「難しい」の語法について

2015/2/25 seren arbazard

明鏡第二版には「事態を処理したり実現したりすることが容易でないさま」とあり、不可能とは書かれていないが、実際日本人は無理ですと断るときにやんわり「難しいですね」と言うことがある。KAWAMURA(2006)によれば、15分かかるところタクシーに乗って10分で着くかと運転手に聞いたところ難しいと返されたとき、92%の英語母語話者が不可能ではなく容易くないという意味にとらえたとのことである。
すなわち英語話者にとって難しい=交渉次第という図式が頭にある。難しさと不可能性は相関関係があるので、難しいで不可能を示すのは意味的メトニミーと言える。日本語はこのメトニミーを採用しているが、多くの言語はしない。国際語にはこのメトニミー語義を採用しないべきである。自言語において難しいにこのメトニミーを与えるかはオプションである。

参考文献
Akihiko KAWAMURA (2006) Problems in incorporating pragmatics into EFL lexicography. In The JACET Society of English Lexicography (Ed) English Lexicography in Japan pp168-181. Tokyo:Taishukan Shoten

天候動詞の語法について

2015/2/12 seren arbazard

試しに天候動詞で語法考察一つ。※初稿なので後で直す。

同じAという自然現象でも表現法は言語によって異なる。日韓のように「雨が降る」の語順もあれば中のように「降る雨」(下雨)の語順もある。雨を動詞でなく名詞として捉えている。
一方英独仏ではIt rainsのように形式主語+動詞で表現する。「雨る」というように雨を動詞として使っている。不必要な形式主語の分合理性が悪い。伊は形式主語の必要がないので合理的である。「雨+動詞」より早く言え、一番早い。
しかし「雨が降る」「雪が舞う」のように、主語が何かによって動詞を変えるほうが表現力は高い。伊タイプだと雨がどのように起こるかは副詞で表さざるをえない。つまり、「雨+動詞」と「雨る+副詞」の2パターンが考えられ、この2種が最も合理的かつ表現力があると言える。英独仏のように形式主語を必要とするのは非合理的である。

アルカの場合、この2パターンのどちらも可能なので、合理的と言える。esk lunatとも言えるし、eskatとも言えるし日伊両パターンで表現できる。
アルカの語法だと、天候動詞より天候名詞+動詞のほうが多い。雨も台風も自然現象だが、動詞化しやすいのは雨雪程度で、台風など細かい天候になると動詞化しない。細かい動詞は動詞的でなく名詞的と人は捉えるからである。
実際自然言語を見ても、「台風る」と動詞で表現する言語は見つからない。なので最も合理的かつ全ての天候で言える汎用性の高い表現法は「天候名詞+動詞」で、雨など日常的なものにだけ「天候動詞+副詞」を使うというのがいいだろう。ただ動詞が「降る」だったり「舞う」だったりする日本語は天候と動詞のコロケーションを覚えなければいけないところが非合理的なので、どんな天候にも使える汎用性の高い動詞を普段は使い、文学するときは別の動詞を使える仕様にするのが最も優れていると言えよう。すなわち、eskもsaeもlunaと言えるし、arとも言えるが、文学的にはsae milmatと言えるというような感じである。

アルカは不完全な人工言語?

2014/12/1記

2014年11月に下記の調査を行った。

被験者は日本人2名と韓国人1名。次のA,Bの図に対し、アルカでtil,evと言えるかについて容認度を○△×で表してもらった。
a

結果、日本人ではBはtil,evともに○だったが、韓国人のみがevを△とした。日本語ではA,Bともに「のせる」である。よってev(のせる)という語は、A,Bどちらにも○となった。
ところが韓国語ではAはイダだがBはトゥルダで、トゥルダは日本語の「持つ」に相当する意味の広い語である。つまり韓国人の目にはAは「のせる」で、Bは「持つ」に見えるということである。

ここで問題なのは、韓国人のアルカユーザーがBに対しevは△と回答した点である。これは韓国語の語法を反映している。
すなわち3人の被験者はアルカの語法ではなく、母語の語法に則って○△×を定めたということになる。つまりtilをtil、evをevのまま理解しているのではなく、til→持つ/トゥルダ、ev→のせる/イダといったん母語に置き換えて覚え、幻文を作る際は母語の語法をそのまま当てはめ単語と文法だけをアルカにしているのである。

これの何が問題かというと、異なる母語を持つアルカユーザー間で齟齬が生じうるということである。これはアルカだけでなく英語でもエスペラントでも起こる問題である。ただ自然言語の場合ネイティブがいたり適切な語法について記した書物が基本的にあるため、単なる学習者側の不勉強で済む。しかし人工言語の場合そうはいかない。

