――」
「私相手に科学の授業?これだから教師って人種は。あのね、月の雫が反物質を作ったのはだいぶ前。なんでそれが実用されてないと思う?安く大量に作り、安全に運用できなければ意味がないからよ」

「月の雫はランジュで多くの反物質を作れるようになったが、現代魔法学を使えばもっと簡単かつ大量に生成できる」
「なんですって……?」
「そもそも反物質は電荷が逆なだけで、それ以外は正物質と何ら変わりない。なら正物質の電荷を魔法でひょいと変えてやればいい」
「ひょいとって……そんなの誰ができるのよ」
「俺」
「は?」
「現代魔法学と科学の知識があって神以上の魔導士ならできるだろ」
「……作れるの?」
「実はもう実験した。西ダマスク病院ってあるだろ?」
「あぁ、院長と息子が死んでニュースになってたとこ?」
「あそこはヒドくてさ。不必要な投薬や検査はもちろん、不要な手術までして利益を上げてる。手術だってさ、例えば心臓でバイパスで済むケースなのに政治的経営的な理由で開胸にしたりさ。指揮したのは院長だ。それと、アマリーシャ病院って覚えてるか?」
「えっと……かなり昔だよね。健康な女性患者に嘘ついて子宮摘出して儲けてたとか」
「そこの院長が西ダマスク院長の息子だ。アマリーシャは潰れたが、今平気な顔で西ダマスクにいるよ」
「へえ。でも院長も息子もこないだの爆発事故で亡くなったし…って…実験…?まさか…」
セレンはにやっと笑う。
「あ、あれの犯人、お兄ちゃんだったの!?」
「法が裁かないなら俺が裁くまでだ。人誅だな。ま、声明を出さずに一件やっても無意味だがな。実験ついでに悪人を退治しただけだ」
「家を反物質で爆破とか……」
「なに、生成したのはほんの千万分の一グラムだ」
「それでキロトンとか物騒な単位を使っていたわけね。ただ、エネルギー利用をするには保存できないと。反物質を生成しても崩壊してしまうんじゃ……」
「逆極性の真空中で陽子を抽出すればいいだろ」
「そしたら正物質も抽出されるじゃない」
「磁場を使って正物質を左に、反物質を右に篩うんだ」

「ときに極性について思うことがあるんだよ。エルトとサール、陽と陰、正物質と反物質。万物は対で成り立っている。なら『世界』の対は?」
「……世界もペアになってるってこと?」
「お前、ユマナの存在って信じるか?」
「オーディンでセレンがやってきた世界という認識ね」
「カルディアとユマナって双子の宇宙じゃないかと思うんだよ。この世界で反物質と呼んでるものがユマナでは正物質と呼ばれてるんじゃないかって思うんだ」
「つまりユマナだと正物質は右に、反物質は左にってこと?」
頷くセレン。
「おかしいでしょ。10歳だった少年セレンが30kgだったとして、その質量の反物質――ユマナでは正物質――がカルディアに来た瞬間、対消滅を起こしてアンシャルが吹き飛ぶよ」
「うん、それでな、異界の門を管理するヴァンガルディや世界を維持するメルティアの能力ってそこなんじゃないかと思うんだ。つまり、現代魔法学的に言えば、魔法で60兆個の細胞――子供だからもっと少ないか――その全てを構成する物質の電荷をひっくり返すってこと」
「極性を反転させて異世界へ帰らせる……?」
「彼らはその理屈を理解してはいないだろうがね。ヒトが理解せずとも食物を消化吸収できるように」

メルはほうっと息をついた。
「閑話休題。生成した反物質をどう保存するの?」
するとセレンは机の引き出しから透明な箱を取り出した。中では小さな球が浮いている。
「試しに1g生成して保存してみた」
「ばっ!」
メルが慌てふためく。「馬鹿じゃないの!?それが落ちたらアルナが消し飛ぶよ!?」
「大丈夫。中は真空だ。これはエトアの箱という。atoeの音節――というかモーラをひっくり返しただけだ。その名の通り重力の魔法がかけてある。上下と左右から逆方向の重力をかけて重心で安定させている。ミソは容器の壁面だ。ここにも魔法がかけてあり、万一球が壁面に接触した際、球の負荷が反転して正物質に戻る。生成と保存の問題は解決したろ?」
メルは引きつった笑みを浮かべる。