アルカは新生までは20年以上かけて体得してきたアルカの語法の会得者がいたため、彼らの存在に適切な語法の運用を依存していた。しかし俗以降事情が変わり、主なユーザーは語法の体得者ではなくなった。そのため書物で学習する必要が出たが、体得者に依存していた新生の時代に彼らが自身の身につけた語法を辞書に明文化して残してこなかったため、アルカの語法の習得が不可能になり、アルカは一気に不完全な言語となってしまった。
この状況を打破するためには、体得者がアルカの辞書であるdk(ディアクレール)に語法を明文化することが必要であり、2014年末からdkの強化プロジェクトが人工言語研究会(レヴィアンクレール)内でプロジェクトクレールとして持ち上がった。

ルシアンの聞き取れない箇所

10/25記

farasさんの質問:

『魔法堂ルシアン』のルシフェルの台詞が一箇所だけ聞き取れないので質問します。
リディアが本棚の本を読みながら尋ねた「tutu tan til envi knoos anneyo?」という問いに対して答えている台詞です。
「em sen artklel ol iskan dilx ○○○.」と言っているのですが、○○○の部分がどうしても聞き取れません。音としては「フィーユンネ」とか「ヴィーユンネ」のように聞こえます。字幕は「読む者が切望すれば、ね。」となっています。
もし覚えていらっしゃればご回答願います。

残念ながら覚えてないし聞くこともできないのでfarasさんの聞き取りが正しいとし、fiiyun eではないかと。fiiyuの属格と文末純詞のeでしょう。
envi knoosだったところ、被修飾語が反復により省略されfiiyunになってるのかと。
「もし読み手が素晴らしい(不思議な力)を切望するならそれは魔法の本になることができるよ」が直訳。

形容詞の名詞化

10/25記

farasさんの質問:

形容詞を名詞化して「~であること」と言いたい場合、どう言えば良いでしょうか。

例えば「静かな」に対して「静かであること」、「美しい」に対して「美しくあること」と言いたい場合、seerati、lantati とすると「静かさ」「美しさ」という程度を表す語になってしまいます。
英語では接尾辞 -ness を使って quietness などと言えるわけですが、これをアルカではどう言うのかということです。(-ness の付いた名詞が程度を表すこともありますが、ここではそれは考えないということでお願いします。)

私見では、文法的には自然動名詞 seerontel、lantontel と言えば表せると思うのですが、この言い方で自然でしょうか。
もしこれが自然でないないならば、どう言うのが自然かお教え下さい。

これに関連して、「可愛いは正義」という慣用句はどう訳すのが自然でしょうか。
「可愛くあることは正義である」と考えるならば、もし私見が正しければ「ankontel et falis」と言えるわけですが、慣用句としては単に「ank et falis」と訳すのが自然でしょうか。

seerontelなどの自然動名詞でいいです。
「可愛いは正義」はankでもankontelでもニュアンスの違い(可愛いものか可愛いことか)くらいでどっちでもいいですが、その成句がアルカにあるか不明なので語釈入れてくださいまし。

雌晄の晄基色は何色か

10/3記

farasさんからの質問:

dolmiyuの項によると、陽晄の晄基色は紫がかった藍、月晄は青緑、雄晄は黄味がかったオレンジですが、雌晄の晄基色についてはどこにも記述が見当たりません。何色なのでしょうか。

カラーバランスから赤系かと。女だし。

フルネームの敬称

9/1記

farasさんからの質問:

アルカの敬称について質問です。
幻日の各敬称の項目には、その敬称が姓と名前のどちらに付くか、前置か後置かが書かれていますが、フルネームに付く場合については記載がないようです。
まず、敬称はフルネームに付けることができるのでしょうか。
できるのなら、敬称はフルネームに対して前置なのでしょうか、後置なのでしょうか。
また、姓にしか付かない、あるいは名前にしか付かない敬称でもフルネームに付くことができるのでしょうか。
以上、お答えいただければ幸いです。

dyussou tias estel のように、フルネームは「名だけ」と同じ扱いです。rau, dain は使いません。
後置の場合は、 tias estel san のようになります。
「氏名」「フルネーム」未登録なら estrast で。

del, xel, lex の使い分け

9/1記

質問:

http://togetter.com/li/709904

t del k は t と k の同一性、 t lex k は t の性質として k があることに焦点。
tian del ridia だと恋人がリディアであるという両名詞の同一性に焦点。可逆
ridia lex tian だと図のようにリディアの持っている性質のうち「恋人として」というところに焦点があり、不可逆(つまり tian lex ridia はダメ)。
――な感じで使ってたように思う。

delxellex