ランジュ – 2013年6月28日 1/2

2013年6月28日

セレンは車でエスタのアパートに来ていた。
懐にはナイフを2本差してある。
彼女は子供を学校に送ってから駅に向かう。
8時6分に彼女が子供を連れて出てきた。

「これが人生のターニングポイントだ」という声がした。

父母を失ったら息子はどうなる?息子のためにも生きるべきか?
――何万回も考えたことだ。

車を出て行く。
彼女は右手で子供の左手を繋いで歩いていた。
最後の最後まで迷い……斬った。

息子はこちらに気付くと、母親を見捨てて驚いた顔で走り去った。
せめて最後に一度抱いてやりたかったが、向こうはそれを望むまい。

車に戻って走らせる。
調べておいた線路に向かう。電車に飛び出せば確実に死ねる。
しかし高架下にパトカーがいて、予定地が使えない。別の線路を探して走る。
だが土地勘がないしナビにも線路がない。
予定を変えて、もう一本のナイフで死ぬことにした。
人気のないところを見つけて刺さないと搬送されて助かってしまう。
車を流す。
パトカーがサイレンを鳴らして走る。もう第一報が入ったか。
小道を見つけ、人気のないところで停まる。

ランジュ – 2013年6月27日 3/3

その頃は離婚の不安もなく、なぜそんな考えが浮かんだのか不思議だった。

確かに彼女のことは憎い。殺したいと言ったり文の中で殺したりといったこともあった。
だが実際彼女の態度の悪さが死に見合うかというとそれは行き過ぎだ。
では怪我させるならどうかというと、人を傷つけて自己嫌悪はしてもスッキリはしない。
なら慰謝料を貰えるとしたらどうかというと、金の問題でもない。
結局欲しいのは彼女からの謝罪なのだ。「出て行った後のことについては私もあなたに色々酷いことをした。許して欲しい」と言ってくれれば「離婚自体は俺が悪いんだし、そっちも子供抱えて大変だろう」と返せる。
その言葉が欲しくて弁護士やネットを通じてアプローチしてきたが、彼女は逃げるだけで、一切話し合いには応じてくれなかった。

セレンは2008年に研究や仕事のしすぎで体を壊した。
潰しの利かない大学院に就職氷河期世代。年も第二新卒を超え、大した職歴もない。
未来は暗く、体は悪くなる一方。
それでも研究があったので耐えてきたが、ついに研究もできない体になってしまい、人生の意味を失った。
2011年に活動20周年を迎え、死ぬ準備を始めた。
2013年6月27日、彼女と結ばれて10年の記念日に終わりにしようと考えた。
それまでに研究成果を一般人でも分かるようにブラッシュアップしてコンテンツを作り、自分の名を歴史に刻もうと考えた。

誰と逝くかは2003年から決めていた。彼女だ。
恋人時代、彼女はこう言った。
「私セレンがいないと生きていけない」
「セレンが死ぬなら私も死ぬ」
そうだな、じゃああの時の君の言葉通り、君と一緒に逝こう。そう思った。
「そんな言葉、相手のことが好きでなくなれば無効」だ?「あの言葉もこの言葉もなかったことに」?そんな都合の良い話があるか。
そんな軽い気持ちで大事な言葉を吐いて人の恋心を掻き立てたというのか。
日和見で自分の言葉を反故にするくらいなら、はじめから大言壮語を吐かなければいい。勝手なのはどちらだ。

メルはそんな大言壮語を吐いていないし、息子には息子の人生がある。
思い当たる相手は彼女しかいなかった。

夕方借りたレンタカーで風花院に戻ったセレンはリーザの部屋へ行った。
「あら、こんな時間に珍しいわね。どうかしたの?」
首を傾げるリーザに無言で近寄ると、セレンはいきなり彼女を殴りつけた。
悲鳴を上げてリーザが倒れるが、セレンは手を止めない。
騒ぎを聞きつけたメルたちが駆け込んできた。
「お兄ちゃん、何やってるの!?」
しかしセレンは暴れ続ける。
「ミーファ先生、先生を連れて逃げて!」
「逃げるってどこへ!?」
「どこでもいいからアルナの外へ!」
メルたち6人がセレンにしがみついて止める。ミーファはリーザの手を引いて走って行った。それを見てセレンは動きを止める。
「一体何があったの?去年も先生に手を上げたことあったよね?喧嘩でもしたの?」
「いや、先生との仲は良好だよ」
「じゃあなんで!?」
「去年は先生がどの程度で家出するのか知りたくて測ったんだ。今回のために一度実験しておく必要があったからな」
「実験……?」
「俺は2008年以降稼ぎが少なく、先生に食わしてもらってただろ。先生は俺の母親で、俺のこと可愛かったからな」
「そんな人をどうして殴るの!」
「俺のことが可愛いまま俺を失ったら、先生は悲しむだろ。だから俺を捨てさせなければならなかった」
「失うって…何よ」
セレンは立ち上がると部屋を出た。

「待って!どこに行くの!?」
不穏に思ったメルはセレンの腕にしがみつく。セレンは辛そうな顔で振り向くと、「お前も俺を嫌いになってくれ」と言って頬を打った。
メルは倒れこみ、頬を押さえた。
「嫌いになんて……なれるわけないじゃない!」
セレンは言葉をかけずに風花院を去った。